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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・三章 新しい大問題

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まさかのお願い

 ここ数日、リジーは学校を欠席していた。

 おそらくジルヴィードとの結婚が決まったので、目論み通りに踏み台となった侍女のお役目を放棄しているのだろう。

 まったく、リジーは魔法学校をなんだと思っているのか。あくまでも欠席扱いということらしいが、このままジルヴィードとの婚約が進んだらあっさり退学するのだろう。

 毎年たくさんの人達が受験し、入学したくても合格できずに悔しい思いをしている人達も多いというのに。

 エルノフィーレ殿下の侍女役はどうするのか。一応、レナ殿下が気にかけている上に、ノアやアリーセ、監督生である私も傍に付き添い、何かあったらサポートしているが……。

 リジーの欠席が一週間続いた日のお昼休み、私はホイップ先生に呼びだされた。

 もしかしたらリジーへのクレームか、と思ったが、当たらずといえども遠からず、という内容だった。


「あの子ね、学校側からの連絡を無視しているみたいなのよお」

「はあ、さようでございましたか」

「私も滞在先にいってみたんだけれど、本人はいなくってえ」


 今後どうするか、というのを学校側は聞きたいらしい。けれども消息すら掴めないので、困っているのだとか。


「そこでお願いがあるんだけれど、従妹であるあなただったら面会してくれると思うのよお」

「リジーに会って、退学願の記入を頼んで、その場で回収してくればいいのですか?」

「さすがねえ、話が早いわあ」


 午後からの授業は体力作りなのだが、でなくてもいいという。その代わり、リジーを探しにいってくれないか、とお願いされた。


「魔法学校の制服姿だったら巡回の騎士に声をかけられる可能性があるから、このお着替えカードの中から好きなワンピースを選んできていってねえ」


 そう言いつつ、ホイップ先生はワンピースが描かれたカードを差し出す。

 なんでもそれは一瞬で着替えを可能とする便利なアイテムらしい。

 そういえば前世で、キャラクターを着替えさせるゲームやアニメがあったな、と思い出してしまった。

 カードにはフリルやリボンがたっぷり施されたものや、レースがふんだんに使われた大人っぽいものなどあったが、華やかなデザインはどれも似合うとは思えないので、シンプルな飾りのない紺色のワンピースに決めた。

 その後、ホイップ先生が手配してくれた馬車に乗り、滞在先である王城を目指す。

 馬車の中でカードを使って着替えた。呪文を指先で摩ると、一瞬で服装が替わる。

 着ていた制服はカードに印刷されたように浮かんできた。再度摩ると、制服に戻ることができる仕様のようだ。

 パジャマのカードとかあったら便利だ、とふと思う。朝の準備も一瞬で終わるだろう。

 ジェムも珍しくやる気がある様子でついてきた。私の真似なのか、腕組みしている。

 リジーとの面会は嫌でたまらないけれど、ジェムがいたら心強い。

 昼間の王都は商人や買い物をする人々、観光客、使用人など、大勢の人々が行き交っている。お昼時だからか、人通りも多いように思えた。

 ぼんやりと馬車の窓を眺めている間に、王城に到着した。

 貴賓用の出入り口で下ろされ、受付をするとメイドがリジーの私室まで案内してくれる。

 通常、王城へは入城許可証がないと入れない。学校側から預かった入城申請書もあったが、それだと一時間ほど審査に時間がかかる。そのため国王陛下より賜った入城許可証で入らせていただいた。

 そのおかげか、丁重な態度で通してくれる。

 ジェムは透明化した状態でついてきた。


「リジー様は現在、お休みになっております」


 なんでも朝帰りをしているらしい。学校にも行かずにだらだら昼過ぎまで眠っているなんて、いいご身分だ。

 夕方からでかけて朝方に帰る、という生活を繰り返しているという。

 学校関係者やホイップ先生がリジーに会えなかったのは、夜遊びしているからだったようだ。


 メイドが声をかけたが、リジーの反応はない。まさか部屋にいないのではないか。

 そう思ってメイドを下がらせ、部屋に入らせていただく。

 すると、寝室にて大の字で眠るリジーの姿を発見した。 

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