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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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11話 二段階

誤字報告、いつもありがとうございます。


 まさか、こんな事になるとはな。

 今は戦士のような事をやっているが、俺も一端の武闘家だったからアルジーの事をよく知っている。

 正直な気持ち……、彼女に憧れた。

 異性だからとか年下とかは関係ない。ただ、純粋に武闘家として憧れたのだ。


 そんな憧れのアルジーが俺を殺そうと襲いかかっている。

 俺は昔を思い出しアルジーの攻撃を捌く。

 ……一撃一撃が重い。

 だが、反応できないわけじゃない。

 武闘家をやめてから随分と経つが、体が覚えているモノだな。

 

 俺が武闘家を辞めたのは、足の怪我が原因じゃない。

 アルジーには俺が足を庇っているように見えたのかもしれないが、それはただの癖だ。

 ……武闘家だった頃のな!!


 俺は渾身の蹴りでアルジーを攻撃する。

 アルジーは俺の蹴りを止めようとしているが、舐めるなよ。

 【疑似・身体超強化】と【武神の決意】で纏っているモノは同格だと思っている。

 だが、俺とお前の体格差だ。止められると思うな!!


 アルジーは、俺の蹴りにより体勢を崩す。


「クソっ、どうして私がこんな目に遭っているね!?」


 格下と思っていた俺に、圧倒的有利だと思っていた格闘で追い詰められている事にキレているのか? それとも動揺しているのか?

 どちらにしても相手は格上の武闘家だ。ここまで戦えているのはレティシアが【疑似・身体超強化】を作ってくれたおかげだ。

 この力が無ければ、武闘家アルジーと互角に戦うなんて事はできなかった。


「どうした!!? 神の加護を持っていてもこんなモノか!!」

「黙るね!! お、お前、その武術をどこで身につけたね!!」

「お前には関係ないね!!」


 俺はアルジーの突きを避け、その腕を掴みへし折った。


「ぎゃああ!!」


 今のは運が良かった。

 アルジーが冷静だったら、掴まれる危険のあるあんな無謀な突きは使わなかった。


「許さないね!!」


 アルジーは黒い魔力で腕を固定している。

 まさか、あの魔力は骨折の治療までできるのか!?

 本当に厄介だな。


「殺してやるね」


 アルジーの黒い魔力が増大した!?

 チッ!!

 まだ本気じゃなかったのかよ!?


 アルジーの動きは今までよりもはるかに速くなる。

 いや、それだけじゃない。攻撃を受けた腕が痺れたという事は、攻撃力まで上がっているのか!?

 本当に厄介な女だ。


「さっきまでの威勢はどこに行ったね!!」

「う、うるせぇ!!」


 クソっ。

 【疑似・身体超強化】を使ってもここまでの差があるのか!!?

 どうする?

 いや、どうする事も……。


『段階は四つ(・・)ありますから一番下の段階を使ってください』

『今のドゥラークさんでは一段階目が限界みたいです。無理に二段階目を発動させないでくださいね』


 レティシアの言葉が思い出される。

 

 二段階……。

 一段階目で二倍くらいの身体能力の強化になっている……。

 二段階目は三倍か?

 いや、そこはたいした問題じゃないのかもな……。

 アルジーの攻撃は苛烈さが増している。

 このままでは、俺は負ける。

 俺が死ねば、レティシアが来る。

 エレンは死なないのだからそれでも構わな……。


『ギルガさんが貴方も家族と言っていましたからね。死なれると困るのですよ』


 いや、死ぬわけにいかねぇか……。

 もし俺が死んじまったら、レティシアは怒る。

 アイツの事だ、俺を生き返らせてもう一度殺すのだろうな。

 アイツが蘇生魔法を使えるかどうかは知らんが、アイツならやりかねん。


 ……それはごめんだな。

 どうせ、負けたら死ぬんだ。

 それなら……やってやる!!


「どうしたね!! このまま死ぬまで防御するつもりか!?」

「……」


 さて……。


『魔力を全身に巡らせる感じです』


 魔力を巡らせる。

 どっちにしても、一度離れさせねぇとな。


「うらぁああ!!」

「チッ!! 悪あがきを!?」


 俺はアルジーに蹴りを入れるが、避けられる。

 だが、アルジーは一歩下がった。

 もう逃がさねぇぞ……。


 俺は魔力を全身に巡らせて爆発させる。

 その瞬間、俺の全身に激痛が走る。

 ……体が悲鳴を上げているのがわかる。

 せめて、アルジーを倒すまでは、持ってくれよ。

 俺はアルジーに迫り頭を掴む。


「は、離すね!?」

「離すかよ!!」


 アルジーの頭を掴んだまま、教会の壁へと走り、頭を壁に打ち付ける。


「がはぁ!!」


 そして、思いっきり地面に叩きつけた。


「ぐぶぅ!!」


 これで終わらねぇぞ!!

