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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・四章 馬術大会に向けて

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マシュマロヌガーの奇跡

 マシュマロヌガーは珍しいお菓子ということで売れるか心配だった。

 けれども試食のおかげで飛ぶように売れたのである。

 リンデンブルク大公がエプロンと三角巾を身につけて、気合いたっぷりで店番をし始めたときはどうしようかと思った。

 けれどもジェムの機転のおかげでなんとか販売できたのである。

 得たお金も寄付できて満足満足。

 なんて思っていたら、学校を通してまさかの面会があった。

 長年、王室御用達店として名をはせる、王都でも歴史ある菓子店の店主がマシュマロヌガーの作り方を教えてほしい、とやってきたのだ。


「あのマシュマロヌガーは本当にすばらしいお菓子で、ぜひとも私の店でも販売したいんだ!」


 店主が個人的に気に入っただけでなく、慈善市でマシュマロヌガーを買ったお客さんからも問い合わせが相次いだらしい。


「マシュマロヌガーを一つ販売するごとに、君に利益が入るようにしよう」


 そう言って店主は契約書を差しだしてくる。そこにはレシピの情報料や調理指導の手数料なども提示されていたのだ。

 長期的に販売されるとなれば、かなりの利益があるだろう。


「いかがだろうか?」

「その、条件は申し分ないです」


 けれどもあのお菓子は私が考えたレシピで作った物ではない。前世で流行ったお菓子だ。

 それを我が物とし、利益を得るなんてなんだか申し訳ない気分になる。


 私が口ごもっていると、リンデンブルク大公が「どうした?」と聞いてくる。

 その声が思いがけず優しいものだったので、正直に打ち明けた。


「あのお菓子を考えたのは私ではないんです。ですので、権利料などをいただくわけにはいきません」


 そんな答えを返すと、店主は困った表情を浮かべた。


「では、マシュマロヌガーは王都で販売できない、ということなのか……」


 がっかりしたように肩を落とした様子を見ていると、なんだか悪いことをしている気分になる。


「マシュマロヌガーの作り方はお教えしますので、お売りになってはいかがですか?」

「いいや、リンデンブルク大公に紹介いただいた手前、そんなことはできない」


 私もだが、店主も負けないくらい頑固なようだ。

 どうしたものか……と思っていたら、ピンと閃く。


「わかりました。では、利益は全額恵まれない人達への寄付、という形にするのはいかがですか?」

「いいのか?」

「もちろんです!」


 他人のアイデアでお金儲けをし、良心がズキズキ痛むよりもずっといい。


「ありがとう! ありがとう!」

「いえいえ」


 そんなわけで、マシュマロヌガーのレシピは店主に託すこととなった。

 一週間後くらいには販売されるようで楽しみである。いつか買いに行こう、と思ったのだった。


 後日、想定外の展開となる。

 マシュマロヌガーが大ヒット商品となり、飛ぶように売れているのだとか。

 それに伴い、多額の寄付金が集まって、養育院にマシュマロヌガーと共に届けられたらしい。

 子ども達は大喜び。多額の寄付金を前に院長やシスター達も驚きの声をあげていたという。

 驚いたことにその寄付金は私の名義で届けられたようだ。

 てっきり店主さんの名前で寄付するものだと思っていたので、びっくりしてしまう。

 魔法学校に養育院から感謝状が届いたので、全校生徒の前で受け取ることになったのだ。

 なんでもそのために生徒全員が集められたようで、戦々恐々としてしまう。

 講堂の壇上に立ち、全校生徒の注目が集まったので緊張で胸がバクバクだった。

 リンデンブルク大公が感謝状を読み上げ、恭しく受け取る。

 大きな拍手を浴びながら、大変な事態になってしまったと思ったのだった。


 受け取ったのは感謝状だけではない。

 校長先生から秘密の恩恵――ベネフィットを賜ったのである。


「あの、私、今回は何もしていないのですが」

「いやいや、誰にもできないような判断をしていたじゃないか。利益を受け取らずに全額寄付しようだなんて、なかなかできることではないよ。生徒の模範となるに相応しい判断能力を見せてくれた」


 白い封筒を受け取る。中に書かれてあったのは、購買部のアイテム引換券だった。


「ありがとうございます」


 自分のためになるような品を貰うように、と釘を刺される。

 私は深々と頭を下げて退室したのだった。

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