①賢者YUKIの日常
YUKIは明日から飼い猫のホワイトタイガーの子供ハッピと二人旅を計画していたので、
今日は朝からウキウキ気分で早起きもした。
今日の仕事をちゃちゃっとこなして早く旅行に行きたい気分で満々だった。
「ハッピ、明日から旅行だねー。楽しみやねー。」
とYUKIはハッピを両手で持ち上げて高い高いをして話しかけた。
「がうーん。」とハッピは甘えるような猫なで声で返事をした。
ハッピは見た目は大きめのずっしりとした足が太めの白猫のようだったが、
実際はYUKIの召喚獣だったので、意志の疎通はできていた。普段はYUKIの異空間収納の中
に居たり、召喚前の異空間に居ることが多かったので、YUKIの部屋にある動物飼育用の
ケージは綺麗なままだった。
YUKIの名前は小川幸江、仲間と一緒に開業医をしている。
大阪日本橋の通称オタロードにある異世界ビルヂングの4階と5階で<ユキ心療内科医院>
という病院である。
看護士の名前はIGLEE、YUKIの元冒険者仲間でエルフ属だが、ここでは魔法の力でその特徴の
長い耳は視認されないので、黒縁メガネの似合う美形でスレンダータイプの誰もが振り向くような
美しい女性に見えていた。
YUKIもIGLEEに比べればぽっちゃり気味ではあったが、健康的な優しい先生と言った印象を
与える美人女医で通っていた。
事務長にはMIRAGEという西洋人タイプの知的な女性を異世界から連れて来ていたのだが、
見た目は普通の外国人と言った様子で医療事務全般を基本一人で担当していた。
普段はこの3人だけで病院を切り盛りしていたが、必要な時は階下の異世界カフェから人員を
借りたりもしていた。
異世界カフェには従業員がたくさん勤めていたし、同じビルの3階が社宅になっていたので
従業員は病院へも簡単に足を運べた。
病院勤務の3人は5階の入院ベッドが設置されている階にそれぞれ住居を構えていた。
3人は休みの日には異世界カフェをいつも利用していたし、異世界カフェの従業員も何か
あれば病院を利用していたので、お互いに自然に交流があった。
<ユキ心療内科医院>は診察時間が少し変わっていて午前中は、予約のみ、午後からは、
一般の診察も受けていた。
実際のところは午前中は、予約はほとんど入れないので、異世界カフェの従業員を診察していた。
彼らは異世界人ではあったが、お店に来店する客からウイルス性の風邪をもらったり、
慣れない仕事でストレス疲れとこちらの世界の人間とその辺は全く同じだった。
異世界帰りのYUKI先生の診察方法は通常の方法とはかなり変わっていて、
患者のステータス画面を見て病状を判断して処方を下すというやり方だったが、
異世界の患者には、堂々と断ってからステータスゲージを確認して処方できたので
スムーズに診察がこなせた。
ストレス疲れの患者には、気力ゲージの何が減っているかを診てそこを回復させれば
完治できた。
またウイルス性の風邪の患者には、水魔法の応用で、血の巡りを良くしたり、ウイルス除去
したりすれば簡単に完治できたので、異世界人の患者にはお薬を出す必要が無かった。
「ERIさん、こんにちは。今日はどうしたの。」
と異世界カフェの入口でお出迎えをやっている美人エルフの一人が病院を訪れた。
「賢者さま、こんにちは。今日は体が熱くて頭がぼおーっとして。」
と少し見た目にも普段より赤い発熱した顔をしたエルフが答えた。
なぜ賢者さまなのかは、本編をご覧頂きたいのだが、異世界ではYUKIは賢者と呼ばれていたし、
賢者スキルも備えていたからだった。
「ほんじゃ、ちょっと、ステータス見せて。いい?」
とYUKIはいつも一言断る癖が抜けななかった。
「どうぞ、見てください。」
とエルフは自然に答えた。
「あー、ウイルスもらってるやん。じゃー治しとくね。」
とYUKIはウイルス除去の魔法で一瞬でエルフを元の健康体に戻した。
白血球さんが営業妨害で怒ってくるかもだった。
「あー、楽になった。賢者さまありがとう。」
と元気になってエルフは同族のIGLEEと少しおしゃべりをしてから帰っていった。
いつもこんな感じで異世界人の診察はスムーズに終わったのだった。
