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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
最終章 神殺し編

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49話 ヒヒイロカネの盾の攻略


 アレスの聖剣エクスカリバーが白く輝いている。

 私達の武器はレティシアが生み出したレティイロカネで出来ている。

 レティイロカネは黒く光る鉱石なので、個人個人若干輝き方が違うのだが、剣身は黒い。

 しかし、アレスの聖剣は剣身は黒いのだが、アレスが持つ聖なる力で黒くも神々しい剣身になっている。


 アレスの剣技はリーン・レイの中でも剣聖ギルガ殿に迫るほどだ。だが、グラーズは、ヒヒイロカネの盾でアレスの斬撃を受けている。


 アレスとグラーズが攻め合っている隙を見て、私はロブストを避難させる。アレスとグラーズの戦いは私達が邪魔は出来るモノではない。

 しかし、疑問もある。

 グラーズは守りに徹していて反撃をしていない。なぜだ?


 私がアレス達の戦いを食い入るように見ていると、ロブストがグラーズが反撃しない理由を教えてくれる。


「グラーズはアレスの剣を自分の水晶の剣で受け止めたくないんだ。おそらく、一度でも受け止めたら水晶の剣は折れる」

「なんだと?」


 グラーズの水晶の剣は、グラティアートルの至宝と呼ばれる剣だ。斬れ味は勿論、この剣に使われている水晶は硬度も高いはずだ。それなのに折れる?


「サジェス。これは俺の予想なのだが、あの水晶の剣よりも、いや、ヒヒイロカネで作られた剣があったとしても、レティイロカネの方が硬度も斬れ味も遥かに上のはずだ」


 そう言われれば、思い当たる節がある。

 例えば、レティシア自身が使うファフニールが一番分かり易い。レティシアの力は異常だ。あの力で敵を叩き潰しているのに、あの剣状の鈍器は折れたり曲がったりしていない。

 それに、ロブストが言うには、神雷の力を纏った大槌の攻撃を受け止められた時に、こう感じたそうだ。


 雷の力が邪魔で本来の武器の攻撃力が出ていない……と。


 私とロブストの奥の手は、私が使える最大の魔法である神雷の雷をロブストの大槌トールに纏わせ、雷の大槌とする事だ。

 普通に使う神雷の威力でも凄まじいのだが、トールに纏わせれば雷の力は何倍にも跳ね上がる。実際に、今まではどんな魔物が相手でも、この威力に耐えられるという事は無かった。

 しかし、グラーズの盾はトールの雷の威力に耐えた。となると次に大事になるのが武器そのものの威力だ。


「ヒヒイロカネの盾は雷の力に耐えたというよりも、消滅させられたように感じた。だからこそ、純粋な武器の力を感じたわけだ」


 なるほど。

 それならば武器の攻撃力の事に気付くのもおかしくない。


「その時に感じたのだが、トールの攻撃力は雷の反発する力のようなモノのせいで半減していたと思う。それなのに、ヒヒイロカネの盾にはわずかな傷がついた」


 それはつまり……。


「今のアレスの剣でも……」

「いや、傷つける事は可能だろうが、斬るなんて事はさすがに出来ないだろう。アレスのレティイロカネの聖剣は斬れ味に特化している。だが、ヒヒイロカネの盾は斬撃には強い。だから、あの盾は悪い意味でアレスの聖剣と相性が良い。だが、あの盾さえなければ、アレスの剣を防ぐ事は不可能だ」


 なるほどな……。

 あの盾さえどうにかすれば、アレスに負けは無くなる。だが、アレスのレティイロカネの聖剣ではヒヒイロカネの盾を斬る事は出来ない。

 今のこの状況で、ヒヒイロカネの盾を破壊できるのは……。

 私はロブストを見る。

 ロブストは私が言いたい言葉を理解してくれたみたいだ。


 レティシアはロブストの事を「脳筋戦士」と呼ぶが、実のところロブストはかなり頭がいい。元々は腕の良い料理人だったロブストは、幼い頃から可愛がっていたアレスとマリテが勇者、聖女になったのを機に戦士になった。

 兄と慕ってくれていたあの二人を守りたかったのだろう。

 私も似たようなモノだ。

 私も魔導の教師を元々やっていたのだが、二人が心配で魔導士になり、アレス達について旅に出た。


「ロブスト。危険な賭けだぞ?」

「あぁ、分かっているさ」


 私はロブストの体に何重にも結界を張り、強化魔法をかける。これで水晶の剣による攻撃を何度か耐えられるはずだ。

 そして、私も……。


 私達が覚悟を決めて動こうとした時、グラーズの目から細い赤い光のが放たれ、アレスの太ももを貫く。


「ぐっ!?」


 アレスの体勢が崩れた。

 不味い!!


「行くぞ、ロブスト!!」

「あぁ!!」


 私はアレスに一度引けと叫ぶ。すると、アレスは私達を見て一歩下がった。


 まったく。素直な部分は大人になっても変わらないな。


 グラーズは駆け寄るロブストに気付き、盾を前に剣を振り上げる。

 だが、させるかよ。

 私は、拘束魔法を水晶の剣に向かい放つ。

 拘束魔法は魔力で紐のようなモノを作り出し、対象に巻き付けると言う魔法だ。

 しかし、拘束魔法(こんなモノ)はすぐに斬られるだろう。だが、一瞬でいい。一瞬だけでも剣を振り下ろすのが遅くなれば。


「おぉおおおお!!」


 ロブストも大槌を振り上げ振り下ろす。グラーズは一瞬だけ拘束魔法に腕を絡みつかれ、反応が遅れた。

 ロブストの大槌による攻撃がヒヒイロカネの盾に振り下ろされる。

 まだだ。


「こんな拘束魔法(くだらない魔法)で我を止められると思っているのかぁああああ!!」


 グラーズが叫ぶが、そんな事は分かっている。すでに拘束魔法は水晶の剣に斬られ、ロブストに振り下ろされようとしている。


「ロブスト、上だ!!」


 アレスが叫ぶ。だが、ロブストは避けようとせず、大槌を再び振り下ろす。

 ロブストのレティイロカネの大槌とグラーズのヒヒイロカネの盾が再び激しくぶつかり合う。


 音が少し鈍い。

 もう少しだ。


 さすがにロブストの攻撃を受け止めたグラーズは大きく体勢を崩すが、剣による攻撃は止まらない。

 チッ!!

 私は咄嗟に転移魔法を使い、グラーズの腕にしがみつく。


「こ、小癪な!!」


 グラーズが機械であったとしても、大の大人がしがみついているんだ。まともに攻撃できないはずだ。

 ロブストはもう一度大槌を振りあげる。そして、私とロブストは目が合う。


 あぁ……、大丈夫だ。

 ヒヒイロカネの盾でも、三度目は耐えられないはずだ。


 ロブストが振り下ろした大槌により、ヒヒイロカネの盾が砕け散った。

 だが、その代償に私達はグラーズに斬られた……。

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