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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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48話 アブゾールの消滅


 目の前にいる白と黒のベアトリーチェ……。


 こ奴等、同じ顔をしておる。

 双子か?

 しかし、目の前に二人いるのに、一人分の気配しか感じる事が出来ん……。

 そもそも、なぜ白のベアトリーチェだけ神気を感じる事ができるんじゃ?

 魔霊族とはいえ、大まかな種族は神族のはずじゃ……。神気は必ず持っておるはずじゃ……。

 分からぬ……。


 考えられるのは……。


「貴様ら……二人で一人なのか?」

「違う……」

「私は……、いや……私達は」

「「一人だ」」

「な!?」


 ど、どういう事じゃ?

 二人おるのに一人じゃと?


 魔霊族について何かを聞いた事があるのじゃが、はっきりとは思い出せん。大事な事じゃから、思い出すのじゃ……。


 ワシが考えている間も、白黒のベアトリーチェは攻撃を繰り出してくる。

 相変わらず遅い白いベアトリーチェの攻撃は当たる事は無い……が、黒いベアトリーチェの攻撃は洗練されておる。こちらの方が厄介か?

 しかし、白いベアトリーチェをさっき倒したのに、どうして何もなかったように復活しておるんだ?


「ふふふ……。神族だった私には勝てたと思い込んだかもしれんが、私はまだ本気ではなかったぞ?」

「なんじゃと!?」


 白いベアトリーチェは、数々の魔法を繰り出してくる。じゃが、先ほどと変わらず避けるのもかき消すのも簡単にできる。

 やはり問題は黒い方か。

 こ奴の魔法からは、危険な気配を感じる。


 白い方が性懲りもなく、浄化の魔法を使ってきおった。


「効かぬと言っておるじゃろう!!」


 ワシが白い方を殴り飛ばすと、黒い方がワシの背に密着してきおった。


「そういえば……魔霊族を殺す魔法だったか? お前にも効くか試してみよう……」


 なんじゃと!?

 なぜ魔霊族である黒いベアトリーチェが、あの魔法を使う事ができるんじゃ!?

 しかし……、あの魔法は魔霊族には特効であるが、精神体に効くわけではない。

 

 ベアトリーチェの魔法がワシの背中に押し当てられる。その瞬間に耐えがたい激痛が全身に走る。


 な、なんじゃと!?

 なぜこの魔法が精神体に効くんじゃ……?


「ぐっ……」

「くはははは。わざわざ、お前に効くように改良した(・・・・)甲斐があったぞ。さぁ、アブゾル、この世界を私に任せ……お前は死ね」


 こ、こ奴……。

 しかし、ただでは終わらせん。


 ワシはベアトリーチェの腕を掴み、魔霊族特化の魔法を腹に押し当てる。


「ぎゃあああああ!!」

「これが本家本元じゃ!! くたばれ!!」


 魔法は確かに押し当てた。しかし、黒のベアトリーチェは数秒苦しんだ後、口角を吊り上げてワシに笑いかけた。


「残念だったね……。その魔法ならとっくに克服しているんだよ」


 ば、馬鹿な!!


 ワシはもう一度、黒いベアトリーチェに魔法を押し当てる。しかし、今度は苦しむ素振りすら見せない。


「だから言っているじゃないか。もう克服したと……」


 いつの間に克服したんじゃ?

 確かに魔霊族であれば、自身の種族を滅ぼしたこの魔法を知ってはいてもおかしくはない。じゃが、ベアトリーチェは若い。聞いた事があったとしても、実際見た事は無いはずじゃ。

 いや……。

 白いベアトリーチェは「そんなモノをお前が使える」と言ってきおった。

 ワシもつい覚えているか? と聞いたが、本来ベアトリーチェが知るはずがないのじゃ!?


「疑問に答えてやろうか?」

「な、なにをじゃ?」

「そのくだらない魔法で、神族のベアトリーチェが滅ぼされた理由だよ」

「……っ!?」

「神族の方のベアトリーチェには、私の力の一部(・・)しか与えていないんだよ。そもそも、その魔法は作られた命を滅ぼすモノだ。魔霊族は、他者の肉体に憑りつく事で生を得ている。だからこそ、作られた命を滅ぼす魔法が有効という事だ。神族の方の私の体はホムンクルスだからな……。その魔法に耐えられなくとも仕方がない」


 ほ、ホムンクルス……じゃと?

 まさか、神界からあの魔道具を持ち出してきたのか!?


 ホムンクルスとは、魔力を入れてやる事で、人と同じ姿になり、影武者を作り出す魔道具じゃ。

 神界の中でも、扱いに制限がかけられており、おいそれと持ち出せないはずじゃ。


 持ち出すには、力のある神族三名以上の承諾が必要なはず……。

 ま、まさか……。


「驚いているようだね。あぁ、このホムンクルスは正式な方法で手に入れたよ」

「な、なんじゃと!?」

「魔霊族を滅ぼすという愚行を許せない神族もいるという事だよ……。さぁ、死んでくれるかい?」


 まさか、ベアトリーチェに手助けをしている神族がいるのか!?

 チッ……。

 

 どうやって倒すべきか……。

 いや、ワシでは倒せない……。


 がっ!?


「クソっ。離せ!!」


 白いベアトリーチェがワシを掴んで離さない。

 普段であれば、若い女性に抱きつかれるのは喜ばしいモノなのじゃろうが、こ奴は人形。

 

「さぁ、最期に何かいう事はあるかい?」

「な、なんじゃと?」


 ベアトリーチェは、白いベアトリーチェを呼ぶ。

 捕まえておったワシを離しても……、くそ、ホムンクルスから離脱させたのか。

 今思い出した……。

 魔霊族は自身の魂を分け与える事ができる事を……。


「ようやく気付いたようだね。そうだよ……」


 白いベアトリーチェが黒いベアトリーチェの体の中に入っていく。

 そして……。


 黒い髪の毛は灰色に変わり、目は銀色に光っておる。

 背には、三対六枚の漆黒の翼。


 格上どころの騒ぎではない……。

 こんな化け物を相手にしてしまえば……、レティシアのお嬢ちゃんでも……。


「これが私の本当の姿だよ。君や魔王クランヌが私の神気を読めなかったのは仕方がない。私は神気をほぼ失っているからねぇ……。だからこそ、神族の私を作り出せたんだよ」

「チッ……」


 間に合うか?

 いや、間に合わせる。


「まだ、何かを企んでいるのかな?」

「ワシとて……、この世界の神じゃ。お主のような、悪しき者から世界を守る為にここにおるんじゃ……。ただでは死なんぞ」

「くくく……。まだ、強がるのかい?」


 いや……。

 魔法は完成した……。

 後は……。


 強制転移魔法陣。


 アブゾールに残った神官を一気にアブゾールの外に転移させる!!


「っ!? き、貴様、何をしている!?」

「なに……。ワシの魔法に巻き込まれないように、神官達をアブゾールの外に逃がしただけじゃよ」

「な、なんだと!?」

「さぁ……。ワシの肉体(・・)を贄に使って、貴様を……アブゾールごと封じ込める!!」

「ふざけるなぁあああ!!」


 ベアトリーチェは、灰色の剣を持ちワシに迫る。

 しかし、もう遅い!!




 その日。

 神聖国アブゾールは、この世界から消えた……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] おじいちゃぁぁぁぁんっ!ま、まさかアブゾルの最後に涙する日が来ようとは…最後まで世界の管理者の意地を見せた姿、忘れません…。 しかし、ベアトリーチェの真の正体…無数の「自分の軍団」で世界を…
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