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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
5章 魔国エスペランサ編

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16話 ブレインとの再会


「久しぶりだな、ケン。それにレティシア……、やはり来たか……」

「だから、来ると言っていたじゃないですか」

「お久しぶりです、ブレイン様」


 ブレインは、エスペランサ城の一室で偉そうに座っていました。魔族にも書類仕事があるのか、ブレインの目の前の机の上にはたくさんの紙が積まれていました。エラールセにも皇王専用の執務室というのがありましたが、紫頭が言うには、ここはブレインの執務室だそうです。


「そちらのお嬢さんがレティシアが連れてきたヘクセ嬢か。私がエスペランサの参謀を任されているブレインだ。ようこそ、魔国エスペランサへ」

「は、はい! へ、ヘクセと言います!」


 ヘクセさんは動揺したような声で返事をしています。緊張して、恥ずかしいのか顔が真っ赤です。


「レティシアやグローリア陛下からヘクセ嬢の事は事前に聞いていたから、ヘクセ嬢はクランヌ陛下の正式な客人として部屋を用意してある。ぜひ、ゆっくりと楽しんでいってくれ。レティシア、お前の部屋を用意はしたくなかったし、この城に余った部屋はない。だから、ヘクセ嬢と一緒の部屋にいろ。できれば、三日間そこから動くな」

「なぜ、私にはそんな態度なのですか? どつきますよ?」

「ふん。口が悪く、怪しい奴にはこんな対応で充分だ」

「紫頭。コイツを殴っていいですか?」

「駄目だ」「ダメだよ!」


 はて?

 紫頭に止められるならともかく、ヘクセさんにまで止められてしまいました。

 はは〜ん。

 私は分かってしまいましたよ。


「ブレイン様もこいつを挑発しないでください。こいつは口調は冷静なふりしていますが、頭がおかしい程、短気なんです」

「頭がおかしいとはなんですか。しばきますよ?」

「ほら、こんな風に、すぐに暴力で話をつけようとする、頭のおかしい奴……ぐぼぉ!?」


 本当にさっきから失礼な紫頭です。とりあえず、わき腹を殴っておきました。


「お、お前……、なにしやがる」

「そろそろ失礼な態度を改めないと、両手両足の骨を砕きますよ?」

「なんでだよ!? それに、お前はいちいち言う事が怖いんだよ!?」

「貴方が悪いです」


 ブレインは私達二人のやり取りを見て笑い出します。


「ふはははは。ケン。リーン・レイで冒険者をしていても、楽しそうにやっていて何よりだ。それと、お前は既にエスペランサ軍じゃないんだ。私に敬称などいらないよ。故郷の友人にでも会いに来たと思って話せばいい」

「いえ、それはできません。俺にとってブレイン様は師であり、尊敬するべき人です。それは冒険者になった今でも変わりません」

「ふははは。相変わらず頭の固い奴だな。さて、ヘクセ嬢。どうせなら私が城の中を案内しよう。ケン、お前は昔の知り合いにでも会いに行け。パワーもお前が来ると聞いて、会いたがっていたぞ」

「ん? 俺が来るとも事前に知っていたのですか?」

「あぁ。レティシアがクランヌ様にそう話していたぞ。だから、お前に会いたがっていたパワーにも話しておいたんだ。それから、グローリア陛下からもちゃんとした説明があったからな」


 そういえば、クランヌさんに謝罪がどうとか言っていましたね。その時に話したのでしょうか?


「はい。じゃあ、そうさせてもらいます。ヘクセちゃんとレティシアをお願いします」

「はて? 私は紫頭についていきますよ」


 何を言っているのでしょうかね?


「な、なんでだ?」


 全く、なぜかも分からないとか、紫頭は女心というモノをわかっていませんねぇ。

 鈍い私でもヘクセさんの顔を見ればわかりますよ。ヘクセさんはブレインをジーっと見ていますからね。

 きっとこれが、恋とか言うやつです。


「お、お前一人でどこかに行けよ」

「なんですか? もしかして、嫌なのですか?」

「あぁ、嫌だ」


 ふふ。

 私は紫頭の頬を殴ります。


「嫌ですか?」

「い、嫌だ……」


 まだ、抵抗するのですね?

