第二百四十五話 幻視/神秘力
ルウリィはストラダの傍らに膝をつき、右手を掲げて祈り始める――すると人差し指が輝き始め、そこから細い光の糸が伸びた。
◆現在の状況◆
・『ルウリィ』が『オペレーション』を発動 →『ストラダ』の止血に成功 27%
・『ルウリィ』が『オペレーション』を発動 →『ストラダ』の止血に成功 52%
「っ……」
「ルウリィ、すごい汗……」
「大丈夫……と言いたいところだけど、私の技能は相手の強さで魔力の消費が変化するから。この子、びっくりするくらい強いんだね……」
「俺の魔力を分けられると思う。協力させてもらっていいか?」
「は、はい、できればお願いしたいですが、魔力を分けるなんて……」
◆現在の状況◆
・『アリヒト』が『アザーアシスト』『アシストチャージ』を発動 → 『ルウリィ』の魔力が回復
(くっ……必要な魔力量が大きすぎる。俺の方もこのままでは持たない……)
「後部くん、頑張って……私の魔力も分けてあげられたら良いのに」
「あ、ありがとうございます……マナポーションを飲めばなんとか……」
五十嵐さんが俺の汗を拭いてくれる。魔力不足で目眩がしていたが、マナポーションでなんとか回復してもう一度『アシストチャージ』を発動する。
「んっ……凄い、魔力が入ってくる……これなら……!」
◆現在の状況◆
・『ルウリィ』が『オペレーション』を発動 → 『ストラダ』の止血が完了
ストラダが受けた傷が光の糸で縫合され、止血措置が行われた――ルウリィは血に濡れたストラダの顔を布で拭って綺麗にする。息はまだ弱く、意識を取り戻す様子もない。
「創傷部の処置は終わりました。でも、これだけじゃ迷宮の外までもつかはわからない。今の私では成功率は半々くらい……そういう方法を使うしかありません」
「はうっ……こういうときに『フォーチュンロール』が使えたら……」
「……ルウリィ、私にも協力させて」
アニエスさんが前に出て申し出る。ルウリィは答えに逡巡したが、それは短い間のことだった。
「あなたの前に姿を見せる資格はないと分かってる。私たちは……」
「……すごく怖かったし、正直なことを言えば、みんなを憎みました」
「っ……ルウリィ……」
ルウリィはエリーティアを見て微笑む――儚げにも見えて、その笑顔には強さがあった。
「治癒師の能力を魔物が欲しがるなんて、私は現実的なことだと思ってなかった。魔物が人間を襲うのに協力させられて、彼らのために能力を使って……もう、誰かに退治してもらうしかない。私は魔物の仲間なんだからって、ときどき正気に返りそうになって、そんなことを考えてました」
旅団の誰も口を開かない。だが、彼らも分かっていたはずだ――見捨てた仲間と再会したとき、互いにどんな思いをするのかということは。
「でも、こうして生きていられて、助けてもらって……病室で目を覚まして思ったことは、あなたたちを恨むとか、復讐とか、そういうことじゃなかった。本当に、ただ良かったって思ったんです。私は終わっていなくて、これからも続けていけるのなら、それでいいって」
「……あたしはあんたが攫われたときのことを知らない。だけど申し訳ないと思ってる。あたしに力があればルウリィを助けられた。歳だけ重ねて、ずっと弱いままの情けない人間さ」
カトリーヌさんの謝罪を受けて、ルウリィは首を振った。謝る必要はない、というように。
「あたしには、他人の技能の成功率を上げる方法がある。アニエスもそうだね」
「ええ。ルウリィ、治療を成功させるために協力させて」
アニエスさんはポーチから小さな指輪を取り出す――それを見て、リンファが目を見開いた。
「お姉様、その指輪は……っ」
「いいのよ、こういう時に使うためのものでしょう」
ルウリィの技能の成功率を上げる――それは確かに有効だろう。
だが、何か違和感がある。目の前の光景とは違う別の場面が、片目の視界に割り込んでくる。
『――ストラダ、目を開けてくれ! ストラダ……ッ!』
今という時間ではない、別のいつか。俺はストラダを抱きかかえて、その名前を呼んでいる。
俺が見ている幻視が現実になると皆に説明するのは難しい。俺自身が、自分の現状を説明できるほど理解できていないのだから。
リンファはアニエスさんを案じている。彼女が使おうとしている指輪には、おそらく何か特別な意味があるのだろう。
「ルウリィ、私の指輪を使ってくれる?」
「……はい。指輪の特殊能力を発動すればいいんですね」
ルウリィはアニエスさんから指輪を受け取る。金属に赤い模様の入った特徴的なものだ――おそらく星つきの装備だろう。
「じゃああたしから行くよ。あまねく星の光よ、試練に挑む者に道を示せ……!」
カトリーヌさんがタロットカードの一枚を引き抜く――その図柄は『星』だった。
◆現在の状況◆
・『カトリーヌ』が『ブレッシングスター』を発動 → 『ルウリィ』の技能成功率が上昇
・『ルウリィ』が『★スレッドリング』を使用 → 『ルウリィ』の技能成功率が上昇
・『ルウリィ』が『ヒーリングパルス』を発動
ストラダの身体が光に包まれるが、その目が開かれることはない。
「っ……戻ってきて、行っちゃ駄目っ……!!」
ルウリィが叫ぶ。ライセンスに技能の成否が表示される――その一瞬前に。
(もう一度だ……っ!)