 踏みつぶそうとしたのだが、逃げられたか。


「く、クソっ!! お、お前の急激なパワーアップは何だ!?」

「お前の大好きな勇者が持つ【身体超強化】だろうが!! ただし、俺のは【疑似・身体超強化】だがな!!」


 アルジーは黒い魔力を拳に纏わせ俺を殴りに来る。

 だが、遅ぇよ!!


 俺はアルジーの拳を掴み握り潰す。


「ぎゃああああああ!!!」

「うるせぇよ!!」


 そのまま、再び教会の壁に投げつける。

 アルジーは壁に打ち付けられ血を吐く。


「く、クソっ!! ジゼルの話と違うじゃねぇか!! ここで注意するのは元Aランクのギルガだけだったんじゃねぇのかよ!?」


 どういう事だ?

 俺達の事を初めっから知っていたのか!?


「お前には話を聞く必要があるな!! 悪いが、四肢の骨を砕かせてもらうぞ!!」

「クソが!! 調子に乗るんじゃねぇ!!」


 アルジーの黒い魔力がさらに膨らむ。

 だが……。


 全く恐怖を感じない。

 どういう事だ?


 アルジーの動きが遅く感じる……。

 いや、実際遅いのか?


 俺はアルジーの頭を再び掴み地面に叩きつけた。


「ぐふぅ!!?」

「もう降参しろ!!」


 アルジーはまだ暴れている。

 

 これくらいで大人しくしてくれ。

 俺自身ももう限界かもしれん。

 その時……。

 俺の頭から血が噴き出る。


「ぐっ!?」


 げ、限界か?

 腕の力が……。

 その瞬間、アルジーが俺から離れる。


「どうやらあんたも限界みたいだね!! あんたの顔は覚えたよ!! 今日は見逃してやるが、お前だけは私が絶対殺してやる!!」


 アルジーは捨て台詞を吐いて、逃げるように消えてしまった。

 どこに行きやがった……。


 い、いや……今はそれどころじゃない。

 た、立ってられねぇ……。


 俺はここで意識を失った。






「く、クソっ……なんなんだ!! あの力は!?」


 ん?

 アルジーからの通信か?

 よりにもよって城の入り口か……。


『アルジー、お帰り。どうだった?』

「て、てめぇ……話が違うじゃねぇか!?」

『どうしたんだい? 口調が崩れているよ。それに話が違う? 何を言っているんだい? 君はギルガと戦ったのだろう?』

「違う!! ギルガだけなら殺せたはずだ!! 私が殺されかけたのはもう一人の男だ!! あの男の力は何だ!?」


 なに?

 ギルガではなかっただと?

 もう一人の男……ドゥラークだったか?

 アイツはそこまで強くなかったはずだ。


『その力の事を……』

「私が作った力ですよ……」

「……え?」


 見つかってしまったか。

 城の入り口に逃げるからこういう事になる。


『再会が早かったね。【忌み子】ちゃん』

「そうですね。私としても直接相まみえるまでは会いたくなかったんですがね……。これもタロウの……いえ、貴女の仲間ですか?」

『そうだよ。殺すのなら一思いに殺してやってくれるかい?』

「貴女の手の上で踊らされている気分ですが、まぁ、良いでしょう」


 よく言うよ……。分かっていて踊ってくれている癖にね。

 本当に怖いお嬢ちゃんだ……。


『話が早くて助かるよ。じゃあ、私はアルジーの遺体を回収する準備をさせてもらうよ。じゃあね』

「じ、ジゼル!?」

「さて……最期に言いたい……」


 私は通信を切り、魔導カプセルに入ったソレーヌの死体を見上げる。

 しかし、あの【呪い子】の娘がここまで危険に育っているとはね。

 私の研究所(・・・)から逃げ出した実験動物がどうなっているかは気になっていたが、面白いのを産み落としてくれたものだ……。


「さぁ、早くアルジーを殺して、タロウと対峙すればいい。私が興味があるのは神の加護だけだ……惨たらしくタロウを痛めつけ、新たな加護を生み出しておくれ……。私の可愛い【忌み子】ちゃん……」


 私はソレーヌの死体に視線を移し……。

 魔法を使う。


 もう一度、私のために働いて貰うぞ……。

 哀れな剣姫よ……。

ドゥラークさんが主人公みたいだぁ……(゜Д゜;)


感想、気になる点などがあればぜひ書いて行ってください。

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