 もう一度殴ります。


「嫌ですか?」

「わ、わ……かった……。す、す、好きにしろ……」


 二発で済みましたか。物分かりが良くて助かりますね。


「では、ブレイン。ヘクセさんはおまかせしますね。丁重に案内してあげてくださいね」

「……」


 ブレインは私と紫頭を不思議そうに見ています。

 まさか、ヘクセさんに何かしようと思っているのでしょうか?

 既成事実というやつですね。これも本で読みましたよ。


「どうしました?」

「いや、やけに素直だと思ってな。お前達にとって、ネリー姫やヘクセ嬢は護衛対象だろう? そんなに簡単に別行動してもいいのか?」



 あぁ、その事ですか。

 牽制する意味も込めて、言っておいた方がいいかもしれませんね。

 しかし、私が口を開こうとするより先に紫頭が説明を始めます。


「はい。確認したわけじゃありませんが、レティシアならヘクセちゃんが恐怖を感じたら、レティシアが気付くという魔法をかけているはずです。それと、ネリーに至っては心配すらしていません」

「なぜだ?」

「俺達、リーン・レイのメンバーはレティシアに徹底的に鍛え上げられています。それはネリーでも同じです。リーン・レイの中でもネリーの強さは中堅に当たります。それでも一般の冒険者の中では上位……の中でも、さらに上と言えるでしょう。そこらの王族の護衛や暗殺者程度にどうこうできると思えません。それに、ネリーよりもさらに強いレッグが側にいますし、ネリーにもレティシアの魔法がかけられています」

「そうなのか? その魔法は便利そうだな。レティシア、その魔法を今度、教えてくれないか? 礼はする」


 便利なのは間違いありません。きっと、クランヌさんを守る為に覚えたいのでしょう。それならば……。


「分かりました。今日の夜……はもしかしたら忙しいかもしれませんし、明日の夜はダメですか?」

「いや、別に今日の夜でもいいんだが、分かった。明日の夜だな。よろしく頼む。それと、お前には頼み事がもう一つあるんだ」

「なんですか?」

「ケンについて行くのはいいが、今は各国の要人なども来ているから、問題だけは起さないでくれ」

「問題ですか……。喧嘩を売られたら、どうしたらいいですか? バレない様に殺していいですか?」

「ダメだ。まぁ、魔族ならば無礼な奴には痛い目を見せてもいい。エスペランサにそんな奴はいないと信じているからな。だが、人間相手には高圧的な態度を取られても我慢して欲しい」


 たいした信頼ですね。

 ここはブレインの顔を立てておきましょう。


「分かりました。人間相手には何もしません。もし、失礼な事を言われても覚えておきますから、エスペランサ外で報復する事にします。魔族の場合は適度に痛めつけておきましょう。安心してください」

「少しどころか、とても心配だが、分かった。では、エスペランサ城を楽しんでくれ。行こうか、ヘクセ嬢」

「は、はい!!」


 ヘクセさんはブレインの横を歩き執務室を出ていきました。青春ですねぇ……。


「おい。なぜヘクセちゃんを一人にした? ブレイン様が一緒なら安心だが、お前もついていった方が良かったんじゃないのか?」

「ヘクセさんの表情を見て何も感じませんでしたか? アレは恋というモノだと思います」

「な!? お、お前にそんな感情があったのか!?」

「私もエレンと一緒に、愛だの恋だのと書かれていた本を読んで覚えました。まぁ、私にはよく分からなかったのですが、本に書いてあった通りです」

「そ、そうか……。まぁ、お前はそうだよな。はぁ……、俺がレティシアのお守りかよ……。損な役割だな」

「しばきますよ」

「もうそれはいい。じゃあ、行くぞ」

「どこにですか?」

「パワーのところだ」

「ぱわー?」

「あぁ、エスペランサ四天王の一人でな。俺の親友で幼馴染でもある。もう何年も会っていないからな。アイツもエスペランサの四天王の一人だからな。こんな機会でないと会えないからな」

「紫頭も嬉しそうですね」

「そりゃな。もう五年は会っていないからな」

「ならば早く行きましょう」

「あぁ」


 紫頭の親友ですか。会うのが楽しみです。

次回、パワー登場です。復讐編とはキャラが完全に違うのがパワーです。前作では、ただの筋肉馬鹿でしたが、今回はケン君の為(意味深)にかなり設定を変えました。

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