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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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エアの守りについて

 今後、私達がすべきことは、エアの母親の侍女だったキャロライン・ド・サーベルトを探すこと。


「申し訳ないのですが、エアさんは調査への参加を許可できません」

「わかっているよ。もしも俺が王族だってことを知っている奴らに誘拐でもされたら、面倒なことになるんだろう?」


 たしかに国を脅かそうとしている者がいるとしたら、王太子であるはずだったエアの存在は利用し放題だ。

 王位簒奪を目論む者の絶好の言い訳にもなる。

 絶対にエアの身柄は守らないといけない。


「エアさんを守るため、魔法学校に預けることは最適な方法だと思っていたのですが……」


 魔法学校の敷地内は鉄壁の守りがあるはずだったのに、ルドルフがやらかしてくれたおかげで危機的状況になってしまった。

 魔法学校の歴史に泥を塗るような行為だっただろう。


「護衛を大勢付けたい気持ちはあるのですが、付けることによってエアさんに注目が集まってしまうのは回避したいところです」


 たしかに大げさに護衛を付けると、そこにエアがいると主張しているものだろう。


「おじさん、大丈夫だよ。俺にはリザードがいるし。っていうか、俺、リンデンブルク監督生長ハイ・プリーフェクトに聞きたいことがあったんだった!」

「どうした?」

「俺のリザード、なんかこの前脱皮したら、硬い鱗とか生えてきだして、見た目が変わりつつあるんだ」


 エアの使い魔である火属性のトカゲであるリザードは、最初は手のひら大の小さな子だった。

 けれどもどんどん成長し、巨大なトカゲと化していた。

 火を思わせる模様も広がっていき、今では全身が赤くなっていたという。


「火トカゲに硬い鱗だと?」

「ああ。不思議だろう?」


 通常のトカゲの鱗はしっとりしていてやわらかく、粘液にも覆われていない柔軟なものである。多くのトカゲ類はこの形状の鱗だろう。


「見てもらったほうが早いかも!」


 エアはそう言ってリザードを召喚する。

 魔法陣と共に登場したリザードは、イリエワニくらいの大きさになっていたので驚く。

 そして真っ赤な鱗に覆われ、その姿はトカゲではなく――。


「竜だ!」


 ヴィルが断言する。

 すぐさま鑑定魔法を展開させる。すると驚きの情報が提示された。


 種族名:深紅眼の光炎竜クリムゾンアイズ・フレイムドラゴン

 属性:炎

 希少性:★★★★★★★★★★★★

 説明:最強クラスの攻撃力を誇る竜の赤子。まだまだ成長中。


「なっ――!?」


 リザードがまさか竜だったなんて。

 エア本人も気付いていなかったようで、驚いた表情を浮かべていた。


「リザード、お前、最強クラスの竜種だったのかよ!!」


 エアにそう問われたリザードだったが、キョトンとしていた。

 それはそうと、鑑定魔法で出た名前と星の数に見覚えがあるなと思ったが、あれだ。

 前世で大人気だった、漫画だったかアニメだったかカードゲームだったかに登場する青眼ブルーアイズの……。

 いやいや、そんなことは今はどうでもよくて。


 エアの言うとおり、リザードには竜を思わせる硬い鱗が生えそろいつつある。


「セイグリッドの鱗はやわらかいですよね?」

「女性だからな」


 雌雄の違いで鱗の硬さにも違いがあるようだ。

 サポート能力が高い雌の竜は前線で戦う必要がないため、鱗は比較的やわらかいという。


「雄の竜は鱗が盾代わりとなるゆえ、強固なのだろう」

「へ~、そうだったんだ。盾みたいな鱗だって! お前、すごかったんだなあ」


 リザードの鱗がやわらかくて触り心地がいい、と自慢していたエアだったので、ショックを受けるのではと思っていたがそうではなかったようだ。


 そんな様子を見ていたミュラー男爵がぽつりと発言する。


「エアさんの護衛は使い魔に任せていても問題ないようですね」


 竜は命を賭けて主人を守ってくれるという。

 エアの安全はリザードにかかっているというわけだ。

 

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