②異世界一人旅に出発
「おはよー、IGLEE、MIRAGE。」
とYUKIは普段の何十倍もにこやかに手には重そうにハッピを抱いて現れた。
「おはようございます。」
とIGLEE、MIRAGEもにこやかに挨拶を返した。今日は異世界に旅行に行く日だったので、
みんなウキウキ気分だった。
「ハッピ、ハッピ、ちょっとだけ抱かせて。」
とIGLEEはいつものクールビューティはどこへやら、垂れ目顔になってYUKIから半ば強引に
ハッピを奪い取った。
「MIRAGEさんは行先はもう決まったの。」
とYUKIはMIRAGEに社交辞令的に聞いた。
3人一緒なのはここまでで、ここからはそれぞれ別の時代、
場所に両行に行くことになっているからだった。
「そうですね。来た時の時間に戻って向こうの友人に会いに行こうと思ってます。」
とMIRAGEは答えた。
地球から異世界に戻る場合には時間軸が100倍違うのでそのまま戻ると100年後に行って
しまうので、時間軸を転移前~現在のどこに指定して戻るかを選択することができるのだ。
但し過去には戻ることはできないのでタイムパラドックスにならないような仕組みには
なっているようだった。
「そう、懐かしい友達に会えるのね。良かった。IGLEEさんは里帰りですよね。」
とYUKIは確認するかのように聞いていた。
「私も来た時間に戻してもらってエルフの里に帰ってきます。」
とIGLEEはハッピをあやしながらニコニコ顔で答えた。
「そうね、親御さんも心配でしょうからたまには帰ってあげないとね。」
と優しそうにYUKIは答えた。
「そろそろ、良いですかな。」
と異世界カフェの開店前の時間だったので、店内は落ち着いていたが、
奥の魔方陣の部屋では3人のみ使いが転移魔方陣の準備をしてYUKIらを待っていたので、
声がかかった。
「はい、すみません、お待たせしまして。ではお願いします。」
とYUKIは3人のみ使いに答え、ハッピをIGLEEから取り戻すと、
「みんな、また来週病院でね。」
と軽めの挨拶をIGLEE、MIRAGEと交わして手を振った。
転移魔方陣は目が眩むようなまばゆい光を放つと、YUKIは一瞬で異世界のギルド本部にある
転移陣に転移された。ギルド本部では職員がYUKIが来るのを待っていたようだった。
「時間どおりですね。賢者さまお待ち申し上げておりました。さあ、こちらにご一緒下さいませ。」
と異世界の人間属の男性ギルド職員がYUKIとハッピを応接室まで案内した。
そこにはガタイの大きい髭面のいかにもドワーフ属といったおじさんが待っていた。
「賢者さま、この度は異世界へのご来訪誠にありがとうございます。
私がギルド本部長のGORRDANと申します。」
と見た目とは裏腹に丁寧な挨拶をして来た。
表情はやや硬めで要人を迎え入れるのに緊張している様子だった。
「初めまして、GORRDANさま。
今日はちょっと旅行に来ただけだから、堅苦しいことは抜きにして下さいね。
それより、私の古い友人にGORRDONというドワーフ属がいるんだけど、
何だか少し似てるわね。」
とYUKIは緊張を解こうと会話を進めた。
「はい、GORRDONは私の兄でして、YUKI様のことは兄から良く伺っておりますので。」
と予想の上を行く答えをしてきた。
「えー、そうなんや。道理で似てるはずやん。GORRDONさんは元気なの?」
と懐かしい友人のことを気に掛けた。
ドワーフ属はみんな同じ顔をしているのかとも思ったりしたのだったが血縁なら似てるのは
当たり前のことだった。
ハッピは二人の会話を聞いているような様子は無く、YUKIの隣のソファで気持ちよく
目を瞑って寝ているようだった。
「あ、はい、YUKI様勇者パーティから戻ってきた後は、おやじの跡を継いでドワーフ属の王を
やってまして元気にしております。
食事の時には、いつも勇者パーティの話を何度も聞かされましたので、YUKI様のこと
も良く聞かされてましたので。」
と真正直にGORRDANは答えた。
「あーら、ごめんなさいやね。GORRDONさん王様になったんやね、
ドワーフ属の王子様って言ってたしそうなるよね。
でも同じ話ばかり聞かされて大変やったですね。おじいさんみたい。」
と懐かしそうにGORRDONのことを思い出して茶化した。
「いえいえ、そんなことはありません。
特に賢者さまの魔法は我々ドワーフ属には特別な物として末代ま
で伝え聞かされております故に。」
とGORRDANも生真面目なのが良く分かった。
「それではYUKI様、ご旅行予定の温泉街までは馬車と護衛を手配させて頂いておりまして、
我が故郷ドワーフ属と人間属の国の丁度境にございます町で、名をトガクスと申しまして
宿も手配しております。」
と事前にYUKIが温泉旅行に行くという情報は既にこちらに伝わっていたようで
準備万端のようであった。
「あら、それはありがたいんやけど、馬車と護衛は要らないわよ。ハッピと二人旅やからね。」
とYUKIが答えると、
ハッピが自分の名前が呼ばれたことに気づいてムックと起きて目を開き大きなあくびをした。
「あ、宿はせっかくだからそちらを使わせてもらいますね。ありがとうございます。」
とYUKIはフォローを入れた。
「そーですよね。確かにYUKI様のような方でしたら護衛など必要ありませんね。」
とGORRDONから聞かされていた勇者パーティの話を思い出したのか、勝手に納得している様子だった。
「それじゃ、いろいろありがとうございます。ハッピが退屈そうなのでそろそろ出発しますね。
GORRDONさんにもよろしくお伝えください。」
と別れの挨拶を済ませると、ギルド本部から出て久しぶりの異世界に足を踏み入れた。
ギルド本部ではたくさんの人とすれ違ったが誰も賢者YUKIだとは気が付かなかったようで
スムーズに脱出できたのだった。
ギルド本部を出た後は、少し王都の商店を見て回ったり、お昼ご飯を食べたりした後に
王都から街道に出た。
久しぶりの異世界の自然は地球の自然と比較してやや原色が濃いように思えた。
YUKIとハッピは異世界の自然の景色を楽しむように、しばらく並んで歩いていた。
それはリード無しで白いトラの子供を散歩させているように見えた。
しかし原色の濃い風景もしばらくすると目に馴染んできて気にもならなくなっていった。
「ハッピ、じゃ、私を運んでくれる。」
とYUKIは周囲に人が居なくなるところまで来るとハッピに語り掛けた。
ハッピはYUKIを背中に乗せるのに丁度良いサイズになってYUKIを乗せるようにしゃがんだので、
YUKIはひょいッとハッピの背中に乗った。ハッピはYUKIを背中に乗せたまま、浮遊魔法で
行先の温泉地を目指した。
YUKIとハッピは旅へと出発したのだった。
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