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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
六部・三章 思惑渦巻く

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ミュラー男爵の過去①

 少し長くなるかもしれない。

 そう前置きをしてから、ミュラー男爵は話し始める。


  ブランド・フォン・ミュラー。

  ミュラー商店の商会長で、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで頭角を現す商会の一つとなっている。

 商会長でありながら男爵の爵位を持ち、本人はレヴィアタン侯爵よりも体が大きい、戦う人のような出で立ちをしているという、商人としては不釣り合いな姿をしていた。

 さらに、血縁関係にないエアの後見人となっており、異常なまでの庇護欲を示している。

 いったいなぜ、ミュラー男爵はそこまでするのか。

 その謎が今、本人の口から明かされる。


「私の本来の名は、ブランド・フォン・アーベル」


 それを聞いて、レヴィアタン侯爵が反応する。


「貴殿はまさか――!」


 どうやらミュラー男爵となる前の名に聞き覚えがあったらしい。

 ミュラー男爵はレヴィアタン侯爵の視線から目を逸らし、続きを話す。


 四十五年前、アーベル子爵家の三男として生まれたミュラー男爵は、自らが継承すべき財産や爵位がないことから、騎士を目指して鍛錬を続けていたという。

 十五歳のときに正騎士となったまでは順調だったが、そこから厳しい日々の連続だったという。


「騎士というものは、家の格式が物を言う組織なんです」


 有名な門閥もんばつ家出身の者ほど、特に何も成し遂げていないのに出世していく。実力なんて関係ない。重要なのは実家の支援と家柄。騎士隊とはそんな組織だという。


「どれだけ努力をしても実らず、同期の騎士がどんどん出世していくのを眺めるばかりでした」


 けれどもミュラー男爵は日々の鍛錬を怠らなかった。

 いつか認められるはず、なんて前向きな感情からではなく、騎士として生きる道しか知らなかったからだと語った。


 けれどもミュラー男爵の努力が実るような出来事があった。

 それは二十年以上も前、国王陛下の結婚が決まり、ルームーン国の王女が輿入れすることとなる。

 そのさい、王妃となる王女の近衛部隊が作られることとなった。

 アルテミス・ド・レナルド=サラ・ルームーン。

 レナ殿下の母君であり現王妃である女性は、自らの近衛部隊の隊員となる騎士の要望を出した。それは家格に関係なく、強い騎士であること。

 その条件によって選出が始まり、トーナメント戦が行われることとなった。

 参加を命じられた騎士の中でもっとも強かったのが、ミュラー男爵だったというわけである。

 結果、ミュラー男爵は二十三歳という若さで、未来の王妃の近衛部隊に選出され、さらに隊長を任されることとなったのだ。


 王妃となった女性は控えめな見た目から想像できないくらい、強かな女性だという。

 さらに人格者で、侍女から騎士の末端まで大事にするような、心優しい女性だった。

 王妃殿下はミュラー男爵を信頼し、常に傍に置いた。

 騎士という職業に希望なんて見いだせなかったミュラー男爵だったが、王妃殿下の存在が光となっていたようだ。


「何があっても、王妃様のことは守る。この命を散らしても――その当時はそんなことまで考えていました」


 ミュラー男爵の忠誠心は本物だったのだろう。

 ただずっと、過去形のように語っていたのが引っかかる。

 いったいどうしてなのか。

 それはこのあと語られるのだろう。


 結婚から数年後、懐妊が明らかとなる。

 国中が祝福ムードに包まれた。


「王妃様はお体が弱く、子どもができるか心配していらっしゃったんです」


 そのため、妊娠がわかったあと王妃殿下は本当に幸せそうだったという。


「永遠に、その時間が続くものだと思っていましたが」


 出産日に、とんでもない事件が起こったという。

 

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