一般患者には、基本的には西洋医学を用いて処方した。
病状が深刻な場合は本人には内緒で(正直にステータス画面の話をしても信じて貰える
はずは無いので)ステータス画面を見て最終判断を行うこともあった。
そこには催眠治療で得られるような、深層心理、脳の記憶野読むことと同じ効果が
得られたので診断に間違いは無かった。
「奥山さーん、どうぞお入り下さい。」
と診察室からYUKI先生はマイクを使って待合室に届く声で呼びかけた。
「はい、こんにちわ。奥山です。」
と年の頃20前後の若い女性が眉間にしわを寄せたような顔で入ってきた。
「今日はどうされました。」とYUKI先生は患者を診ながら答えた。
事前の初診のアンケートでも大体のことは書かれていたが、本人にも直接聞く方が
より原因の真相に近づけるからだった。
「最近体調が悪くて、吐き気や頭痛があったりで、気分も落ち込んでいて。」
と患者は体調の不具合を訴えた。
「そうですか、最近何か変わったこととかありましたか。」
と先生は患者に質問を続けた。
「はい、私のSNSが炎上してしまって、それ以来火消しに追われる日々が続いてからは、
症状が出るようになった気がします。」
と患者は答えた。
SNS の問題は、特定の考えの尺度で相手を計ったり考えの押し付けで相手の自由を奪う
ことや他人を特定のグループの尺度で順位付けして下位をいじめる奴隷体質が原因の多く
を占めていた。
マズローの五段階欲求 説には
「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」があって、
病気から身を守りたいと考える「安全欲求」が満たされないと身体的な危険を感じ、
SNSでは他人の評価を気にする承認欲求「社会的欲求」が強く、
孤独感や不安感からつながる精神的な不調の病気の原因になることが多かった。
「夜は眠れてますか?」
と先生は患者に質問した。
「最近はあまり眠れてなくて、起きているのか寝ているかの区別も分からなくなってきました。」
と患者は答えた。
「分かりました。今SNSが原因で心の病を発症する患者さんが増えているんですよ、
あなたもそのようですね。では少しこのまま目をつぶって深呼吸を10回繰り返して
くださーい。」
と先生は患者に伝えた。
患者は素直に従って目を瞑って深呼吸をゆっくりと繰り返した。
「はい、終わりました。ではこれから一緒に治していきましょうね、また来週来てください。」
と患者の診察を終えた。
その日は、表向きは簡単に睡眠導入剤の軽めの物を処方したことになっていたが、
実際の治療は、ステータス画面のアビリティから、<やる気><根性><生きる力>が
かなり低下していたのを読み取って、気力回復の霊力コントロールを行っていたのだった。
御霊の操作は祈りが主流だったが、現代人に祈りとかいう宗教的な手法は難しかったので、
そのような方法を取るようにして、ゆっくりと気力ゲージを回復して治療するので異世界人の
治療に比べると時間も日数もかかってしまうのだった。
YUKIは気力の補充すなわち霊力コントロールを祈り形式ではなく音楽の力を使ってできないかを
模索してた。音楽は聞くことで、気分を楽しいに変えていく力があることが分かっていたので、
現代人へのその活用も考えていた。
休憩時間にはIGLEEやMIRAGEとお話して楽しい時間を過ごせたし、ハッピも呼び出して
戯れたりして有意義な時間を過ごしたりした。
「私にも抱かせてー」
とIGLEEとMIRAGEはその見た目の知的な印象を覆すように、
いつもハッピとは童心に帰ったようにはしゃいでいた。
翌日からは、久しぶりの異世界旅行であった。
異世界に戻るには、異世界カフェを統括している3人の異世界の神のみ使いである天使たちに
事前に許可が必要であったので、病院がお休みの期間に3人まとめて
異世界に戻る予定にはしていた。
戻る時代指定は3人とも別ではあったが行きの転移は同じ時間で予約を取っていたのだった。
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