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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
6章 教会編

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37話 勇者としての在り方

今回はちょいと長くなりました。


 大聖堂でアブゾルと話をした後、俺達はアブゾールから出て、一番近い町まで歩いて向かっていた。

 ラロは、大聖堂を出てから、無言で何かを考えているようだった。


「ラロ姉さん……。さっきから無言だが、何を考えているんだ?」

「タロウ。さっきの貴方は貴方らしくなかったわよ。やっぱり、勝手にこの世界に連れてこられた事を今でも恨んでいるの?」


 恨むか……。

 確かに、こっちの世界に来てからは、酷い事もしたし、酷い事をされたりもした。

 ……だが。


「……感謝半分、恨み半分だよ」


 それが俺の答えだ。

 

「へぇ……。半分も感謝しているなんて……意外だったわ。なぜ、こんな世界に感謝しているの?」

「そうだな。一番はソレーヌに会えた事……。次にラロ姉さんに会えた事かな……」


 今、思い返しても俺にとって幸運だったのはこの二つだけだ。


 ソレーヌと会ったばかりの頃の俺は、真正の屑だった。

 元の世界で女っ気もなく、卑屈に生きていた俺からすれば、教会に勇者だと煽てられるのが、心地良かった。

 ソレーヌも、自分が国から認められていない事に不満を感じていたみたいだ。

 そんな俺達だったから、一緒にいれたのかもしれない。

 確かにジゼルやアルジーも勇者一行としての仲間だったが、俺の中では、ソレーヌだけは別だった。


 それにラロ姉さんもそうだ……。

 レティシアに殺され、生き返り、ジゼルを殺した俺はマイザーに辿り着いても、レティシアに対し強い憎しみを持っていた。


 いつか、殺してやる。


 そんな事を常に思っていた。

 だが、ラロ姉さんに会い、色々教えてもらい、自分の馬鹿さ加減に気付いた。

 もう少し早くラロ姉さんに会っていれば、ソレーヌを失わずに済んだかもしれないが、たらればを言っても仕方がない。

 だから、俺としてはこの二人に会えた事を感謝するしかなかった。

 もう、過ちは繰り返さず、憎まれながらでも、生き続ける。自己満足でしかないが、それが、俺に対する俺自身への裁きであり、俺が引き起こした事件の被害者への罪の償いだと思った。


「あら、嬉しい事を言ってくれるわね」


 ラロ姉さんは少しだけ顔を赤らめさせ照れている。


「それに、この世界は俺に刺激を与えてくれた。元の世界の俺は、ただ無気力に生きているだけの人間だったからな」

「え? さっきアードフルに言ってたような立派な人物じゃなかったの?」


 あぁ、だからラロ姉さんも複雑そうな顔をしていたのか。

 だが……。


「あははは。そんなわけねぇよ。もし、元の世界で立派な生き方をしていたのならば、こっちに来て勇者と煽てられたからと言って、あんなゲスな行動はとらねぇよ。俺の性格は元々腐っていただけだ。今現在の性格になったのは、あんたとソレーヌのおかげだ」

「へぇ……。それなら、なぜアードフルにあそこまで怒ったの?」

「そりゃ、そうだろう。アイツがどう答えるかによって、俺は何も言い返さずに頭を下げるつもりだった。だが、アイツは一言で異世界に行く事を否定した。そもそも、枢機卿としての、下らない正義感があるのなら、俺がいた世界に行ったとしても、アブゾルを信じ世界を救ってやる。くらい言えば良かったんだよ」


 それが言えたのなら、本物の救世主になる資格がある。

 だが、そんな事を簡単に言えないのが事実という事を、俺は知っている。


 例えば、元の世界で人気だった異世界転生。ライトノベルや漫画では、ほとんどの主人公が異世界に行っても成功をして、ハッピーエンドになっているが、アレは物語(・・)だからだ。実際の一般人が異世界に召喚されても、何もできないと俺は思う。


 だってそうだろう?


