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親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします  作者: ふるか162号
4章 レティシアの学校生活

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14話 破壊


 銀髪に仮面。

 どう考えても怪しい人物です。

 この男は何者でしょうか……。魔神と化したジゼルのような気配を感じます。力の強さはジゼルとは桁が違いますが……。


「やぁ……。君がレティシアだね」

「貴方は?」

「私はアブゾル。教会が崇める神だよ……」


 アブゾル? それに教会が崇めると言っています。という事がこれが神アブゾルですか。

 しかし、私が教会で見たアブゾル神の像は老人だったはずです。

 目の前にいるアブゾルは仮面をして顔は分かりませんが、間違いなく若く見えます。


「君の事は教会から報告が上がっているよ。神官達を殺した事も全て聞いている」

「それで復讐ですか?」

「いや、別に神官が死のうと私には関係ないからね。私は信仰さえあればそれでいい。それよりも君は【神殺し】だそうだね」

「そうですよ。文字通りなら(貴方)を殺す者ですよ」


 さて、どう反応しますか? 激怒しますか?

 しかし、当のアブゾルは涼しい顔をしています。


「ははは。まぁ、私とて神だ。【神殺し】であるとはいえ人間に殺されるわけにはいかないからね。少し脅させてもらうよ」


 アブゾルから強力な殺気……いえ、魔力……ではない何かを感じます。


「ふむ。私の神気で怯まないとはなかなかやるね」

「なるほど。これは神気というのですか。今度は私の番ですね」


 私はアブゾルに殺意を混ぜた殺気をぶつけますが、まったく怯んでいません。少し残念ですね。


「あはは。随分強気な子供だね。神を相手に殺気を放つ子はなかなかいないよ」

「そうですか? 私は貴方を殺せると思っていますが?」

「ほぅ……」


 仮面をしていても雰囲気が変わったのに気づきました。少し怒りましたかね?


「ふふふ。久しぶりに感情的になってしまったよ。まぁ、良いよ。レティシア、君に頼みがあるんだ」

「頼みですか? 殺してくださいというなら殺してあげますよ」


 更にアブゾルの神気が強くなります。


「違うよ。君と戦うのは楽しみだが、私の頼みはそうじゃないよ……。君の所にいる聖女を私に返してもらいたいんだ」

「はい?」

「君も知っていると思うが、聖女というのは神に仕えるモノなのだよ。だから聖女であるエレンは私に仕える必要があるんだ」

「へぇ……。ここで貴方を殺す事に決めました」


 私はアブゾルに斬りかかりますが、アブゾルに簡単に止められてしまいました。

 ……動きません。


「とても人間とは思えない攻撃力だな。神である私が手を使ってしまった」

「そうですか」


 私はアブゾルを蹴ろうとしますが、避けられてしまいました。

 

「ふふふ……。今日は君に挨拶と聖女を返してもらう事を宣言しに来ただけだ……。さて、レギール、帰ろう」

「くっ……」


 どうやらレギールは私の殺気に当てられたらしく、隅で怯えていました。

 まだ、いたんですね……。アブゾルに視線を移すとアブゾルはすでに消えていました。


 アレが神ですか……。

 勇者タロウを倒した時にはアブゾルなど弱いのだろうと思っていましたが、少しは楽しめそうですね……。

 ……そんな事よりも……。


「先程からコソコソと隠れてみている様ですが、出てきてください」


 私は彼が隠れている壁に向かいナイフを投げつけます。

 ナイフは壁に突き刺さり、男性が一人出てきました。


「どういうつもり……という訳にはいきませんね。貴方には聞きたい事があるんですが……いいですか?」

「そうだな……。僕も君に聞きたい事がある」


 隠れていたのはグラヴィでした。

 グラヴィからは禍々しい魔力を感じます。


「お前が先程話していた相手はグランドマスターか?」

「グランドマスター? 違いますよ。あれがアブゾルだそうです」

「な、なんだと!? か、神がこんな所に……それにあの姿……グランドマスターのはずだ!」


 はて?

 アブゾルは仮面でした。そして銀髪。


「どこら辺が似ていましたか?」

「すべてだ。唯一違うとすれば性別だけだ」

「性別? そこが違うのであれば一番大きいと思うのですが」

「い、いや……グランドマスターの正体がアブゾルならば性別すらも変えられるはずだ……。レティシア! 僕にエレンを寄越せ!」

「はい?」


 寄越せ?

 エレンはモノではありませんよ?

 私はグラヴィを殴ってしまいます。


「くそっ!? 何をする!?」

「は?」

「ぐ……がっ……!?」


 私はグラヴィの首を掴みます。このままへし折ってしまいましょうか?


「エレンをモノのように扱うのであれば首をへし折ります」

「は、離せ!?」


 グラヴィが私の腕を掴み返してきますが、かなりの力ですね。力を隠していましたか?

 私はグラヴィの顔面を殴ります。


「くっ!?」


 一度では怯まないので何度も殴ります。

 何か握られている手から妙な力を感じます。

 アレ?

 これは……。


「やってやったぞ! 貴様の力を破壊してやったぞ! 今の貴様は無力なクソガキだ!」


 無力ですか……。

 まさかグラヴィが破壊の力を持っているとは予想外でしたが、何を破壊(・・・・)されたのでしょうか?

 私は自分の中の能力を探ります。

 ふむ。

 どうやら【神殺し】の能力は残っている様です。では何が消えているのでしょうか?

 ……。

 ふむ。破壊されている能力を把握しました。

 そして、破壊の力というのは上位の能力(・・・・・)には効果がない事を理解しました。

 つまりグラヴィの破壊は私の【神殺し】よりも下位の力という事になります。

 しかし、いい気になっているグラヴィに情報を話させるのもいいかもしれません。ここは無能として戦ってみましょう。


「く、くそぅ。これは大ピンチですよー(棒読み)」

「なに?」


 はて?

 何か微妙な空気になってしまいましたよ?


「こ、困りましたよー。何も能力が使えません(棒読み)」

「ふはははは! 次はお前の身体能力を破壊してやるぞ!」


 良かったです。グラヴィが調子に乗りました。

 

「ははは! 僕に逆らった事を後悔しろ!」

「ひぃいいいい!(棒読み)」


 怯えるといった感情を持った事は無いですが、演技もこんな感じでいいですかね?

 私の目の前にグラヴィの掌が迫ってきます。遅すぎて欠伸がでそうになりますけど。


「えい!」


 私は持っていたヒカリでグラヴィの腕を斬り落とします。


「え?」

「はて?」


 グラヴィは何が起こったのか理解していないみたいです。でも、そんな反応をしていてはもう片方の腕も無くしてしまいますよ。


「えい!」


 私はもう片方の腕を斬り落とします。


「え? え? ぎゃ、ぎゃああああああああ!」


 グラヴィは無くなった両腕を見て叫んでいます。


「はて? 自慢の力は腕が無いと使えないのですか?」

「あ、あ……」


 もう演技は必要ないでしょう。


「さて、貴方には聞きたい事があります」


 私はヒカリをグラヴィに突きつけました。

 

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