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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・三章 新しいことを始めよう!

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まさかのご提案

 ヴィルと別れ、とぼとぼと歩きながら家路に就く。

 もしかしたらヴィルは私が一生懸命説得しても、目立つのは嫌だとか言って乗馬大会の参加を拒否してくれるかも! なんて考えていた。

 まさか、本人はやる気に満ちあふれていたとは……。

 さらに乗馬大会は婚約者がいる者は二人三脚となって協力しつつ挑む行事らしい。

 ジルヴィードはそれを知っていて、私にあんな最低なことを提案したのだろう。

 私と婚約したヴィルが乗馬大会に参加することも、どこかから情報を手に入れていたに違いない。

 脳裏にジルヴィードの高笑いがこだまする。悪夢のようだと思った。

 せっかく試験を終えることができたのに、こんな結果で終わるなんて。

 と、ここで飛行試験中にジェムが変化したブリザード号を使っていたことを先生に報告していなかったことを思い出す。


「ああ、もう何もかも最悪な日だわ!」


 私は急いで職員室へ走り、飛行試験を担当したアイン先生と話をすることにした。

 試験の採点中だからか、夜なのに職員室には灯りが漏れていた。

 生徒の立ち入りは厳禁! と書かれていたが、廊下に先生を呼ぶことはできる。

 職員室を覗き込んだら、アイン先生を発見した。


「アイン先生! お話ししたいことがあるのですが!」

「どうした?」


 アイン先生はすぐに廊下へやってきてくれた。


「リチュオルか。珍しいな」

「ええ、その飛行試験のことで報告していなかったことがありまして」

「なんだ?」

「その、試験中に使っていた魔法の箒なのですが、使い魔が変化した物を知らずに使っていたみたいで」


 飛行試験が終わったあとに気付いたのだが、雪が降って報告が遅れた、と正直に申告する。


「申し訳ありません」


 もうゼロ点でも文句なんて言えないだろう。ドキドキしながらアイン先生の返答を待ったが、想定外の言葉を返された。


「知っていたぞ」

「え!?」

「使い魔に変化させた飛行道具なんて珍しいと思っていた」

「把握されていたということは、もしやお咎めなし、ということですか?」


 アイン先生はこくりと頷く。


「過去にもスライムの使い魔に飛行板スカイ・ボートへ変化させて試験に挑んだ者はいたぞ」

「そ、そうなのですか?」

「ああ。大事なのは自らの魔力で制御することだからな。まあ、リチュオルの場合は最後、使い魔が少し助けたようだから、少し減点をしておいた」


 その話を聞いてはーーーーー、と安堵の息を吐いてしまう。

 アイン先生は「気をつけて帰れよ」と声をかけ、職員室へと戻っていった。

 問題なかったようで、本当によかった。

 心配事が一つ減って、ひとまず少しは眠れそうだと思った。


 翌日、ジルヴィードは満面の笑みを浮かべつつホームルームに参加する。


「お腹はすっかりよくなったよ。みんな、心配をかけたね!」


 晴れ晴れとした様子がなんとも憎らしい。ルドルフの存在が霞むくらいだった。

 その後、授業を受け、休み時間にヴィルから鳥翅魔法による手紙が届く。そこには国王の許しが得られず、登校できなかったとある。

 それを目にした瞬間、いいぞ国王陛下! ヴィルを乗馬大会当日までソフト軟禁しておいてくれ! と思ってしまった。

 まあ、ヴィルのことだから自力で国王を説き伏せ、脱出してしまいそうだが。


 昼休みになると、エルノフィーレ殿下からお声がかかる。


「ミシャ、よろしかったらお昼をご一緒しませんか?」

「いいのですか?」

「ええ」


 行く先は学生用の中央食堂でなく、学校の最上階にある個室の高級レストランだ。

 お上品なランチセットをいただいたあと、デザートを囲みつつゆっくり紅茶を飲む。


「実はこうしてあなたを誘ったのは、理由がありまして」


 そうだと思っていました。思わず構えてしまう。


「わたくし達、クラブを作りませんか?」


 まさかの提案に驚いてしまった。

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