 俺の場合、今まで、ただ朝起きて、働いて、飯を食って、風呂に入り、そして寝て、また起きて、また働く。そうやって日常のサイクルを繰り返していただけの奴が、突然異世界に飛ばされて、刃物を持って凶悪な化け物と戦う……。できると思うか?


 俺でなくも、良くあるパターンとして、高校生が死んで異世界に行き、成功する。

 あり得ると思うか?

 もし、あり得るというのなら、そいつは元の世界でも偉業を成したはずだ。


 俺の様に無気力な毎日を送っている人間に、そんな事ができるわけがねぇ……。


「だが……枢機卿は……」

「それは仕方ないわ。普通は無理でしょうね」


 ……。

 まぁ、そうだろうな。

 ラロ姉さんみたいに、自分に置き換えて考えてくれる奴ならば、無理と答えるだろう。

 これが逆でも、俺は難しいと思う。


 例えば、ラロ姉さんが俺がいた世界に行っても、何かができると思えねぇ……。

 まぁ、ラロ姉さんの場合は顔がいいから、ホストにでもなれば金は稼げるだろう。だが、それはあの世界で生きていく事を決意して、色々な事を割り切ればの話だ。

 

 俺がいた世界は、平和で自由ではあったが、別の意味で自由がなかった。

 それに比べて、この世界の冒険者はどうだ?

 

 力にのみでも生きられて、要領がよくても生きていける。力がなくとも、慎重さがあれば生きていける。

 正直者も生きていけるのに対して、嘘つきの卑怯者でも生きていける。

 つまり、生きていくだけなら人など気にせずに生きていける自由がある。

 それに比べて、俺が元々いた世界は、人の目を気にして、嘘を吐けば非難され、力……、経済力と言う力がなければ、蔑まれる事も少なくはなかった。


 もし、この世界の冒険者が、俺がいた世界に行けば、ほとんどの奴が、高確率で犯罪者になるだろうな。

 この世界で当たり前だった自由が無くなった時……、ムカつく者が現れた時、暴力以外で解決できるかどうか……。

 そもそも、この世界と違うルールにどこまで対応できるか……。

 様々な問題が出てくるだろうな。

 だからこそ、簡単にできるとは言えないんだ。

 ……だが。


「なぜ無理なんだ? この世界の連中は俺にそうしろ。と強要したじゃねぇか」

「そうね……」


 ラロ姉さんもそれを悪いと思っていたから、悪名高い俺を匿ってくれたんだろうな。


 俺達はしばらく無言で町までの道を歩く。

 すると、遠くの方であまり見たくない顔が、俺達に近づいてきた。


「久しぶりだな……。勇者タロウ、英雄ラロ」


 なぜレギール(こいつ)がここにいる?

 まさかと思うが、アブゾルを殺しに来たのか?

 いや、アブゾルは老人の姿をしていたが、俺よりもはるかに強いと感じた。

 目の前のこいつ如きにアブゾルがどうかできると思えない。


「レギール……。何の用だ?」

「ふん。俺はお前など必要ないのだが、ベアトリーチェ様がお前を欲しがっていてな。ベアトリーチェ様と共にいれば、お前が恨みを持つレティシアにも、簡単に復讐できるぞ。俺と共に来い」


 必要ないか……。

 それはこちらも同じだな。


 あくまでグランドマスターの勇者(人形)であるこいつと

、異世界から来た屑の俺を、一緒にして欲しくはない。

 しかし、共に来いか……。

 

「タロウ……」


 ラロ姉さんが心配そうに見ている。

 ははは。

 まったく……。


「くくく……。俺がお前と?」

「あぁ。お前もベアトリーチェ様に召喚された勇者なのだろう? それならば、俺と一緒に来るべきだ」


 ベアトリーチェに召喚ねぇ……。

 俺を召喚したのはファビエ王と前教皇のはずで、グランドマスターが関わっているのはほぼ間違いないが、ベアトリーチェって奴は関わっていないはずなんだがな。

 しかも、グランドマスターは名前を隠しているんじゃねぇのかよ……。


 俺の前にラロ姉さんが出る。


「させないわよ」

「英雄ラロ。お前はもう用済みだ。ベアトリーチェ様は手駒を揃え終わった。後はアブゾルを殺し、この世界を完全にベアトリーチェ様の物にする」


 手駒ね……。

 だが、一番厄介な存在を忘れてねぇか?


