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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第二章 人間関係のあれこれ

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疑い

「なんなのだ、この状況は?」

「申し訳ありません。ジェムがうっかり私をバルコニーに連れてきたんです。中に入って階段を使って大広間にいこうとしたら、騎士様になぜここにいるのか、と咎められてしまって」


 立ち入り禁止の区画であるとは知らずに入ってしまい、説明が下手だったので不審人物だと誤解されてしまった、と訴える。

 一応、証人としてヴィルを呼ぶように言ったが、聞き入れてもらえなかったことも伝えた。


「そうだったのか」


 ヴィルが騎士のほうを見ると、一歩、二歩と後ずさっている。ヴィルは責めるような視線で騎士を見つめていた。


「貴殿の訴えも聞こう。どうして彼女が不審者だと決めつけた?」

「よ、様子がおかしかったからです」

「なぜ私を呼んで確かめなかった」

「それは――」


 騎士の背後から、突然疑問の声が上がった。


「ご子息は本物か? あの女が幻術で作り出した可能性はないのか?」

「たしかに、都合よく現れることなど怪しい!」

「何を言っている? 私は彼女に渡していた緊急用の魔法巻物で召喚されてやってきただけなのだが?」

「怪しい」


 あろうことか、騎士達はヴィルにまで剣を向けた。


「お前はその不審な女が作り出した幻術だな!? 成敗してくれる!!」


 そう言って騎士は瓶を取りだし、ヴィルにむかってぶちまけようとする。

 けれどもそれはジェムの壁が防いでくれた。


「この幻術、聖水を弾くぞ」

「危険だ、下がれ!」


 無罪の証明がここまで難しいとは。事件があったあとなので騎士達は疑い深くなっているのだろう。


「さっきからいったい何を言っているのか。ばかばかしい。このような者達を相手にしなくてもいい。時間の無駄だ」

「待て、逃げるな!」

「なんの騒動だ?」


 騎士達の背後より登場したのは――レナ殿下とエルノフィーレ殿下だ。

 まさかの人物の登場に、騎士達の背筋がピンと伸びる。


「レナハルト殿下、不審者と不審者が作りだしたヴィルフリート・フォン・リンデンブルク様を発見しました!」

「不審者とヴィルだって?」

「レナ殿下、不審者に勘違いされたのは私です!!」


 必死に訴えると、レナ殿下はこちらへ駆けつけてくれた。

 ジェムはもう大丈夫だと判断したのか、見えない壁の変化を解く。


「ミシャ、いったいどうしたんだ?」

「ジェムが私をここのバルコニーに連れてきて、知らずに中に入ってしまったの」


 ヴィルも続けて証言する。


「私は困っているミシャに喚ばれてやってきた。幻術で作りだされた存在ではない」


 騎士達はレナ殿下に騙されないように、と訴えるも、ここでエルノフィーレ殿下が思いがけない提案をしてくれた。


「鑑定魔法で調べたら、素性が明らかになるのでは?」


 それだ!! と叫びたくなったのをぐっと我慢し、誰か鑑定魔法をかけて調べてくれないか、と頼み込む。


「ならば私がやろう」


 レナ殿下がここにいる全員の素性が開示される鑑定魔法をかけた。

 私の頭上にはミシャ・フォン・リチュオル、子爵令嬢であり魔法学校の生徒、という名前と簡単な素性が表示される。

 ヴィルも同様に、リンデンブルク大公の子息であることを鑑定魔法が証明してくれた。


「ミシャは私の親友だ。怪しい者ではない」


 レナ殿下の言葉だけでなく、エルノフィーレ殿下も助け船をだしてくれた。


「ミシャ・フォン・リチュオルはわたくしのクラスメイトであり、一学年を率いる立派な監督生です。怪しい者ではないかと」


 過大評価としか思えない言葉を付け加えてくれた。感激のあまり涙がでそうになる。

 一方、ヴィルは騎士達を震え上がらせる一言を口にした。


「全員の名前をしかと記憶した。あとで覚えておくように」


 未来のリンデンブルク大公からの、死の宣告とも言えるような発言であった。

 騎士達は平伏しながら謝罪する。

 私はすぐに許すと言ったのだが、ヴィルが間髪入れずに「許すな!」と厳しい一言を放つ。

 レナ殿下は騎士達が可哀想に思ったからか、下がるように命じていた。

 なんとか騎士に拘束された挙げ句尋問を受けるという流れは阻止できたわけだ。

 私も騎士のように平伏しながら感謝しなければならないだろう。

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