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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第二十七話:古代魔導の探求と、新たな共犯者

ルナは緊張しながらも、クリスの瞳に恐怖の色がないことを確認し、決意を固めた。彼は、アレスという絶対的な権威の外側にいる、ルナにとって唯一の希望だ。


「クリス様。私は、魔導史の課題というのは表向きで、実際には『古代魔導における魔力制御の応用』について研究しています」ルナは声を潜めた。


「古代魔導ですか」クリスの瞳が、探求心に燃えるような、美しい光を放った。「それは興味深い。そして、王立魔導学院の現行のカリキュラムから逸脱している」


「はい。そして、その研究を進めるには、王都の魔導史とは異なる、独自の歴史を持つ家系の協力が必要でした。イシュタール公爵家は、辺境の古代遺跡の守護者であり、王室の系譜とは異なる、古い魔導の知識を持っているはずだと推測したのです」


ルナは、自分の本心をあえて隠さず、彼の専門分野に踏み込むことで、私はあなたにとって価値があるというメッセージを伝えた。


クリスはしばらく沈黙し、ルナをじっと見つめた。その視線は査定するような冷たさではなく、純粋にルナの持つ知識の深さを測るようなものだった。


「なるほど。君は大胆ですね、ルナ。僕たちイシュタール家が、王室から距離を置いていることを知った上で、接触を試みた」クリスは静かに言った。「そして、君の魔力制御の技術は、僕の知る限り、古代の『無属性魔力解析』の技術に非常に近い。君は一体、どこでそれを学んだのですか?」


ルナは、父親の遺した古書と独学で得た知識であることを正直に話した。彼女の平民という立場と、その独学で得た異端の技術は、王室の血筋と権威を重視するアレスの派閥とは対極にある、クリスのような研究者にとっては、何よりも魅力的なものだった。


「独学で…それは驚異的だ」クリスは深く息を吐いた。「僕たちイシュタール家が守護する遺跡には、まさにその『無属性魔力解析』に関する文献が残されています。王都の図書館では決して手に入らないものだ」


ルナの心臓が早鐘を打った。彼女の計画は、期待以上の成功を収めようとしていた。


「もしよろしければ、クリス様。私にその文献を学ぶ機会を与えていただけないでしょうか。代わりに、私が独学で得た、現代魔導で失われた制御の応用技術を、全てあなたにお教えします」


それは、互いの利益に基づいた、研究者同士の純粋な『取引』だった。


クリスはルナの提案に、初めて満面の笑みを見せた。それは、アレスの笑みとは違い、警戒心を持たずに受け入れられる、知的な喜びの笑みだった。


「ルナ。君は本当に面白い。そして、君の知識は、僕にとって喉から手が出るほど欲しいものだ」クリスは書架にもたれかかり、声を落とした。「いいでしょう。僕も、王立魔導学院の現行の指導に退屈していました。君と手を組む。ただし、僕にも一つの条件がある」


「何でしょうか」ルナは身構えた。


「僕たちの研究協力は、絶対に秘密だ。特に、レオナルド殿下には」クリスはルナの表情を読み取るように観察した。「君が殿下から特別な寵愛を受けていることは知っている。だが、殿下は僕たちの研究を容認しないだろう。僕たちの研究は、王権に縛られた現代魔導のあり方そのものへの挑戦だからだ」


ルナの背筋に冷たいものが走った。クリスは、アレスの監視と独占欲を完全に理解していた。そして、ルナに「アレスに隠し事をする」という、最大の禁忌を要求した。


「承知いたしました」ルナは迷いを振り切り、頷いた。「この研究は、私たち二人の秘密です。殿下にも、誰にも知られることはありません」


ルナは、推しの支配を潜り抜けるという、危険な道に足を踏み入れた。しかし、王妃としての知識と、平民として成し遂げたい魔導の研究、その両方を手に入れるために、彼女はクリスという新たな共犯者を選んだのだった。

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