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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
2章 レティシア、ファビエ王都で暴れる。

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9話 大魔導ジゼル

誤字報告、いつもありがとうございます。


 光の外套の魔力の源となっていた赤い宝石を砕いた事で、光の外套は塵になり霧散しました。

 ……彼女は強かったですよ。

 だけど、それは聖剣の破壊力でも、自身の〈身体強化〉でもありません。

 一番厄介だと思ったのは、光の外套です。

 

 聖剣の破壊力がどれだけあろうとも、当たらなければ全くの無意味ですし、〈身体強化〉でどれだけ体を強化しても、速さで私に勝てないのならば、これも無意味です。

 だけど、防御力である光の外套だけは話が別です。武具による防御力の高さは、その武具が破壊されない限りは有効で、別に当たらなくても、私より遅くても効果は発揮されます。

 もし敗走する場合でも、硬い防御力で死ななければ逃げ切る事も可能です。

 じゃあ、それが失われれば?


「ば、馬鹿な……わ、私の光の外套が……」


 光の外套を失った露出狂はまだ信じられない様で呆然としています。今なら一撃で殺せそうです。

 しかし、それでは面白くありません。


「外套が無くなった貴女に何ができるのか楽しみです」

「つっ……!!?」


 私は露出狂の頬を殴ります。

 我に返った露出狂は私から距離を取りました。


「ま、まだですわ。まだ、負けていませんわ!!」


 そうです。

 それでいいのです。


 私はナイフを投げます。

 露出狂は簡単に弾き返します。

 しかし、私が何本も投げますので、そこから動けないようです。

 威勢のいい事を言っていましたが、結局はそれしかできないでしょうね。

 外套があれば弾く必要も無く、私に斬りかかる事も可能だったのでしょうが、今は違います。

 私は急所を的確に狙っています。

 喉に目、首筋、太もも……どこかに刺されば死ぬでしょうね。


 露出狂は必死になってナイフを弾いています。

 その顔に余裕はありませんね。


「くっ、貴女は何本のナイフを所持しているのですか!?」


 何本ですか? 下らない事を気にするのですね。

 まぁ、数えた事が無いのでわかりませんが……。


「もしかして無くなるのを期待しているのですか?」

「……」


 露出狂は黙ってしまいました。

 図星だったのですかね。

 じゃあ、ちゃんと教えてあげなきゃいけません。


「少なくとも、あと五百本以上はありますよ」

「え!?」


 私はテ……何とかの町の武器屋さんで、毎月の様にナイフを百本ずつ買っていましたから、常にナイフが溜まる一方だったのですよ。

 まぁ、魔物相手であれば二、三本しか必要ありませんし、本当は百本も買う必要はなかったのですが、私のせいでお仕事が無くなってしまった事に罪悪感はありましたからね。

 おかげで、私は常にお金が無かったんですけど、そのおかげで今は潤沢にナイフを使えるのです。


「まだまだありますよ。がんばって弾いて下さいね」


 私は投げる速度を徐々に早くしていきます。まぁ、ある程度までなら捌ききれるでしょう。

 しかし、二本同時や、三本同時はどうですか?


「くぅ、あ、う!!」


 露出狂の白い肌が少しずつ血に染まります。

 どうやら、二本同時や三本同時には対応できないみたいです。

 一本は急所を狙い、後は適当に傷つくように投げます。

 すると、露出狂は急所だけのナイフを弾き、その代わりに残りのナイフは他の場所を掠ったりしています。

 あ、刺さらないように投げてますよ。

 これも計画通りです。


「くっ、こ、こんなはずでは……」


 露出狂もいい具合に全身血塗れになってきました。

 そろそろ殺してしまいましょうか。


 しかし、露出狂の目は諦めていないようです。

 顔の向きは変わりませんが、目線はキョロキョロとしています。何とか逃げようとしているのでしょうね。


 逃がすと思いますか?

 そう思った時に、聖剣が光り始めました。

 アレは……、聖剣から……()ですか?

 どういう事でしょう?


 もしかして、煙幕ですか?

 小癪ですねぇ。


 でも、私には通用しませんよ?


