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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第十五話:個別指導と、隠し事の露見

午後の実習は、特待生クラスの生徒にとってさえ難易度の高い、応用魔力制御だった。私は、昨夜アレスから贈られた最新の魔導書の内容を事前に熟読していたため、他の生徒たちが魔力の収束に苦戦する中、見事に課題をクリアすることができた。アレスが私に用意してくれた資料は、公的な授業のレベルを遥かに超えていた。


実習終了の鐘が鳴ると、私は胸の高鳴りを抑えながら、メッセージにあった集合場所である実習室の隣にある特別指導室の扉へと向かった。その部屋は、学園の古びた一角にあり、通常は使われていないはずの、重厚な扉だった。


扉を開けると、そこは指導室ではなく、通路へと続く短い廊下だった。照明は抑えられ、静寂が支配していた。廊下の先には、アレスの側近が直立不動で立っていた。


側近は、黒髪を短く刈り込み、冷たい彫りの深い顔立ちをしていた。年齢はアレスとそれほど変わらないように見えたが、その表情には一切の感情がなく、まるで人形のような完璧な従者の雰囲気を纏っていた。王子の側近が身に着ける、仕立ての良い騎士服が、彼の隙のない容姿を引き締めていた。


「ルナ嬢、お迎えに上がりました」側近は恭しく頭を下げた。 「レオナルド殿下は、既に離宮の応接室でお待ちでございます」


(やっぱり、学園の目を欺いて、プライベートな空間で会おうということなのね。アレスらしいわ。彼の支配の範囲は、私の想像を常に超えてくる)


私は側近に案内され、学園の裏門からすぐの、周囲の建物から隔絶された静かな離宮へと入った。離宮の応接室は、豪華な調度品に囲まれていながらも、人目を避けた静けさに包まれていた。


応接室の奥のテーブルには、既にアレスが座っていた。彼は、学園内で冷酷な印象を与えるために着ている、黒いシンプルな礼服姿だった。


その冷たい銀色の瞳が、部屋に入った私を、一挙一動を逃さず見定めるように射抜いた。私は昨日からの外交努力が失敗に終わったことへの疲労を忘れ、思わず背筋を伸ばし、姿勢を正した。


「よく来たね、ルナ」アレスは私をまっすぐ見つめ、口元に微かな優しさを浮かべた。


「実習の様子は、モニターで確認した。さすが僕が選んだ女性だ。君の魔力制御は、他の生徒とはレベルが違う」


「ありがとうございます、アレス」


私は彼の褒め言葉に顔が熱くなった。彼が学園の授業をリアルタイムで監視していたことに驚きつつも、推しに能力を認められるという事実に、喜びが勝る。


「さて、座りなさい。君の貴重な時間を無駄にはしない。まずは君の午前の講義の復習からだ。王立魔導学園のカリキュラムは、基礎的な内容が多く、まだ君には遅すぎる」


彼はそう言うと、テーブルの上に、彼が既に詳細な書き込みを終えた私の講義ノートを広げた。


(え、いつの間に私のノートを!?まさか、寮の部屋に誰かを送り込んだの?)


私は恐怖にも似た驚きを感じたが、目の前には顔面S級の家庭教師がいる。彼の指導は非常に的確で、私が講義中に抱いていた専門的な疑問点を全て、分かりやすく解決してくれた。彼との時間は、何よりも貴重な学びの機会だった。


しかし、指導が終盤に差し掛かった頃、アレスの銀色の瞳が、突然、氷のように冷たく細められた。その美しい顔から、全ての感情が消えた。


「ルナ」


彼の声のトーンが急に下がり、室内の空気が一瞬で凍りついた。彼の問いかけは、命令以外の何物でもなかった。


「君は、今日、僕の決めたルールを破ろうとしたね」


「えっ?」私は慌てた。動揺が隠せず、声が上擦る。まさか、彼に何か不都合なところを見られていたのだろうか。


アレスは肘をつき、テーブルに身を乗り出すと、冷たい視線で私を射抜いた。 「午前中の休憩時間に伯爵令嬢シエナに話しかけた。昼食時には、有力貴族の子息に話しかけた。なぜだ?僕が、君は勉学に集中し、他の生徒と関わる必要はない、と伝えたばかりだろう」


(ひぃ!昼間の外交努力が全部バレてる!しかも、詳細に!)


私は背中に冷や汗が流れるのを感じた。アレスは、私が報告しなかった「友達作りの試み」まで、彼の監視網を通じて全て把握していたのだ。私は彼の支配力の徹底ぶりに圧倒され、震えながら、正直に答えるしかないと悟った。


「ごめんなさい、アレス。ですが、私には理由が…」


「理由?」アレスの表情は完全に無になり、彼の美しさが逆に恐ろしいほどの威圧感を放った。彼の質問は、私の言い訳を許さないと告げていた。


「君は、僕の言葉を軽んじた。僕のルールは、君を害から守るためのものだ。それとも、君は、僕以外の誰かとの交流を望むほど、僕の傍にいるのが退屈になったのか?」


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