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パリの惨劇

左派政権が政権を担っていたフランスで事件が起きます。






1938年も終盤に差し掛かり、秋というには肌寒い日が続く様になって来た。


ヨーロッパではドイツの強引ともいえるオーストリア、チェコ併合に非難の声が上がっているが、同時にドイツの訴える防共については一定の支持が集まっており、ドイツの扱いに当惑している様だ。


特に、例の満洲で起きたフランス人技師夫妻殺害事件や上海での砲撃事件など、共産勢力が起こしたテロ行為に危機感を抱く人が増えて来た事が大きいのだろう。


共産主義というとソ連に次いで影響力が強かったのは1936年の総選挙で共産党を含む左派政党が勝利して社会主義政権が誕生したフランスだ。

政権を奪取した政権は自らをフランス人民戦線と称し、それ以外の政党を反人民戦線と呼び激しく対立したのであるが、安定多数の議席を保持する人民戦線政府は強権的に自らの政治を断行し、その外交はそれ迄と異なり一言で言えば親ソであった。


フランス人民戦線のブルム内閣は労働時間の短縮や有給休暇の義務化、官吏の待遇向上や恩給制度などを次々と成立させていったのであるが、その結果フランス国内の製造コストが増大し、耐え兼ねた国内企業が満州や日本などに工場を移した結果、企業としての生産コストは大幅に圧縮され、業績が上向いた。

しかしながら、国内の工場が海外に移転されたという事は当然ながらそこで働いていた労働者は職を失うという事で、失業者は深刻な社会不安をもたらした。


海外で生産する事で、そこそこの品質の製品を低価格で市場に供給される様になり、その事はフランス国民に歓迎されたが、海外に出る事が出来なかった国内企業は海外に工場を移した企業との価格競争に晒される事になり、結果的に全体で見ればフランス労働者の実質賃金は大幅に低下して行った。


そして、1936年のスペイン内戦の対応を巡って人民戦線ないで対立が発生してブルム内閣は総辞職し、人民戦線政権は崩壊した。


その後も左派政権そのものは続き、離脱政党を出しながら、再びブルムが首相に選ばれたが、中国の租界でのテロが発生した。その時はあくまで中国国内の内戦の巻き添えになった不幸な出来事という事で済ませた様だが、その後のフランス人夫妻殺害事件でのソ連側の対応に左派政権はメンツを潰され、フランス国民の親ソ感情は一気に悪化した。


その結果、再びブルム内閣は総辞職の憂き目にあった。


その後を継いだのが、有能な中道政治家であり蔵相を務めていたポール・レイノーで、フランス国民の支持の元、左右両派から中道に近い政党を纏め上げ中道政権を確立した。


これにより、1936年に誕生した左派政権は終焉を告げたのであるが、それで収まらないのは共産党支持者など、熱烈な共産主義者達であり、彼らは労働組合を動員して大規模なデモやストライキを扇動し、レイノーを引きずり下ろし左派政権の復活を求めたが、レイノーは巧みな手腕を発揮してストライキを無効化し、自ら労働者に訴えるという手法でデモ隊を解散させ、フランス経済を何とか立て直すべく矢継ぎ早の景気対策を打った。


それもあり、レイノー政権は国民の支持を増やしていった。


だが、それが面白くないのは共産主義者達だ。


彼らは国民の支持が離れ賛同者が減っていき先鋭化が進んでいったからそういう極端な思考になったのか俺にはわからないが、社会を大混乱に陥れればレイノー政権を叩き潰せると考えた様だ。


1938年も暮れとなったクリスマスで賑わうパリの街角で、多くのフランス国民が死傷するという爆弾テロ事件が発生した。



その報は世界を駆け巡り、共産主義は危険思想であるという認識が急速に広まっていった。我が国からすれば、やっと気が付いたのかという感じではあるのだが。


フランスで共産主義が非合法化され、フランス共産党は関与を直ちに否定したが、多くの関係者が拘束され、その際に押収された書類からソ連との繋がりが露呈した。


これにより我が国でも同じ事が起きたが、共産主義者から大勢の転向者が出るなどし、政権自体は更に国民の支持を集めた様だが、フランス国内は連日逮捕者が出るなど大混乱に陥った。


折角のクリスマスを台無しにされ、静かに家族で過ごしたかっただろうに年末年始が丸つぶれとは気の毒な事だ。





先頃北の脅威に共に当たるという方針に転換した海軍が、今後は本分である海上戦闘だけでなく、陸上作戦に関しても積極的にかかわる事になった。


この方針転換により、これ迄海軍の陸上戦力というと陸戦隊だが、この部隊は常設部隊ではなく、それ以前には常設の海兵隊という組織が存在したが明治9年に廃止され、その後は常設の陸上部隊は保有していなかった為、海兵隊を復活させ再度編成される事になった。


