27話 圧倒的な力
あの銀色の鉄の鎧を着たようなモノが機械兵ですか。
一見、黒かったグラーズの色違いのように見えますが、確かに弱そうに見えます。
まぁ、例えグラーズよりも弱かったとしても、私としては楽しみです。
ただの盗賊では、【鬼神化】を試せないですから……。
「さて……。殺し……、いえ、壊しましょうか」
私は魔力を体に巡らせ、【鬼神化】を発動させます。
ふふふ……。体から力が溢れてきますね。
今なら、思い通りに動けそうです。
私は思いっきり踏み込み、機械兵の懐へと入り込みます。
おや?
随分と簡単に懐に入らせてくれましたね。
機械兵は、私を見失ったのかキョロキョロとしています。
まさかと思いますが、私を見失ったのですか?
私がどこに行ったか分からないのであれば、どうやら魔力を探知する事はできないみたいですね。
私は機械兵の腕を掴みます。
「ぎっ!?」
ふふ。ようやく私が懐にいる事に気付いたみたいです。
さて、どうしてあげましょうかね。
鬼神になった事で力も強化されているでしょうから、機械兵の腕を握り潰してみましょうか。
「えい!!」
私は思いっきり機械兵の腕を握り潰そうとしますが、しかし、腕は潰れません。
かなり硬いですね。
もしかしたら、かなりいい鉱石を使っているかもしれませんね。
では、ファフニールならどうでしょう?
私は空間魔法からファフニールを取り出し、機械兵の関節を狙って振り下ろします。
グシャ!!
「ぎっ!?」
あははー。
斬り落とす事はできませんでしたが、関節を潰したみたいで腕が力を無くしたように落ちています。
機械兵は、動かない腕を見て困惑しているのか、戸惑っているように見えます。
「あははー。作り物の癖に痛がってるのですかー? いえ、腕が動かない事に戸惑っているんですかね?」
もしかしたら、この作り物にも心でもあるのでしょうか?
現に、グラーズには心のようなものがありましたし……。
いえ、それはないでしょうか。もし、今の私の攻撃に恐怖や危機感を感じたのならば、腕が動かない段階で逃げるなりなんなりするはずです。
しかし、コレは壊れた腕を見ているだけでした。
ふむ。
もし、考える事が出来ないのであれば、腕を動かそうとして動かないから、動くまで動かそうとする動作を繰り返そうとしたのでしょうか?
どちらにせよ、私を相手にボーッとしてるのはダメですよ。
私は機械兵の頭を狙い、ファフニールを振り下ろします。
しかし、機械兵はアッサリと避けてしまいました。
避けられる事を想定して振り下ろしましたから、避けられて当然なのですが、どうも思ってた動きと違いますねぇ。
グラーズの様に、人間の動きと思えない、ありえない反撃をしてくると思っていたのですが、ただ避けるだけですか?
「が……?」
機械兵が私を見て、止まります。
何がありましたか?
何かをしてくるのかと、楽しみにしていたのですが、機械兵は背を向けて逃げようとし始めました。
「はて? なぜ逃げようとしているのですか!?」
私はすぐさま追いかけ、機械兵の頭を掴み、地面にそのまま叩きつけます。
「がっ!?」
機械兵がなぜ逃げようとしたかは知りませんが、逃すはずがないでしょうが。
何度も機械兵の頭を地面に叩きつけますが、地面が削れるばかりで、ダメージは無さそうです。
「やはり硬いみたいですねぇ……。叩きつけてもあまりダメージにはなっていないようです」
「ぎ……が……」
「はて? 怖がっているのですか?」
作り物なのに怖がっている素振りを見せるとは、本当に不思議なモノです。
頭の中がどうなっているのか気になりますね。
私は機械兵の頭を掴み、銀色の板を引き剥がします。
機械兵は抵抗しようとしていましたが、抵抗など私の好奇心の前では無意味です。
顔の部分の板を外すと、中には小さな物が一杯詰まっていました。これを一つずつ取り出して破壊しましょうか。
しかし、ジゼルが馬車から顔を出し、何かを叫んでいます。
「忌み子ちゃん!! そいつを研究したい!! できれば頭部を破壊しないでくれないかい!!」
研究ですか。
確かに、機械兵の作り方などはこの世界の技術ではなさそうです。ジゼルの要望通り頭は破壊しないでおきましょう。
では、どう倒しましょう。
あ、そうです。
前にグラーズを倒した時は、アマツがエネルギー増殖炉という箱を壊しましたね。
その箱はどこにあるんでしょうか?
魔力を感じる事はできませんから、臭いでしょうか?
しかし、機械兵はあまりいい臭いがしません。
どちらかというと臭いです。
グラーズの時はどこにあったのでしょうか?
そういえば、アマツは背中から箱を取り出していましたね。
えっと……。
「えい!!」
このあたりですかね?
私は機械兵の背中の板を外し、中を見ます。
あ、ありましたよ。
黄色く輝く小さな箱が。
私はそれを無理やり取り出します。
紐がたくさんついていましたが、それも引き千切っておきます。
「……が……」
黄色く光った箱を取り出すと、機械兵は糸の切れた人形のように、力をなくしその場に倒れます。
はて?
動かなくなってしまいましたよ。
グラーズは箱を取り外した後も動いていたのに、不思議なモノですね。
しかし、この箱の中身が魔力のようなものですか。
中には何が入っているのでしょう?
握り潰してみましょうか。
「握り潰すのはやめておけ。人間の体にはあまりよくない液体が入っているからな……」
「アマツ」
いつの間にかアマツが私の肩に乗っていました。
しかし、体にあまりよくない液体ですか。
「グラーズとの戦いのときは握り潰していませんでしたか?」
「あの時は、ノリで潰したというのもあるが、液体に触れないように魔力でガードはしておいたさ」
「言い訳のように聞こえますが、まぁ、良いでしょう」
「どちらにせよ、そのエネルギー増殖炉もジゼルの研究の役に立つかもしれん。壊さずに持っていろ」
「しかし、機械兵というのは不思議なモノですね」
「なぜだ?」
「グラーズは黄色い箱を壊しても生きていたのに、この機械兵は壊れてしまいました」
「グラーズは特別だったんだろう。ベアトリーチェがゴブリンをベースに作ったかもしれないな」
「そうなのですか?」
私は、戦っているカチュアさんにアドバイスをした後、機械兵を収納魔法に入れておきます。
機械は物なので収納魔法にも入るみたいです。
「さて、カチュアさんも機械兵を倒し終わったみたいですから、馬車に戻るとしましょう」
「あぁ……。そうだな」
しかし、私がアブゾールに向かっているというのは、ベアトリーチェにバレているようですね。
グランドマスターもアブゾールにいるそうですし……。
アブゾールでも何かがありそうですね……。




