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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
五部・二章 とんでもない騒動

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追い詰める

 腹痛で休んでいたはずなのに、どうしてあんなところにいるのか。

 ジルヴィードの周囲はクラブ活動をするために校庭にでていた女子生徒が囲んでいた。

 腹立たしく思うくらいの人気っぷりである。


「ミシャ、どうしたんだ?」


 窓の外を食い入るように見ていたからか、エアが心配そうに声をかけてくる。


「見て。偶然にもジルヴィード先生を見つけたの」

「あ、本当だ。腹の調子、よくなったんだな」

「みたいね」


 逃がすものか! そんな思いで立ち上がる。


「エア、もう帰る?」

「いや、もう少しここでぼーっとしときたいというか、試験が終わった感動に浸っていようと思って」

「だったらお願いがあるの。私、これからジルヴィード先生と話してくるから、ここから見守っていて」


 女子生徒達が足止めをしているので、しばらくは校庭にいるだろう。


「俺も一緒にいこうか?」

「大丈夫!」


 何かあったときのために、エアに監視を頼む。

 相手は暴風雪を降らせて、ヴィルを事故に遭わせたかもしれない男なのだ。

 さすがに校庭という場所で危害を与えてくるとは思えないものの、用心に越したことはない。

 ジェムにもついてくるようお願いしたら、快く同行してくれるようだ。

 私の不安を感じ取ったのか、いつもより大きく膨らんだ状態でいた。


「いえ、ジェム、大きさはいつもと同じでいいから」


 ジェムは遠慮するな、みたいな眼差しを向けている。


「あなたがそんなに大きくなったら、目立ってしまうじゃないの」


 しかしまあ、ジルヴィードが注目を集めて何もできなくなるという視点から見たら、目立っていていいのかもしれないが。


「まあ、いいわ。いきましょう。エアもよろしく」

「おう!」


 急いで校庭まで向かうと、ジルヴィードは同じ場所にいた。

 ちょうど女子生徒達と別れたタイミングだったので、逃すかとすかさず声をかける。


「ジルヴィード先生!」

「あれ、ミシャ・フォン・リチュオルじゃないか」

「なんで全名フルネームなんですか?」

「いや、名前だけだと親しげに聞こえるかなと思って。ほら、僕のファンの女子生徒達が悲しむと思ってさー」

「そんなことあるわけないじゃないですか」


 気が抜けるような話はさておいて。


「どうかしたの?」

「どうかしていたのはジルヴィード先生のほうでは?」

「僕?」

「腹痛で休んだと聞いていましたが」

「腹痛? あー、あー、あー! そういう設定だった!」


 ジルヴィードは怪しさしかない言葉ばかり返してくれる。


「もう治ったよ! 全快!」

「それはようございました!」

「なんか言葉がとげとげしくない?」

「気のせいかと」


 ジルヴィードへの怒りばかりが先行して、物言いから感情を読み取られてしまった。

 普段、へらへらしている彼だが、洞察力は鋭い。気をつけないと。


「それで、なんか用事だったんでしょう?」

「ええ、わかりましたか?」

「うん。君が僕の体調を心配してわざわざやってくるとは思えなくて」


 校庭に生徒はまばらだ。皆、試験期間明けの開放感からか、好き好きに体を動かしている。校庭にぽつんと立つ私達に注目しているのはエアだけだろう。


「少し話したいことがあるんです。お時間は大丈夫ですか?」

「もちろん! 場所を変える?」

「いいえ、ここでけっこうです」


 胸を押さえて呼吸を整えてから、昨日のことについて尋ねた。


「ヴィル先輩が事故に遭ったんです」

「うわあ、それは大変だったねえ! ケガはなかったの!?」


 大きな声と身振りで反応を返す。まるで大根役者のような演技じみていて、ますます怪しいと思ってしまった。

 ただこれだけで犯人と決めつけられない。今度は嘘を吐いてみた。


「実は危険な状態でして」

「え、そうなの!? 僕が聞いた話では大きなケガなんてないって……あ!」


 尻尾をだした。

 ヴィルの事故について知らない素振りを見せながら、実は正確な情報を握っていたようだ。


「いや、なんていうか、噂話を小耳に挟んでねえ」


 もはや怪しさしかない。とどめだ! とばかりに疑問をぶつける。


「ジルヴィード先生、もしやあなたが犯人なのでは?」

「え?」


 ジルヴィードは心外だ、とばかりに目を見開いていた。

 

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