第20話 闘技大会・その弐
【始まりの街・西部 闘技場】
どっか空いてる席はないかな?……お?いい席が開いてるけど……ああ、スレイの隣の席なのか。あいつ、隣に座ったりすると絡んでくるから、こういうところでは変に人気ないんだよな。俺にとってはほぼ関係ないけど。
「隣、失礼するよ」
「……ああ。良いぞ、って言ってほしいのか?……どうせ、言わなくても座るんだろうが」
「まあ……そうかもしれないね」
「ところでなんだが……お前、さっきの闘い酷かったぞ!?もはや闘いと呼べないレベルで!」
「そう?……まあ、それは置いといて、キミは何ブロックなの?」
「Cブロックだがどうかしたか?」
「いや、別に……。あ、もう予選Bブロッグが始まるよ!」
「だったら……コホン、注目の選手は誰ですか?解説のセレストさん」
「注目の選手ですか……。β版最強と言われていたグレン選手は勿論、『蒼月』所属の双子、エム選手とラム選手にも注目ですね。……って何やらせるんだよ!?」
「ハハハッ!まあ、それ以外に知ってるような奴は居ないしな……それに、案外ノリ良いな」
「それはどうでもいいだろ……あ、そういえば、今回もクランを建てることにしたんだけど?」
「お?マジか!お前、今回は色んなイベントに出るんだろ?クラン対抗のイベントはどうするんだよ?」
「あ……また今度考えるけど、変装とかがいいのかな?一応スキルを探してくるよ」
「そうか。まあ、楽しみにしておくぜ!」
《さあ!大波乱の予選Aブロックに続き、予選Bブロック!開始!!》
グレンは火魔法と剣を上手く使って敵を倒して行ってるな。エムとラムは……やっぱり協力してるな。本戦では闘う事になるが二人の持ち味はあのコンビネーションだよな。
と、まあ何事もなく試合は進み……。
《予選Bブロック!本選出場者は……グレン選手!エム選手!ラム選手!フィン選手!》
「まあ、大体は予想通りだったね!」
「そうだな。だけど、あの軽戦士の男が上がるとは思わなかったな。意外と上手く避けられてたし」
「他三人はまあ順当だしね!……ってことで予選がんばってきてねー」
「ああ、行ってくるぜ!」
《続きまして予選Cブロック!早速行きましょう!開始!!》
スレイとキキはどう動くのか、しっかり見ておこう。
スレイは……まず魔法職から潰しに行ってるな。まあ、近接職には一番効くからな。キキも同じ様な感じか。他に注意すべきなのは……あの気障そうな魔法使いも上がってくるだろうな。それでも他と比べると強いが、『蒼月』には届かない。もう一人、あの光属性で攻撃してる、固有か?効果は分からんが特殊な魔法も使ってるな。あれはコピーしておきたい。本戦で当たるといいな。
◆ ◇ ◆
《予選Cブロック!本選出場者は……キキ選手!リル選手!フラム選手!スレイ選手だ!》
あの固有の人、リルっていうのか。まあ、会えたら交友を結ぶのも有りだな。
「ただいま〜!」
「お疲れ様!」
「どうだったか?俺の戦いっぷりは?」
「結構頑張ってたじゃん。キキといい勝負してたよ?」
「近接だけでか?」
「うん」
「よっしゃあ!……あのな、あいつあの動きは化け物じみてるんだよ……。だから、そんなに呆れた目で見るな……。あいつにはやっぱりお前と似たものを感じる」
「血縁者だしね。まあ、キミも他の人には同じような感じに見えてると思うよ?」
「あれと一緒にしないでもらいたいな!」
「まあいいや。Dブロックはどう見ていますか?解説のスレイさん?」
「あのゴリラと変態が出てないからな……」
「今のはしっかりと伝えておくね!」
「え?ちょ、ちょっと待てよ!今のは言葉の綾で……」
「あっそ。で、真面目にやってくれる?」
「えっ?冷たくないか?まあ、いつも通りだが。今出てる中だと、エリス、ベル、あとあの女狐じゃないのか?」
「キミはなんでそんなにグラムと仲が悪いんだい?『蒼月』とも交流があるんだから仲良くしてもらいたいんだよね〜」
「あいつとは絶対に相容れない!」
「はぁ……」
《それでは予選Dブロック!開始!!》
試合が始まった瞬間、エリスが敵に向かって駆け出した。
「エリスもいつものスタイルだね~。……プレイスタイルを変えてる奴っているのかい?」
「居るだろ、目の前に」
「そういうことじゃなくてね……。ボク以外に居るの?」
「まあ、そんなに居ない。スキルに合わせて変化してる奴といえば、お前とキキだけだからな。……というかそのロールまだ続けてたんだな!」
「意外と気に入ってね……っと、試合に集中しようか!」
ベルは本職はバッファーだからな……。ここはPSで乗り越えてくんだろうけど、本戦では少し厳しいかもな。さて、グラムは……デカい魔法をバンバン放ってるな。あんなデカいのを放ってたらそろそろ魔力が切れるんじゃないのか?……あ。動きを変えた。もう残り人数も少ないし、グラムは魔法主体で、近接もできるようにしてるらしいからな。
「グラムもグラムで上手いよね」
「あいつの話はするな!」
「なんでだよ〜?」
「別に良いだろうが!」
なんて掛け合いをしてるうちに試合が終わりそうだな。
《予選Dブロック!本選出場者は……エリス選手!グラム選手!ジェームズ選手!》
ジェームズって……絶対偽名だろ!もっと名前の付け方はなかったのか?まあ、今回の大会は偽名も推奨だし、俺も偽名だから人に言えたことじゃないんだが。さて、ゲーム内時間で日を跨いで本戦が始まるから、少し休んでくるか!
「スレイ、本戦で会おうね!」
「ああ、本戦で会おう!」
そう言って俺ら二人はこの場を離れていったのだった。