 それより先にカマをかけてみるか……。


「ほぅ……。お前は馬鹿か?」

「なんだと?」

グランドマスター(・・・・・・・・)の存在は無視か?」


 こいつは俺達がグランドマスターの本名を知っている事を知らない。

 これでミスリードができて、何かを吐いてくれるとありがたいんだがな。


「くくく……。お前こそ、何も知らないのだな。ベアトリーチェ様の正体がグランドマスターだ」

「なんだと?」


 おいおい。やけにあっさりと白状したな。

 もしかして、頭が弱いのか?


「ベアトリーチェ様の偽物も現れたようだが、アレはすでにベアトリーチェ様の手駒の一人であるグラヴィにより抹殺されている」


 グラヴィ……。

 確か学校の生徒会長か。

 アレもレティシアが殺したと聞いていたが、生きていたのか?

 まぁ、いい。


「ラロ姉さん……」


 俺は小さな声でラロ姉さんにそう話す。


「なに?」

「アイツを【神の眼】で見ろ。きっと、何かを隠しているはずだ」

「え、えぇ……」


 ラロ姉さんの奴……。

 少し、混乱しているのか?

 ラロ姉さんは【神の眼】でレギールを見る。


「どうだ?」

「アレは魔族ね。勇者を名乗っているけど、あれも魔霊族みたいよ」

「魔霊族? それは神族の種類だったんじゃないのか?」

「さぁね……。ジゼルを使って大罪を作り出そうとしていたくらいだもの。改造したんじゃないの?」

「なるほどな……。まぁ、良いさ」


 俺はラロ姉さんを下がらせ前に出る。


「タロウ!!」


 俺は静かに剣を抜く。


「ほぅ、相談はもういいのか?」

「あぁ……。もうお前に用はない。死ね」

「くくく……。真の勇者である俺を殺せると?」


「あぁ……」


 俺はレギールの首を斬り飛ばす。

 馬鹿にすんのも大概にしろや。


「がっ!? い、いつの間に……」


 今の速度を避けられないのに、いや、気付かないのに、どうレティシアと戦うんだ?

 こいつらにとって一番厄介なのはレティシアとリーン・レイの連中だ。


「く、クソ……。タロウ(お前)みたいな屑に殺されるなんて……」

「あぁ、そうかい。それは残念だったな」


 俺はレギールの頭を踏み潰そうとする。


「ち、ちくしょう……」

「あばよ」


 俺が一気に力を入れると、レギールの頭は潰れ黒い靄に変わる。

 おそらく、これが本体だろう。


「ラロ姉さん。さっさとマイザーに戻るぞ」

「どうして?」

「ここにレギールがいたという事は……」

「分かったわ……」


 俺達は転移魔法陣を使いマイザーに戻る。

 元々は町に入ってゆっくりするつもりだったんだがな……。


 俺達はマイザーの宿屋で話をする。


「今頃、アイツは復活しているんだろうな」

「そうね。魔霊族は精神体だから殺し方がある。今は準備ができていないから、殺せないわ」

「……そうだな」


 しかし、ベアトリーチェの駒か……。

 自らレティシアに殺されるために駒になるとは、酔狂な奴もいるもんだな……。

異世界転生をディスってみましたww

とまぁ、冗談は置いといて、自分が異世界に行ったら三日でダメでしょうねww

そう思って、今回の話を書きました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラロ「色々?そんなに気持ちよかったの?」 タロウ「そっちじゃねえよ!」
[良い点] タロウが不思議と勇者っぽかったww [一言] タロウと同じ境遇で転生したら 城に引きこもってるだろうな
[良い点] まあ私も例えかなりチートな神様特典貰っても、それこそ原作の知識があるゲームや漫画の世界でも3日もたないでしょうね…ああ、レティシアはこっちの世界に来たら1ヶ月くらいで国の数半分にするくらい…
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