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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
幕間 楽しいホリデーを!

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ホリデーの過ごし方

 ヴィルやノアの春のホリデーの滞在は本邸ではなく、郊外にある別邸で過ごしているらしい。そこは転移魔法陣でしか出入りできない場所にあるらしく、警備体制は魔法学校以上だと言われているのだとか。

 そのような場所であれば、エアを招いても安全なのではないか、なんて呟いたら、ヴィルが誘えばいいと言ってくれた。

 ヴィルがミュラー男爵に相談し、エアも一緒に滞在することになったのである。

 他にもアリーセを招いて、みんなで一緒に過ごすこととなった。

 突然押しかけることになったので、ノアは迷惑に思うかもしれない。

 なんて思ったものの、ヴィル曰く、ノアは私達の訪問と滞在を喜んでいるという。


 そんなわけで別邸に行く当日、エアやアリーセと合流する。


「アリーセ、エア、久しぶり!」


 正確に言えばエアは久しぶりでもなんでもないのだが、事情が事情なだけにそういうことにしておく。

 アリーセはホリデー中に私達に会えると思っていなかったようで、とても喜んでくれた。


「暇を持て余しておりまして、領地へ行こうか迷っているところだったのです」


 邪竜騒動の影響で、学校内の除染と修繕が一ヶ月ほどかかる。そのためホリデーも夏休み並みに長くなってしまったのだ。

 そんな中、アリーセは早々に宿題を終え、ご令嬢方との社交をこなし、夜会や晩餐会にも参加したという。


「ラストシーズンのドレスも仕立てましたし、あとはやることがなくて」


 アリーセの言う〝ラストシーズン〟というのは、初夏から始まる社交期のラストスパートである。

 十二月から始まった社交期は八月で終わるのだが、最後の月はここぞとばかりに夜会が開催されるようだ。

 そんなラストシーズンに備えて、ご令嬢方はドレスを新調するのである。


「暑い夏でもドレスを着なければならないって、貴族のお嬢様は大変なんだな」

「ええ、本当に」

「魔法学校の制服みたいに、季節に関係なく快適に着こなせるドレスがあってもいいわよね」


 なんて呟いたら、アリーセが真剣な眼差しで「そのドレス、一刻も早く作ってくださいませ!」なんて言い始める。


「おじさんに頼んでみるか?」

「ぜひ! 絶対に売れると思います!」


 なんて話で盛り上がっていたら、別邸への転移魔法の準備が整ったとヴィルが言いにやってくる。

 基本的にどこからでも入れるようだが、リンデンブルク大公家の者の承認がないと入ることができない仕組みらしい。


「準備はいいか?」

「はい!」


 別邸で過ごす期間は十日ほど。太っ腹なリンデンブルク大公が長期間の滞在を許してくれたのだ。

 ヴィルが展開してくれた転移の魔法陣に乗ると、あっという間に景色が入れ替わる。

 下り立ったのはふかふかな絨毯の上。

 水晶のシャンデリアが輝く、豪奢な一室だった。


「みんな! よく来てくれたね!」


 ノアが私達を迎えてくれた。

 アリーセと同じく暇を持て余していたようで、思っていた以上に喜んでいた。


「お兄様、皆を招待してくださり、ありがとうございました」

「ああ。よくもてなすように」

「はい!」


 もてなすなんてとんでもない。なんて思ったものの、ノアはやる気十分だったようだ。

 テーブルにはたくさんのお菓子が用意されている。一回で食べられる量とはとても思えない。

 ヴィルは私達にゆっくり過ごすように言ってから、退室していった。

 それを確認したあと、エアは勧められた椅子に座り、はーーーと息を吐く。


「リンデンブルク監督生長ハイ・プリーフェクトも一緒に過ごすのかと思っていたから、緊張していたんだ」

「そうだったのね」


 エアとヴィルは何度も顔を合わせているものの、いまだに慣れることはないようだ。

 それはノアも同じだという。


「わかる。お兄様は特に高貴な雰囲気があって、背筋がピンと伸びてしまうんだ」


 慣れ親しんでいる私は異例なのだろう。

 そんなことはさておき、滞在中に何をするかで盛り上がる。

 ノアが真っ先に提案した。


「僕、パジャマパーティーをしてみたくって」


 なんだその、楽しそうな催しは。

 満場一致で開催が決まった。

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