「ひ、ひぎゃああああああ!!」


 露出狂は悲鳴を上げます。

 私が聖剣を持つ方の腕を斬り飛ばしたのが原因です。

 聖剣は腕と一緒に転がっていきます。


 私は聖剣を拾います。


「ふむ。気に入らない聖剣ですねぇ……。破壊しておきましょうか」


 しかし、魔力の無い今の私では砕くまではできません。

 さて……どうしましょうかねぇ。

 折る事なら可能だと思うのですが……。


『汚らわしい魂を持つ者が我に触れるでない!!』


 はて?

 今の声は一体……。


『我を放せ!!」

 

 もしかして聖剣ですか?

 これは驚きました。聖剣というのは意志を持っているのですね。

 という事は……。


 私はできうる力で刀身をへし折ろうと曲げます。


『や、止めろ!! 我は聖剣だ……折れる折れる!!』


 楽しいですねぇ……。

 おっと、露出狂を忘れていました。

 私は一気に聖剣をへし折り、遠くに投げます。


『ぎゃあああああ!!』


 これでうるさいのはなくなりました。

 さて……。


「露出狂さん。これでお別れなのですが、最期に言う事は?」

「わ、私は死なない!!」


 そう言って、何かを使って露出狂は消えます。

 転移魔法ですか? しかし、魔法では無かったような気が……、今のは何でしょう?

 まぁ、いいです。

 この町に勇者タロウがいるのであればこの町からは出ていないでしょう。


 私は目を閉じ露出狂を捜します。


 ……。


 いました。

 一人の様ですね。


 私は露出狂を追います。

 露出狂は、その場を動きません。

 いえ、出血で動けないのでしょう。


 路地裏に隠れているようですね。

 ん?

 一人でブツブツ言っていますね。

 誰かと話をしているのでしょうか?

 耳を澄ますと露出狂の声が聞こえます。


「じ、ジゼル……。助けてください」

『……』


 ジゼル?

 お仲間でしょうか……。

 しかし、相手が何を言っているのかまでは分かりませんね。

 近付いたら聞こえますかね。


 私は露出狂の目の前に立ちます。


「こんな所に居ましたか」

「あ、あ、ど、どうして……」


 露出狂は青褪めています。

 逃がすとでも思ったのでしょうか?


「どうしても何も、貴女を見つけて追いかけてきただけに決まっているじゃないですか」

『どうした?』


 この声は?

 女性みたいですね……。


「貴女は勇者タロウのお仲間ですか? あ、第なに夫人ですか?」

『ふむ。君は私の声が聞こえるのかい?』

「聞こえますよ」

『おかしいな。これは一種のテレパシーというモノで、私の仲間しか聞こえないはずなのだがね』

「聞こえるのだから仕方ありません。ところで質問には答えてくれないのですか?」

『あはは。答えてあげるよ。私は仲間だけど、タロウの妻の座には興味はないよ。彼の持つ加護には興味があるけどね。あぁ、私は勇者タロウの仲間で魔導士のジゼルという。以後お見知りおきを」

「へぇ……。貴女は勇者タロウの【誘惑】に惑わされていないという事ですね」

『ふふふ。あんなものにひっかかる女は生きている価値が無いと思うよ。神の加護の中では一番興味がないね』

「はて? この目の前で死にかけている露出狂もそうじゃないのですか?」


 そうでもなかったら、性格の腐っている勇者タロウの妻を名乗るなんてできないはずです。

 まぁ、会った事も無いので、腐っているかどうかは知りませんけど、マリテさんに行った行為を考えれば腐っているはずです。


『それはどうだろうね。彼女は本気で勇者タロウの第一夫人と言っているようだけど』

「そうなのですか? 気持ちが悪いですねぇ」

『私もそう思うよ。それで、君はどうするんだい? ソレーヌを殺すのかい?』

「はい。殺します」


 そう言い切ると露出狂は必死に逃げようとしています。

 私は露出狂の背中を踏んで動け無くします。


『そうか。せめて苦しまないように殺してやってくれないか?』


 はて。

 意外ですね。


「助けに来ないのですか?」

『私達は覚悟を持って勇者パーティを名乗っているんだよ。死に恐怖はないよ』

「そうですか」


 何か隠していそうですけど、まぁ、良いでしょう。


「じゃあ、殺しますね」

『あぁ、サクッと殺っていいよ』

「ジゼル!? 助けてください!!」

『大丈夫だよ。魂は救ってあげるさ』


 魂を救う?

