19話 創造の力
誤字報告いつもありがとうございます。
暫く定期的な時間ではなく一日一本のペースで書いて行きたいと思います。
露出狂は、一見はスタイルも良く、顔も美人さんだと思うのですが、恥という概念がない鎧(?)を着ている事ですべてが台無しになっています。
今も全身に兵士の血を浴びて、妖艶な笑みを浮かべています。
体から滴る血が妖美さを引き立てていますね。
露出狂を囲む兵士は、そんな彼女の姿に怯えきっています。一応忠告してあげましょうか?
「そんなに怯えていてはじゃ……」
私が何かを言い終わる前に兵士達は殺されてしまいました。
まぁ、敵の前で怯えて呆然としてしまえば、殺されても仕方ないですね。
ともかく、この先には姫様とレッグさんがいますので、露出狂にはここで退場してもらいましょうか。
しかし……。
「随分と簡単に侵入されてしまいましたね。このお城の警備はどうなっているのでしょうか?」
「ふふふ。元々ジゼルはこの国の宮廷魔術師ですわよ。城への転移など雑作もない事でしょう」
「そうですか……。露出狂なので頭がイカれていると思っていたのですが、話は通じるようです。それで、何が目的ですか?」
「さてねぇ……。ジゼルに城で暴れて来いと言われただけですから、私はその命令に従っているだけですわ」
命令ですか……。
前回は露出狂と言われ怒っていたのですが、今回は無視ですか。しかも、自分からタロウではなくジゼルに従っている言いましたね。操られているのでしょうか?
それに、見た目はほとんど変わっていませんが、何やら雰囲気が違いますねぇ。
「でも、よかったわぁ」
「はい?」
露出狂は私を見て嗤います。
「私を殺した貴女に復讐できるのですもの」
「復讐ですか……。弱い貴女に可能ですか?」
「できるわよ~」
露出狂から黒い何かが出て来ました。
これは武闘家の【武神の決意】と同じです。
毛玉の話を信じるのならば、あの力は悪魔の加護だという事ですが、露出狂が放っているモノも同じ力ですかね?
「今回は本気を出しますが、貴女を見くびりませんわ。貴女を確実に殺す為に、ジゼルから強力な武器を貰ってきましたの」
露出狂は禍々しい剣を取り出します。
アレは……魔剣という奴ですか?
「魔剣【シトリ】ですわ。私を露出狂と蔑んだ貴女を後悔させてあげますわ」
無視していたと思いましたが、やはり気にはしていたんですね。
露出狂が構えると黒い何かが魔剣にまとわりつきます。
そして、露出狂が私めがけて駆けてきます。
……確かに前回よりも速いですね。
しかし。
私は露出狂の目を狙いナイフを投げつけます。
しかし、簡単に避けられてしまいました。
「今回はジゼルから【絶対回避】を借りてきましたわ。その程度の攻撃当たりませんわ」
露出狂が剣を振るってきますが、私は簡単に避けます。
ふむ……。
借りるですか……。
神の加護を借りてくる事が可能なのでしょうか?
もしかしたら、借りたのではなく埋め込んだ?
まさかと思いますが、ジゼルも【神殺し】なのでしょうか?
しかし、借りるというのは【破壊】【再生】【創造】にどれに当てはまるのでしょうか?
……ふむ。
聞きたい事が増えてしまいましたね。
タロウのような雑魚相手であれば連撃で対応できたのですが、露出狂はタロウよりも強いですし、連撃では避けられそうですね。
本当に【絶対回避】は厄介です。
ここは【武神の決意】でも使って戦いましょう。
あれならば、露出狂にもダメージが入りそうです。
私は【武神の決意】を発動させます。
「ふふふ……。それがジゼルの言っていた【悪魔の力】ですわね」
【悪魔の力】? 何の事でしょう?
更に聞きたい事が増えました。
露出狂をここで殺すつもりでしたが、捕らえる事にしましょう。
タロウの力が七つの大罪である【強欲】というのは、毛玉の話でほぼ確定でいいと思いますが、まだ不明な点が多すぎます。
もしタロウに命を奪い他者に与える力があれば露出狂もタロウと同じ死なない体という事になります。
しかし、露出狂と武闘家の死は先日確認しましたし、姫様に後から聞いたところ、ジゼルは【蘇生魔法】を使えるみたいです。
タロウは魂を奪い【不老不死】を得て、露出狂達は蘇生させられた?
どちらにしても、考えているだけでは答えは出ません。
そもそも、タロウの【不老不死】もちゃんと確認を取ったわけではないのですから。
さっさと四肢を使えなくして捕らえるとしましょう。
「ふふふ。攻撃が当たらないのは困りましたわね。本当はコレを使うと醜くなってしまうので嫌なのですが、仕方ありませんね」
露出狂から黒い何かがあふれ出し、髪の毛が逆立つように靡き始めます。
そして眼が真っ赤に染まりました。
まるで、本物の悪魔ですね。
「【狂戦士】発動ですわ!!」
露出狂がそう叫ぶと、彼女の体が二倍に膨れ上がります。そして黒い何かが鎧の様に纏わりついていますね。
口は獣のように裂け、牙も見えます。
「ぎゃがぁああああああああ!!」
咆哮ですか。
まるで獣……いえ、獣そのものですね。
露出狂は私に迫ります。
先程よりもはるかに速いです。
これはナイフでは分が悪いですね。
私は落ちていた兵士の剣を二本拾います。
そして露出狂に斬りかかったのですが、皮膚そのものが硬く傷が着きません。
さて、これは困りました。
【狂戦士】化する事で、【絶対回避】は無効化されているみたいですが、攻撃が通らなければ意味がありません。
普通に斬っても斬れない、全力で斬ればおそらくは剣が持ちません。
どうしましょうか?
あ……。
そういえば……。
(お前には【創造】があるだろう? 俺に【身体超強化】を作ってくれたじゃないか)
(【破壊】【再生】【創造】の三つだ。このどれかを持っていれば【神殺し】のクラスを得る事ができる)
私のクラスは【神殺し】
そして、三つのうちの【創造】を持っている可能性がある……。
「私が本当に【創造】の力を持っているのなら……」
作れますかね。
私はイメージします。
……神?
そんなモノは信じません。
私が信じるのは……エレン。そして……自分です。
光は……エレン。
闇は……私。
私は両手の剣に魔力を送り込みます。
剣の名前ですか?
聖剣は【ヒカリ】魔剣は【ヤミ】ですかね。
私自身が光り、光が右手の剣に私の身体を纏っていた黒い力が左手の剣に。
【疑似・聖魔剣創造】
「できました」
私の右手には光を凝縮した聖剣【ヒカリ】が、左手には闇を収束した魔剣【ヤミ】が握られています。
「ぎゃぎゃ!?」
露出狂は危険を察知して一歩下がります。
しかし……。
露出狂の胸から血が噴き出しました。
「ぎゃぎゃあああああ!!」
どうやら私の聖剣は上手く作り出せたようです。私の剣速に耐えました。
魔剣はどうでしょう?
私の全力の斬り落としで、露出狂の腕が落ちます。
「ぎゃがぁああああああああ!!」
どうやら魔剣も強度はバッチリです。
これは良いモノができましたね。
さて……試し斬りの時間です。




