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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・四章 馬術大会に向けて

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体験授業

 今日は朝から、二学年で行う選択授業の体験学習を行うこととなった。

 二学年からは将来を見据え、自分で好きな授業を取って三学年の就職期を目指す。

 一限目はホイップ先生が魔法薬学の授業を体験させてくれるようだ。


「では~、〝魔法の森〟に薬草を採取しにいくわよ~」


 いきなり野外授業らしい。行き先は魔法の森とやらで、薬草の採取活動を行うようだ。


「ジェム、野外授業ですって。行くわよ」


 今日もジェムは壁に張り付いていて、午前中は眠るつもりでいたのだろう。

 いつもだったら放置するものの、ホイップ先生から使い魔を同行させるように言われたのだ。

 おいでと言っても聞こえないふりをするので、強制的にぺりぺりと剥がして丸め、小脇に抱えて連れて行く。


 転移扉を抜けた先に広がるのは、温かな風が吹く春のような気候の森。

 ここは魔法学校が管理している人工的に作られたエリアらしく、魔物は出現しないようだ。

 以前、魔石集めをした森とは異なるようで、こういったエリアを魔法学校はいくつも所持しているらしい。生徒に危険が及ばないよう、万全の策を立てているのだろう。


「みなさんに今日、採取してもらうのは〝ヒール薬草〟よお」


 魔法薬を作っていた私にはお馴染みの薬草である。とにかく生命力が強くて、冬の寒さが厳しいラウライフでも自生しているくらいの頼もしい植物なのだ。


「ヒール薬草の形状などはー、薬草図鑑などを見ていた人だったら知っているかもしれないわねえ」


 ここでは詳しく説明せずに、鑑定魔法を使いつつ採取するように言われた。


「採取はお友達と一緒ではなく、単独でやってねえ」


 一学年で行った魔石探しはペアで行ったが、今回は単独行動で採取するらしい。

 きっとあの頃と違って魔法もたくさん習得したので、ペアを組まずとも大丈夫だと判断されたのだろう。


「では、三十分後にここに集合ねえ」


 男子生徒は走って散り散りとなり、女子生徒はゆっくり行動を開始していく。

 私はどちらの方向に行こうかと迷っていたら、ホイップ先生が声をかけてきた。


「ふふ、ミシャ、あなたにとっては簡単過ぎる授業かしらあ?」

「いえ、ずっとヒール薬草には触れていなかったので、初心にかえって探すつもりです」

「さすがねえ。期待しているわ~」


 出発の前に、やる気のないジェムをどうにかしなければならない。


「ジェム、しっかりして! 今から薬草を探しに行かなければならないの!」


 一生懸命声をかけるも、ジェムは平たい形状のままだら~っとするばかり。

 怒るばかりではいけないと思って、方向性を変えてみた。


「初めてきた森で心細いの。ジェム、あなただけが頼りなんだから」


 若干大げさな様子で訴える。少しわざとらしかったか、なんて思ったが、ジェムは飛び上がって球体に戻り、キリッとした表情で振り返る。

 私に任せろ、とばかりの頼もしい様子だった。

 このままジェムを抱えつつヒール薬草を探さなければならないのか、なんて思っていたので、やる気を出してくれてよかった。


「じゃあいきましょう」


 ジェムが先陣を切って進むので慌てて追いかける。使い魔なのに私のあとに続くということはしてくれないようだ。まあ、自由なのはいつものことだけれど。


 森の中は小鳥のさえずりが聞こえ、穏やかな風が吹く素敵な環境だった。

 ラウライフのこけむした鬱蒼うっそうとした森とは大きく異なる。


「こんな森だったら、ピクニックにでも行きたくなるわね」


 ラウライフの森は苔で足を滑らせないように注意が必要だし、薄暗くて不気味なので、とてもお弁当を持って散策しよう、だなんて思わない。


「さて、と」


 周囲を注意深く見ていたら、あっさりヒール薬草を発見する。故郷にいたときは目を皿のようにしながら探していたので、草むらの中で目視することは容易いのだ。 

 念のため鑑定魔法で確認したが間違いなかった。

 ここのヒール薬草は葉がつやつや輝き、茎も太く、見つけやすかった。


「領地のヒール薬草よりも立派ねえ」


 野草に見間違えそうな形状であるものの、その辺の葉とは艶が違う。

 ジェムは自分が見つけたかったのに、と不服そうな様子でいた。


「あなたは私の騎士役を務めてくれたから、十分役目を果たしたわ」


 そう言うと、ジェムは嬉しそうにチカチカ輝く。

 なんというか、単純な子でよかった。


 ホイップ先生がいた場所まで戻ると、まだ誰も帰ってきていなかった。


「あら~、やっぱりあなたが一番だったわねえ。最後に出発して最初に戻ってくるなんて、優秀だわ~」

「ヒール薬草を確認してから評価してください」

「大丈夫に決まっているじゃない~」


 提出したヒール薬草は間違いないようで、これにて課題はクリアとなった。

 その後、あっという間に三十分経った。

 エアは時間ギリギリに戻ってくる。


「ミシャ、聞いてくれよ! ぜんぜん見つけられなかったんだ」

「そ、そうだったのね」


 周囲でも似たような会話が聞こえる。

 ヒール薬草を発見できたのは、私を含めて三名のみだったらしい。


「魔法薬草学を選択したら、薬草をすぐに発見できる探知魔法を習うことができるのよ~」


 三十分もの間、苦労してヒール薬草を探した生徒達には魅力的に聞こえる誘い文句だったらしい。勧誘が上手いな、と思ってしまった。

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