 意味が分かりませんが、今はいいでしょう。


 私は露出狂の心臓を一突きします。露出狂は涙を流しながら息絶えました。


「さて、殺しましたよ。では、火葬しましょう」


 とはいえ、魔力はもうありませんし……。

 それに露出狂の死体が何かに守られています。


『死体には手を出せないようにしてあるよ。さぁ、私はその死体を引き取りに行く。君は先に進みたまえ』


 何か掌の上で踊らされているみたいで気分が悪いですが……、今は言う通りにしておきましょう。


「では、そのうち相まみえると思いますが、その時は全力で殺し合いましょう」

『ふふ。君は殺意が高いねぇ……。だが、それは遠慮しておこう。君と戦っても、私が殺される未来しか見えない……できれば手を取り合いたいねぇ……。【忌み子】ちゃん』


 ふふ……。

 どうやら彼女は私の事を知っている様ですねぇ……。


『あ、そうだ。君の大事な聖女ちゃん(・・・・・)を私の仲間が襲いに行ったよ。今頃教会は惨劇になっているんじゃないかな。ふふふ。助けに行ったらどうだい?』


 エレンを聖女と知っているのですかね……。

 それとも挑発でしょうか?

 いえ、教会に強力な何かがいるのが分かります。


『へぇ……魔力を使わずに〈生体感知〉を使うなんてね。なかなかやるじゃないか』


 うるさいですねぇ……。

 私は目を瞑ります。

 ……まだ、エレンに怪我はないですね。

 恐怖も何も感じていないようです。

 

「そうですね。でも行きません」

『意外だね。君は聖女ちゃんを大事にしていたと思ったんだけど?』

「大事ですよ。でも、ギルガさんとドゥラークさんがいます」

『随分と仲間を信頼しているんだね。カカスの町(・・・・・)を滅ぼした(・・・・・)時から随分と成長したものだ』

「もしかして、あの町の生き残りですか?」

『それは内緒だよ』


 明らかに何か隠していますね。


『じゃあ、これで通信を終わらせてもらうよ。君とは長い付き合いになりそうだね』

「……そうですね」


 すぐにここに来るわけではないようですね。

 私は城へと向かいます。

 その数分後、露出狂を殺した付近に何者かが現れ、一瞬で消えてしまいました。

 露出狂の死体を回収したようです。

 ……思ってた以上に楽しめそうですね。

 ジゼルさんですか……覚えておきましょう。

 

 私は城の前に辿り着きました。

 本当は今すぐにエレンを助けに行きたいのですが、ギルガさんとドゥラークさんが頑張ってくれるはずです。それに……。


 エレンに危険が迫れば、私が転移魔法で行けばいいだけです。

 魔力が空でもある方法を使えば使えますしね。

 でも、今は仲間(彼等)を信じましょうか……。


 その頃の教会……。 ≪ギルガ視点≫


「お前は……勇者パーティの武闘家アルジー」

「私の事を知っているとは光栄ね。お前等をここで殺すね。それがジゼルの命令だからね」


 ジゼル?

 大魔導ジゼルの事か……。

 しかし、おかしい。


 俺が知る武闘家アルジーは人に従うような性格では無かったはずだ。

 一度アルジーと戦った事があるが、確かに素質はあったが、人の言う事を聞かない我が儘な性格だった。

 いや……、今はそれどころじゃないな。


「さて、殺させてもらうよ。ジゼルからは聖女を殺せと言われたのだけどね。まずはあんたらから殺させてもらうよ」


 こ、こいつ……聖女の存在を知っている!?

 アルジーは構える。


「させるかよ!!」


 オレは自分の愛剣を握った。


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