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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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お茶タイム

 アリーセとノアは比較的落ち着いた様子でドレスを選んでいたようだが、馬車に戻ってからは興奮していた。


「レディ・バイオレットのドレスを贈っていただけるなんて、夢みたいですわ!」

「見ることができるだけでも幸せなのに」


 店頭に置いてあったドレスはどれも美しかった。そんなドレスを着る日が訪れるなんて、今でも信じられない。


「ミシャ、ありがとうございます」

「ミシャさんのおかげで、レディ・バイオレットのドレスが着られるんだ。なんてお礼を言っていいのやら」

「いやいや、私のおかげではないわ。レディ・バイオレットの前で正しい振る舞いをしたふたりのお手柄よ」


 レディ・バイオレットのお店はいくら高位貴族であっても、店主自身が気に入らなければ客として認めないのだ。詳しい内情を知っているわけではないが、きっとそうだと思っている。

 今日、ドレスを贈ってもらえたのは、アリーセとノアが自身で得た報酬とご縁だと思っていい。


「ドレスが届くのが楽しみね」

「ええ」

「本当に」


 皆でにこにこしながらの帰宅となったものの、これでイベントは終わりではない。

 ノアと私は表情を陰らせる。


「ミシャとノア、どうかしましたの?」

「いえ、その、これから用事があって」

「お兄様と食事会なんだ」

「まあ!」


 そういえばアリーセにヴィルとの婚約について報告していなかった。後日、お茶にでも誘って打ち明けよう。


「でしたら、ゆっくり楽しんでいらして」

「うう、緊張する」

「ノア、大丈夫よ。私も一緒についているから」

「ありがとう。ミシャさんを誘ってよかった」


 これから私とヴィルの婚約について聞かされるのだが、胃を押さえているノアのとどめにならないか心配だ。


 アリーセと別れたあと、まだ食事会まで時間があったのでノアを誘う。


「よかったら家でお茶でも飲んでいく?」

「いいの? あ、でも、僕がミシャさんの家にいったらお兄様が嫌がるかも」

「そんなことないわ。いきましょう!」


 夕暮れの中、ノアと一緒にガーデン・プラントに向かった。

 チンチラと仲間達は温室での仕事を終えたようで、私の帰宅に気づくとトコトコ駆けてくる。


『今日、頑張った!』

「いつもありがとう」


 ジェムに収納していたカステラという名の報酬を一匹一匹手渡す。すると嬉しそうに受け取ってその場で頬張る。皆、おいし~い! とかわいらしく喜んでくれた。


「ノアさんの今の状態にぴったりな、いい薬草があるの」

「摘むの僕も手伝う」


 緊張に効果のある薬草はラベンダー、リンデン、セントジョンズワートなどなど。


「胃、少し痛いでしょう?」

「どうしてわかったの!?」

「さっき胃の辺りを押さえていたから」

「無意識だった。まあ、とはいっても違和感がある程度なんだけれど」


 ここで登場するのは、レモンバームである。


「消化促進効果のある薬草よ。これを入れたら胃の違和感もよくなるはず」


 ラベンダーとリンデン、そしてレモンバームをブレンドした緊張と胃に優しい薬草茶を淹れる。

 これから食事会なのでお菓子はないが、代わりにスノーベリーのジャムを舐めながら飲もう。


「ミシャさん、これって薬草茶に入れるジャム?」

「好きにどうぞ。私は舐めながら飲んでいるの」

「へえ、初めて聞いた」

「きっと雪国の処世術だわ」


 極寒のラウライフではあつあつの紅茶で体を芯から温める。そんな紅茶にジャムを入れたら、せっかくの紅茶が冷えてしまう。

 そのため、ジャムはちびちび舐めてから紅茶を飲む、というのが習慣になっているのだ。


「そうだったんだ」

「まあ単純においしい、ってのもあるんだけれど」


 スノーベリーの甘酸っぱいジャムを舐めてから薬草茶を飲む。すると、薬草の癖を緩和してくれるのだ。

 ノアも気になったようで、私を真似てスノーベリーのジャムを舐めてから薬草茶を飲む。


「本当だ! おいしい!」

「でしょう?」


 でも、これは褒められたマナーではないだろう。


「だったらミシャさんと僕とでお茶を飲むときの、正式マナーにしよう」

「いいわね」


 ノアの頬に赤みが差す。先ほどまで青白かったので、緊張は解れたのだろう。

 お喋りをしている間に、約束の時間となる。

 学校の最上階にあるレストランへ向かったのだった。

 

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