今後について
金髪にエメラルドグリーンの瞳を持つエアはレナ殿下と面差しがよく似ていた。
二卵性、男女の双子なのだが、よく似ている姉弟である。
髪や瞳の色が違うだけで、印象が異なるのだろう。
ミュラー男爵やレヴィアタン侯爵、ヴィルが深刻そうな表情で話す中、ふと、エアの顔が赤いことに気付く。
「ちょっといい?」
「ん?」
額に手を当てると、熱くなっていることに気付いた。
「エア、あなた、熱があるわ」
「あ~、言われてみたら少し体がぽかぽかするかも?」
少しどころではないだろう。魔法で雪の塊を作り、革袋に入れて額に当てておくように言う。
「ミシャの雪、ひんやりしていて気持ちがいい」
「少し休んだほうがいいわ」
ミュラー男爵もエアの変化に気付いたらしく、心配そうに駆け寄ってくる。
「エアさん、すみません! もしや朝から具合が悪かったのですか?」
「いいや、今まで元気だった」
「いろいろ話を聞かせ過ぎたのだろう」
ヴィルがそう断言する。
「また、話し合いの場を別日に設けましょう。私達は帰ります」
「え、大丈夫――」
「そんなわけありません!」
ミュラー男爵はそう言ってからぺこりと会釈すると、転移の魔法巻物を使って隠れ家に帰っていったようだ。
静かになった部屋で、ヴィルが盛大なため息を吐く。
「まさかエアが竜まで従えていたとはな」
「ええ、まさかリザードが竜だったなんて」
ヴィルの使い魔であるセイグリッドはエアのリザードのように幼体でなく、成体で召喚されたらしい。そのため、幼体の竜を見ることも初めてだったようだ。
「きっとこれから翼が生え、体もこれまで以上に大きくなるだろう」
成長がますます楽しみになるだろう。
「見目の封印についても、さすがとしか言いようがない」
エアの母親は将来、危害がないように対策を打っていたのだろう。
「ただ、あのクラスの魔法を常時展開させるとなれば、多くの魔力が必要だ」
エアの母親は病弱だと聞いていた。もしかしたら魔法を使ったことにより、命を縮めてしまった可能性もある、とヴィルは話す。
「自分の命を賭けてでも、エアを守りたかったのでしょうね」
「だろうな」
これについてはエアに伝えないほうがいいだろう。ヴィルも同意してくれた。
レヴィアタン侯爵は眉間の皺を解しながら、ため息を吐く。
「あのエア少年を初めて見た日、子ども時代の国王陛下に似ていると気付いていたのに、気のせいで済ませていたとは……」
まさかエアがレナ殿下の双子の片割れなんて気付くわけがないだろう。
「まあしかし、竜の守護がついているとのことで、完全に安心はできないだろうが、心強い存在だろう」
そういえば王族は竜を使い魔として従えている、なんて話を聞いていた。その視点からも、エアは間違いなく王家に名を連ねるような人物で間違いないのだろう。
「ひとまず今後はエア殿の誘拐に警戒し、学校生活を送ってもらうしかないな」
「ええ……」
ジェムにも念のため、エアに危険が及べば助けてほしい、とお願いしておく。
わかった! とばかりに輝きを放ったが、本当にわかっているのか。
怪しさしか感じなかった。




