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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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レストランにて

 ジェムは食事会に興味がないようで、玄関前でマットのように広がって動かなくなった。

 そんなジェムを放置した状態で、レストラン行きの転移の魔法巻物を展開させる。すると一瞬で学校の最上階にあるレストランに行き着いた。 

 お店の前でヴィルは待ち構えていた。その様子にノアはびっくりしているようだった。


「お、お兄様、てっきり店内で待っているものだとばかり。なぜこちらで待たれていたのですか?」

「待ち遠しかったから」


 ヴィルはノアの肩を叩き、よくきてくれたと言っている。ノアは嬉しそうに目を細めていた。


「ミシャもありがとう。突然で驚いただろう?」

「いえいえ、ご一緒できて嬉しいです」


 そんな言葉を返すとヴィルは淡く微笑む。この兄弟は嬉しかったときの表情がそっくりだな、としみじみ思ってしまった。


 お店の中に入ると個室へ案内される。

 客は私達以外いないのか、人の気配は感じられなかった。

 ノアの横顔を見ると、緊張がぶりかえしているようだった。

 そんな彼にこつんと肩をぶつけるとハッとなる。少し気持ちが解れたのか、眉間の皺が解れたようだ。


 個室では私とヴィルが隣り合って座り、ノアが向かい合う位置に腰かける。

 気まずい空気にならないよう、ヴィルに放課後にあったことを話してみた。


「今日、ノアさんやアリーセと一緒に〝レディ・バイオレット〟のお店にいったんです」

「そうだったのか。いいドレスはあったのか?」

「はい。ね、ノアさん」

「そうなんです! 憧れていた〝レディ・バイオレット〟のお店にいけて、とても幸せでした!」


 ノアは嬉しそうにレディ・バイオレットに気に入られてドレスをいただくことになった旨をヴィルに話していた。

 話題のきっかけを作ってあげたら、ノアもここまで話せるのだ。

 思いのほか会話が盛り上がる中、前菜が運ばれてくる。レバーとキノコのテリーヌにカブを花みたいにカットしたマリネが添えてあった。家禽は臭みがまったくなく、キノコがコリコリしていておいしい。

 前菜はごくごく少量なのに、ノアはウサギみたいにちまちま食べていた。一方、私はあっという間に食べてしまう。

 貴族令嬢たるもの、ウサギみたいに少しずつ食べるのだな、と学習した。

 運ばれてきたパンは焼きたてふかふかで、幸せの味がした。

 メインの魚料理はエビのクリームパイ。パイ生地がサクサクと香ばしく、クリームは濃厚。エビもぷりぷりだ。

 メインの肉料理はアヒル肉の詰め物。中には根菜とナッツが入っている。

 肉は驚くほどやわらかくて、中のフィリングはナッツのざくざくとした食感が面白い。

 どちらのメインもおいしかった。

 口直しの柑橘ソルベをいただいたあと、チーズを挟んでデザートとなる。

 運ばれてきたのはカボチャのプティング。生クリームがたっぷり絞られていて、お腹いっぱいなのにぺろりと食べてしまった。

 ノアも食欲があったようで、ホッと胸をなで下ろす。

 食後の紅茶が運ばれると、ヴィルは本題へと移った。


「それで、報告があると話していたが」

「は、はい」


 ヴィルは私を見て優しく微笑みかけてきたので頷いておく。


「このたび、ミシャと婚約することになった」

「ミシャさんと!?」


 ノアの瞳が極限まで見開かれる。

 ショックを受けたのではないか、と思ったもののそれは杞憂だった。

 なぜかといえば、ノアが嬉しそうに微笑んだから。


「おめでとうございます! ミシャさんが義理のお姉さんになるなんて、とても嬉しいです」

「そ、そう?」


 不安な気持ちで問いかけると、ノアは大きく頷いた。


「実は心の奥底で、お兄様はミシャさんと結婚すればいいのに、って思っていたんです! でも、いろいろあるから、難しいだろうな、って考えていて」


 そうなのだ。我が家とヴィルの実家はお家柄が大きく異なる。

 公爵家が満足してくれるような持参金すら用意できないのだ。


「お父様は許可してくださったのですか?」

「もちろん。陛下のお墨付きでもある」

「よかったです!」


 まさかここまでノアに祝福されるとは思ってもいなかった。なんて考えていたら、ノアが突然涙を流したのでギョッとする。


「どうした?」

「いえ、お兄様が嫌な思いをする、政略的な結婚をするんじゃないかって、ずっと心配していて。ミシャさんと結婚できると聞いて、安心したんです」

「ノア……」


 ヴィルはノアのほうへ回り込み、背後から肩を優しく抱きしめる。


「ありがとう」


 兄弟愛を前に、私もなんだかじーんとしてしまった。

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