話し合い
ひとまず現在購買部にあるアイテムの中で欲しい品などはないので、しばらく温存しておこう。
購買部の中でも高価な〝占いカード〟とか、〝未来が見える(※かもしれない)鏡〟とか、杖をデコレーションする〝魔宝石チップ〟とか、親から引き継いだものを調べられる検査キットとか、絶対いらない。そう、自分に強く言い聞かせた。
◇◇◇
放課後、料理クラブの活動を行う。
今日はヴィル以外のメンバーが集まった。
当然という顔で、リンデンブルク大公もいる。暇なんですか? と聞きたくなったが、ぐぐっと我慢した。
本日は調理ではなく、話し合いがメインである。
エルノフィーレ殿下が議題について口にした。
「みなさんに報告があります。これまでの私達の活動が魔法学校への貢献に繋がったものとして、馬術大会での出店が許可されました」
エルノフィーレ殿下はそう言って、許可証を私達に見せてくれた。みんな確認するなり、「おー!」と声をあげ拍手した。
ちなみに出店が許可されたのは私達のクラブだけらしい。
なんでも他のクラブからも、馬術大会で露店を開きたいという申し出があったようだ。
校長先生は他のクラブにも私達と同様の条件を提示し、出店権を得られるような活動を促したものの、通常のクラブ活動と共に行うことが難しかったようだ。結局、どのクラブも達成できなかったという。
「ただ、出店権を得られたからといって、喜んでいられません。なぜかといえば、ライバル店は普段から食品を売って生計を立てている選りすぐりの商店だからです」
なんでも校長先生やリンデンブルク大公が厳選に厳選を重ねた商店が招かれるらしく、毎年馬術大会の目玉となっている。と、そんな話は以前聞いていたが、予想以上に激戦となるらしい。
「ここで重要になるのは、販売するメニューです」
そう、そうなのだ。簡単に作れてかつ、学生や保護者受けをするメニューを考えなければならない。
「何かアイデアはありますか?」
シーーン、と静まり返る。
そんな中で、エアがぽつりと発言した。
「この前ミシャが作り方を教えてくれた、マシュマロヌガーなんか最適だと思ったんだけどなーー」
エアの言葉にアリーセも頷く。
「片手で食べることができて、見栄えもするいいお菓子でしたわね」
ただマシュマロヌガーは王室御用達の菓子店にレシピを譲渡してしまった。
馬術大会で販売するのはよくないように思える。
その辺についてリンデンブルク大公にどう思うかエルノフィーレ殿下は問いかけた。
「契約書にはマシュマロヌガーをこちら側で販売することに対する制限などはなかったから、別に問題ないだろう」
私が全校生徒の前で表彰されたことにより、話題性もあるのではないか、とリンデンブルク大公は言ってくれた。
「しかし、王室御用達の菓子店でのみ買える、という希少性もある商品になっているかもしれないので、馬術大会でも購入できる、というのはどうかと思いまして」
再度シーンと静まり返ってしまったが、ここでもエアが「たしかにそーかもなあ」と言葉を返してくれた。
皆、リンデンブルク大公がいるので、若干発言が控えめになっているのだろう。
エアの存在に救われる。
ここでみんなに質問してみた。
「王都のお祭りなどではどういった軽食が売られているのですか?」
その問いに、アリーセとノア、レナ殿下はお祭りで食べ歩きなどしたことがないと返した。エアは行ったことがあったものの、お金がなかったので何も食べていないと答える。
参考になる意見は得られなかった。
「ミシャの故郷ではお祭りなどありませんでしたの?」
「ちょっとした収穫祭みたいなものはあったのだけれど、家族や使用人みんなで作った温かい料理を領民に配る、みたいな催しだったわね」
器などは各自持参してもらって、鍋から装うだけというシステムだったのだ。
これは馬術大会には採用できないだろう。
三度目の静寂となる。
参考になるような意見が得られなかったのだ、無理もないだろう。
こうなったら、前世の知識に頼るしかない。
「いろいろと軽食を作ってみるから、試食してみましょう!」




