第24話 闘技大会・その陸
少し投稿頻度を戻せるかも……?
【始まりの街・西部 闘技場】
セレストの試合が終わってから……今は既に第三試合。その理由は……
(席に座って次の試合を観ようとしていたんだが……。)
「兄さん、ただいま」
「……だから姉さんって呼んでほしいんだけど?アバター的にもロール的にも……。女の人を兄さんって呼んでたらおかしいだろ?」
「え……嫌」
「はぁ~……全く……」
(キキがその次の花月?さんを圧倒して、瞬殺……。キキの試合が観れてないのは悔やまれるな……。)
「おかえり。どうだった?忍術を使ってくる相手は?」
「面白かった。それに……変な技を使ってきたけど特に問題なかった。でも、本来の戦い方じゃないような感じがした……かも?」
「……そこまで分かるのか……まあ、正解なんだけどさ。本来は(暗殺者)の派生だから、闇討ちの方が得意なんだろうね。……まあ、次の試合はよろしく頼むね!」
「……ん」
ただ、こうして二人で話している間にも試合展開は変わっていくわけで……。
「あ……試合、見逃してる。」
「もうすぐ終わりそうだけどね……。」
(グラムとガルムの、純魔法職対純前衛職の熱い闘いなんだが、グラムが一歩及ばずだったかな。)
◆ ◇ ◆
さて、スレイの第四試合も終了し、会場は既に第三回戦が始まるという事で盛り上がっていた。なんでも三回戦は第一試合と第二試合を同時に行うそうだ。
(まあ、キキの戦闘スタイルはいつもと変わらないし、どういう風に攻めて来るかは考えても無駄だな)
セレストとキキの戦闘スタイルは似ている。というより、キキがセレストの戦闘スタイルを真似て、自分なりに使いやすくしているのだ。どのような戦闘スタイルか、それは相手の行動を徹底的に潰し、相手の強みを出させないのだ。
プロボクサーに一般人が殴り合いで勝てるわけがない。なら、将棋では?相手の土俵に乗らず、こちらの土俵に引きずり込む。これがセレストが得意とする戦法の一つ。他にも様々な戦術、定石があるが手札も揃っていない為、これを使うようだ。
それを学んだキキも同じような戦法を取ってくる。故にこの二人が戦う場合何が起こるかというと……。
《第三回戦!第一試合!開始!》
《……おっと?試合は始まったが両者ともに動かない!?》
―――硬直だ。
二人とも戦法の都合上、相手が得意とするものを見極めなければならない。故に最初は受けに回る。……がセレストにはキキにはない強みがある。
ここでスレイの戦闘スタイルの話をしよう。スレイも型にはまった動きはないが、並外れた五感や戦闘勘を使い戦う感覚派なのに対し、キキは、相手の嫌がるような行動を行い、乱れたところを攻撃しつつ堅実に倒していく理論派なのだ。
ならばセレストは?
答えはどちらでもなくどちらも当てはまる、独自の戦闘スタイルにある。根本はキキと同じであるが、圧倒的に駆け引きが上手いのがセレストの一つの特徴である。相手がここで仕掛けてくることを理解し、それにカウンターを決める。まさに、対人戦ならば最強。『蒼月』という数々のゲームでトップに君臨するクランの更にトップに君臨しているのには、この『最強』という肩書があることも理由の一つである。
さて、そんなセレストの強みは圧倒的な対応力にある。
キキは、あくまでも型にはまった動き、セレストは通常なら定石に乗っ取り戦うが、本気になると急に立体機動を行ったり、魔法の連打をしたと思ったら魔法と一緒に前線へ飛んできて剣で戦いながら魔法の操作をして追撃をしたりと、何らかの才能を持って居なければ『蒼月』に入ることすらままならない。中にはセレストにスカウトされた人材もいるが……。
だが、これでもまだ二流。『蒼月』の幹部クラスとなると『柊 奏』の全力を引き出せ無いと幹部となることすら叶わない。そして、その『全力』を経験した者は皆、『地獄』と言う。
閑話休題
勘違いしないでほしいのだが、キキに対応力が無いわけではない。むしろ常人からすると『何故そんな動きをする?』というようになるくらいの動きをする。
さて、そんな対応力を活かし先に動いたのはセレストだった。
“空白“を発動して目眩ましを行い、怪鳥のドロップ品で作った剣を取り出す。この剣の特徴の内一つは異常な程の魔力伝導率と、魔力の増幅にある。キキの武器はナックルの為、リーチが短い。それを最大限活かす為には剣のリーチを活かし射程圏内まで接近させないこと……なのだがだが、それはブラフ。本当の狙いは魔力の増幅効果を持つ剣を魔法の触媒として扱う事。
そんな中キキが取った行動は……
(接近、か……)
