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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
四部・第一章 衝撃の転校生

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お誘い

 翌日――教室内が張り詰めた空気に包まれているのに気づく。

 皆、エルノフィーレ殿下がいるので緊張しているのだろう。

 あのアリーセですら、居心地悪そうにしていた。

 レナ殿下はエルノフィーレ殿下を気遣っているのか、積極的に話しかけている。

 リジーはお上品な会話についていけないのか、苛立っているように見えた。

 もう一人、教室内にイライラしている人物がいた。ノアである。

 おそらくエルノフィーレ殿下にレナ殿下が取られないか気が気でないのだろう。

 冷静にエルノフィーレ殿下とレナ殿下の様子を観察してみたらわかるのだが、ふたりの間には国という名の高く厚い壁があるように思える。

 双方の壁を乗り越えないような気遣いの中、会話をしているように見えた。

 とても仲睦まじい、という雰囲気ではないだろう。

 ふたりの結婚が噂される中で、ノアも焦っているだろうか? 見てわかるような人物観察もできていないように思える。

 話しかけたら怒られそうな気がしたが、放っておけない。ノアに朝の挨拶をしてみた。


「ノアさん、おはよう」

「ミシャさん、おはよう」


 ふてくされた様子でノアは返してくれた。


「その、どうかしたの?」

「別に。機嫌が悪いだけ」


 むしゃくしゃしている、と自らの状態だけは解析できているようだ。


「私に何かできることはある?」


 さすがにエルノフィーレ殿下とレナ殿下の会話を邪魔することはできないが、それ以外であればなんでもできるだろう。


「何かって……別に何も……あ! だったら放課後、お買い物にでも付き合ってもらいたい! 監督生だったら、外出許可が取りやすいでしょう?」

「まあ、普段は難しいかもしれないけれど」


 さすがの私も監督生の特権を私的に使うわけにはいかない。

 けれども今回に限っては外出する理由が私にはある。


「実は夜会で着るドレスを入手しなければならないの」

「夜会って、もしかしてエルノフィーレ殿下の歓迎するやつ?」

「ええ、そう」

「それって九日後に開催されるやつでしょう? 今から作るって無理なんじゃないの?」


 そうなのだ。夜会シーズンは既製服や貸し出し服など、根こそぎお店からなくなる。

 皆、そうなるのを想定して、一年も前からドレスを予約しておくのだ。


「残っているとしたら祖母世代に流行った古くさいドレスとか、舞台で使うような安っぽい衣装しかないんじゃないの?」

「そうなんだけれど、実はこれをいただいて」


 〝レディ・バイオレット〟の商品引換券をノアにこっそり見せる。


「こ、これは、入手困難の人気店――もが!」


 周囲からの注目を浴びてしまいそうなので、慌ててノアの口を塞ぐ。


「レディ・バイオレットのお店なんて、この僕でも予約を断られた王室御用達店なのに、どうやって手に入れたの?」


 まさかヴィルに貰ったのか? と聞かれたが首を横に振る。

 驚かないでほしいと前置きをしてから、耳元で囁いた。


「実は国王陛下からいただいたの」

「!?」


 約束通りノアは声にださなかったものの、目が極限まで見開く。


「どういう縁でいただいたの?」

「あ~~~、まあ、いろいろあって」

「そう。なんだか大変なことに巻き込まれてそう」


 本当にそうなのだ。ヴィルは私達の結婚についてノアには説明していないのだろうか。

 私がここで報告するのもなんなので、ヴィル本人に確認をしなければならない。


「そんなわけだから、お店に付き合ってもらえると嬉しいんだけれど」

「それはもちろん! というか、レディ・バイオレットのお店にいけるなんて最高だよ」


 ノアレベルの貴族でも、お店に入ることすらできないらしい。

 ドレスを目にすることだけでも嬉しい、とノアは言ってくれた。


「そうだ。アリーセも誘おうよ。きっと喜ぶはずだから」

「わかったわ」


 アリーセのほうへ行こうとしたら、ノアが私の腕を引く。


「え、何?」

「そうだ。ミシャさん、僕の用事にも付き合ってくれない?」

「用事って?」

「夜、一緒に食事をしようってお兄様に誘われているんだ」


 このように呼びだされたのは初めてだという。


「きっと大事な話をするんだ。僕を呼びだすことなんて、これまでなかったから」

「そ、そうなの。でも、私はいないほうがいいんじゃないの?」

「緊張するからいて!」


 場所は最上階にあるレストランだという。これから予約したら私の分の料理も用意されるはずだ、とノアは主張する。


「もしもヴィル先輩が席を外してほしいと言ったら従うけれど、それでもいいの?」

「もちろん!!」


 そんなわけでレディ・バイオレットのお店にいったあと、ヴィルとノアの食事会に参加することとなった。

昨日から新連載がスタートしております!こちらも読んでいただけたら嬉しいです。

『婚家の墓守を押しつけられた私、ご先祖様は黄金竜だそうで、親族をこらしめてくださるそうです 』

https://book1.adouzi.eu.org/n8483jf/

あらすじ

謎が多い一族、ヴェルノワ公爵家のご当主様と結婚したのはよかったものの、ご当主様は御年80歳、さらに寝たきりで意識がなく、呪われているという。誰が見てもわかりやすい政略結婚だったが、当主代理である66歳の義弟が私に、「一人で墓守をしろ」と言うのだ。まるで使用人同然の扱いに辟易していたものの、霊廟で祀られているご先祖様は金脈を生み出す黄金竜だった。酷い目に遭っているお主を助けてやる!、なんて偉そうに言う黄金竜だったが……?

墓守妻と黄金竜、それから謎が多いご当主様が繰り広げるラブ(?)ファンタジー

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