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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第三十六話:試作施設からの脱出と、無属性結界の深淵

ルナは、試作施設での監督業務を逆手に取る、大胆な脱出計画を立てた。試作施設は外部への情報漏洩を防ぐため、高い防魔壁と厳重な警備が施されているが、その警備体制は、ルナが内部にいるという前提で設計されている。


(騎士たちは私が試作施設のメインルームにいる限り、警戒を緩める。私が短時間、姿を消しても、それが施設のシステムエラーによるものだと誤認させればいい)


ルナは、アレスから貸与された王家専用魔導具製造学の知識を応用し、施設内の魔力制御システムの一つに、極めて微弱な魔力干渉を仕掛けることにした。


脱出の決行は、試作機の一次調整が終わった日の放課後。職人たちが一斉に休憩に入り、警備の騎士も巡回ルートを変える隙を狙った。


ルナは、メインルームの片隅で、自分の魔力制御技術の全てを込めて、システムの核となる「魔力流量測定器」に干渉した。彼女の無属性の魔力は、属性を持つ魔力システムに対して、バグのような影響を与える。


一瞬、施設内の照明がチカッと瞬き、メインモニターに「魔力流量:異常低下」という警告が表示された。


「どうした、何だ!?」職人たちが慌ててシステムチェックのためにメインルームに戻ってきた。警備の騎士も、異常事態に気を取られ、ルナから視線を外した。


「皆さん、落ち着いて!外部からの魔力干渉ではありません。測定器の一時的なエラーです。私がすぐに確認します」ルナは冷静な声を装いながら、施設の奥にある資材倉庫へと急いだ。


資材倉庫は、研究棟の裏手の、あまり使われていない通用口に繋がっている。ルナは倉庫の隅に隠していたローブを掴み、誰も見ていないことを確認し、通用口のロックを解除した。


(たった数分。この間に、クリス様と研究を進めなければ)


ルナは、前回同様、ローブで姿を隠し、東門の廃墟へと急いだ。


廃墟に到着すると、クリスは既に待っていた。ルナの息切れの様子を見て、彼は少し心配そうな顔をした。


「ルナ、無理はしないでください。殿下の監視は、以前よりも厳しくなっているはず」


「大丈夫です、クリス様。私の研究に対する情熱は、アレスの監視よりも強い」ルナは微笑んだ。「すぐに始めましょう。『無属性結界生成』の理論について教えてください」


クリスは頷き、羊皮紙を広げた。今回の研究テーマは、魔力制御の究極の応用である「結界生成」だった。


「僕たちの目的は、君が設計した安定化回路の最終進化です。魔力暴走を抑えるだけでなく、その魔力を完全に外部からの干渉から守る『結界』を、無属性理論で構築する」


クリスは、古代文献に残された、極めて複雑な幾何学図形を指し示した。


「この図形は、属性の相性を無視して、純粋な魔力波動を固定化するための『空間座標軸』を示している。王家の結界術は、必ず特定の属性に弱い。しかし、無属性であれば、あらゆる属性を跳ね返す、絶対的な防御壁を構築できるはずだ」


ルナは、その理論の壮大さに圧倒された。これは、単なる魔導具の改良ではなく、王国の防御体系そのものを変革する可能性を秘めている。


「しかし、これほど複雑な座標を、一瞬で構築するには…」ルナは自分の魔力制御の限界を感じた。


「そこで、君の出番です、ルナ。君の魔力は、属性を持たないが故に、最も純粋な力を持ち、この古代理論を現実に適用できる唯一の力だ」クリスはルナの手に触れた。「僕の知識と、君の力が合わさる。この研究は、僕たち二人にしか成し遂げられない」


ルナは、クリスとの研究が、アレスの望む王妃の座から自分を遠ざけつつあることを理解していた。しかし、この禁断の知識への渇望は、彼女を立ち止まらせなかった。彼女は、アレスの支配下で得た知識と、クリスから得る真の自由な研究の知識を融合させ、この世界の構造そのものを変えようとしていた。

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