得体の知れぬ剣を取り出した相手には一見愚策とも思える行動だが……その判断は正しい。
キキは、セレストの行動を読み切り、武器種と違うはずの攻撃を仕掛けてくると予測していた。確かにその読みは当たっていたが……
(後一歩だったな……。)
そう、キキの読みは当たっていた。……がこの剣が本来の剣として扱えるここ可能性が読み抜けていたのだ。それは、この剣の素材が剣として魔術に振り切れるリソースの量を圧倒的に上回っていたからに他ならない。故に、魔術にも物理にも使える、万能な武器となったのだ。
そして、勿論この隙を見逃す訳もなく……。
(“四重連奏斬”)
(この技、武技として補正無しで使うのが難しすぎるんだよな……。ま、その分見返りは大きいし、ほんとにバランスが取れてるよ)
この技は、その名の通り四連撃を繰り出す技だ。この技の特徴、それはほとんど同時に四連撃が繰り出されること。勿論外したときのリスクは大きいが、武技の発動による動作補正無しで扱うことで、タイミングをずらすことができ、リスクを大幅に軽減することができる。
四重奏があるので、二重奏、三重奏……と他にも種類があり、それぞれに特徴、追加効果がある。
四重連奏斬の効果は四発全てを当てたときの即死判定だ。かなりの低確率で発生するためこれをあてに使う事はないがおまけ効果としては十分優秀だ。
(……?なんだ?あの動き……。空中を、蹴った?……“解析”どれどれ〜?……【空武闘】っていうスキルか……。)
……それでも、当たらなければ意味が無い。キキは、空中を蹴り回避を行う。セレストもそのスキルの正体を〈強欲〉の“解析”によって把握し、即座に【ラーニング】を使うが、固有なだけあり、時間がかかる。だが、このスキルの詳細を知られてしまった場合、キキに勝ち目がなくなる。
……そのため、このラーニング終了までがタイムリミットである。
その後、セレストは(空間魔法)の派生スキル、【結界魔法】を使用し、自身の周囲を囲った。【ラーニング】の時間稼ぎを行うつもりだろう。
この時間稼ぎの意図を読み、キキは、短期決戦へと持ち込もうとした。キキが使用したスキルは(心身熱焼)というスキル。このスキルは使用後、使用時間の四倍の時間、ステータスが10%になるが、使用中はステータスが三倍になるという、よくある代償系のスキルだ。はっきり言って使っている人は少なく、フィールド探索では長時間の探索を行うため、他の者から見ても『ネタスキル』や『ゴミスキル』呼ばわりがせいぜいだろう。
だが、この二人には関係ない。
この二人の戦術は手札を持っているほど輝く。どんなに使えないような手札でも使い方次第、他の手札と組み合わせることで圧倒的なシナジーを生むことができる。この二人―――特にセレスト―――は数々のゲームで運営と開発を絶叫させてきた。
故に、彼らは新しく現れた手札を最大限警戒する。
更にその後、セレストの結界がキキに破られたが、そのまま追い詰めることができず、新たな結界を構築されてしまう。それと同時に【ラーニング】が完了し、セレストが一気に攻めの姿勢を見せる。結界は構築したままだが、そちらに割くリソースは少なく先程よりも脆い。そうなってしまうと一気に形勢が逆転し、キキは防戦一方となってしまう。
キキの【空武闘】も悉く対処され、(心身熱焼)のタイムリミットに到達する。それに伴いキキの動きが一気に鈍くなる。
(やっぱり、代償系のスキルだったか。俺も持ってるし、使い勝手は悪いんだが、一点においては強いんだよな……。主に{大罪}……。)
などと考えているセレストだが、攻撃の手は緩めない。……確かに、ゲーム内とはいえ、妹を殺す事に多少の忌避感を感じているが、そこはゲーム、ということで割り切っている。
さて、試合に戻ろう。セレストは動きが明らかに悪くなっていることを見て、更に強い攻めの姿勢を見せる。結界は解除し、リソースを全て攻撃に向ける。
(“重連奏斬”)
先程の焼き直しのように同じ系統の技を敢えて選んでいるセレストはかなり性格が悪いと言えるだろう。勿論、対人戦でそんな挑発に載せられ、冷静さを欠くような者ならとっくにくたばっているがセレストの対人戦における癖のようなものである。
「キキ、だいぶ強くなったんじゃないか?……また今度闘う時は楽しみにしておくぞ」
キキに止めが刺され、ポリゴンとなって消えるまでの数秒間、キキにとって最高の言葉を贈るセレストだった。
後2、3話やって、掲示板とかでこの章も終わり!
ノリで適当に書いてるから、矛盾とかがあったらこっそり教えたりしてほしい……