既存の陸戦隊を基幹に旅団編成にまで拡大し、戦車等の装甲車両も含む混成機械化旅団にするそうだ。


それにより、我が陸軍が海軍と協力して開発を進めていた特種船神州丸はこのまま陸軍が特種輸送船として運用するが、より上陸作戦能力を高めた揚陸艦を開発運用する事になった。


新たに海軍が開発する、特種船、海軍でいうところの特種輸送艦は複数建造の予定で、陸軍が搭乗する事も見越して陸軍との共同開発になる。


上陸支援艦は海兵隊の旅団司令部として機能するだけの規模を有する大型艦艇になるとの事だが、上海での戦闘経験を活かして運用を考えた結果、航空支援は必須という結論に至ったとの事。


神州丸はカタパルトを利用して航空機を運用する事が可能であるが、開発時には航空甲板の設置を要望に入れていたらしい。


結局、船の速度の問題で飛行甲板の設置は不可能との判断で、カタパルトとなったのであるが、運用を考えれば飛行甲板が有利なのは間違いない。


海軍は先頃の張鼓峰事件やソ連の極東での軍備増強を鑑み、早急な戦力化が必要と判断し、建造中だった航空母艦を転用する事になった。


つまり、最初から航空甲板を運用する事を前提に開発された空母に海兵隊の為に必要な装備を追加するという事なのだろうか?



海軍との会合で海軍側から出た話では、敵の前線の奥への上陸作戦や、沿岸部の敵都市や拠点の制圧等の作戦を検討しているとの事だ。


また、今後は海軍の攻撃機や艦砲の届く範囲にはなるが、積極的に支援を行ってくれるとの事であり、迅速な火力投下が可能になる。


現実にこれらが実現すれば、格段に有利に戦えるようになるだろう。



海軍は現在の我が国が保有する最大の戦艦である長門を更に超える戦艦の開発を目指していたとの事だが、軍縮条約を利用して欧米列強の海軍力に歯止めを掛けている今、実現は困難との判断で断念、条約の範囲内で既存艦艇の近代化改修などに力を入れる事にしたとの事だ。





海軍との会合と並行して、これまで陸軍の装備であるが技本と別建になって居た陸軍航空技術研究所ともこれまで以上に関りを持ち合理化を進める事になった。


その際に、陸軍航空技術研究所が開発している新型機の資料を見せて貰ったのだが、先頃の張鼓峰事件で高高度から飛来するソ連の重爆撃機の迎撃に手こずった事例を重く見て、従来の軽快な戦闘機以外にも高速性能を重視した重戦闘機といえるものを開発しているとの事だ。


これに搭載する為の20粍機関砲の選定の協力を要請された。


見せて貰った戦闘機は川崎が開発しているそうだが、中華民国軍がドイツから調達しているBf109に似たフォルムの機体だった。


この機体は一度は不採用になったキ28試製戦闘機のエンジンを米国のアリソンと川崎の合弁会社が開発した水冷エンジンを搭載し、Bf-109やI-16の様に固定脚を引き込み脚に変更し、機首フォルムも新型エンジンに合わせて再設計した物との事。


現時点では十三粍機銃を四門装備しているそうだが、モーターカノンとして20mm機関砲の装備を検討しているとの事だ。


一度は引き下がったソ連であるが、軍備増強を進めている事を見ても、なにも起こらない筈は無く、それはそう遠くない時期の可能性もある。


ソ連機は頑丈らしいが、この戦闘機が無事に採用されて戦力化されると良いな。






史実では第二次世界大戦でフランスが敗北する迄社会主義政権でしたが、本作世界では一足早く中道政権が発足、共産主義が非合法化される事になりました。

そして、某空母が強襲揚陸艦へ、大和が消滅し長門、金剛が近代化改修。強襲揚陸艦は海軍装備になりました。


そして、飛燕が史実とは別の形で史実よりも早く誕生。

アメリカ陸軍が採用しなかったV-1710をアリソンがドイツからエンジン調達が出来ず、新たな水冷エンジンを探していた川崎に売り込み、合弁会社を設立、アリソンV-1710をベースに川崎の持つノウハウや知見も取り入れたハ-40ことV-1710改を採用する事になりました。



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― 新着の感想 ―
海軍の軍縮条約って艦齢古い船の代艦が制限内の性能で建造出来るんじゃないですか? イタリアが史実通りエチオピア侵攻してるなら脱退するので、エスカレーター条項(本来は35000t、14インチまで)で最大排…
[一言] アリソンの改修で弄った所に過給機があればいいんだけど。アリソンだと過給機を変えて二段以上にするか、排気過給機でも付けないと。元の一段のままだと低空専用になっちゃいますね。そもそも論でいうと、…
2023/04/09 13:47 丁三十四 八十五
[一言] アリソンにモーターカノンはできませんよ。構造上。 やるなら、エアコブラみたいにエンジンが後部にないと
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