◆現在の状況◆
・『アリヒト』が『支援魔法1』を発動 → 『ヒーリングパルス』が再発動
ルウリィの技能が魔法に類するものであれば、『支援魔法1』の対象になるかもしれない。
祈るような時間が過ぎる。やがて、ストラダを包む光が静まり――そして。
「っ……良かった……ストラダ……っ」
ストラダの目が薄く開いている。泣いているルウリィの顔を見て、その手を握り返したあと、再びその目が閉じられる――先ほどまでより、はっきり胸が上下している。
「アリヒト、ぎりぎりのところじゃったな……しかしお主も消耗しているのじゃから、あまり無理は――」
セレスさんの声が急に遠のく。目の前が暗くなり、誰かに受け止められる。
「アトベ君、しっかりしろ!」
「ホスロウ、彼を運んでください。この階層から出れば帰還の巻物が使えるはずです……っ」
『マスターは我が安全な場所まで連れて行く。付き添いに一人乗り込んでもらいたい』
『閉眼の未来視』を倒しても、帰還の巻物は封じられたままだった。アルフェッカや皆の声は聞こえていたが、身体は動かない――意識と身体が切り離されたかのようだった。
◆◇◆
目を覚ますと、白い天井が見えた。
ベッドの上で身体を起こす――テレジアが傍に座っていて、起きるなりこちらに飛び込んできた。
「っ……」
「……テレジア、心配をかけてすまなかった」
俺の服をぎゅっと掴んで、もはや逃げられないという強さで抱きしめられる――痛くはなく、ただ無事に戻ってこられたのだと実感できる。
「…………」
「みんなも無事か? ……良かった。あれからどれくらい経ったのかな」
蜥蜴のマスクを赤くしつつも、テレジアは俺の質問に首肯を返してくれる。それでもまだ心配なのか、右手で俺の服の袖を掴んだままだった。
窓から差し込んでくる光の具合から、今は昼間だとわかる。迷宮内と外では時間の進み方が異なるので、一日経ったのか、数日なのかはわからない。
部屋を仕切るカーテンの向こうに誰かが寝ている。病室の外に出て名札を調べてみると、そこにはストラダと名前が書かれていた。
『白夜旅団』の秘神の眷属であるストラダが同じ病室にいるということは、仲間たちがそう提案したか、それともアニエスさんたちの判断か――気になることは幾つもある。
身支度をしようと部屋に戻る。俺の服はどこかと探し始めたところで――物陰に隠れていた何かが飛びかかってきた。
「うわっ……ど、どうした?」
飛び出してきたのはストラダだった。俺をベッドに押し倒し、じっと見つめてくる。
幸いにも敵意は感じない。言葉を話すことはできないようで、ただ見てくるだけだが――問いかけには何かしら応じてくれるだろうか。
「ええと……まず、急に人に飛びつくのは駄目だ。驚くからな」
ストラダはこくりと頷く。ずっと視線が逸れないので、微妙に照れてしまう――今のストラダは耳が兎と同じ形で、胸のあたりなど一部がフワフワした毛で覆われているが、ほぼ人間の女性と同じだ。
「今は俺と同じ部屋に入院してるが、今後のことは『白夜旅団』とも話さないといけない。君の主人……というべきか、向こうの秘神は……」
「……ミュッ」
「っ……」
何も声を発しないかと思っていたが、そうではなかった――鳴き声と言うべきか、おそらくストラダは返事をしてくれている。
ストラダは俺の胸のあたりに手を押し付けてくる。どういうことか――全くわからず、されるがままにしているしかない。
とりあえず友好的ではあるようだが、この状況からいかに抜け出せばいいのか。完全にマウントポジションを取られてしまっている。
「えっ、ちょっ……お兄ちゃん、もしかしてピンチですか?」
「そ、そういうことじゃないと思うけど……」
「あの暴れん坊な兎さんが懐くなんて……後部くんが助けてくれたんだって分かってるのね、きっと」
「ミューン」
「へ、返事してます? 意思の疎通ができてますか? キャンユースピークイングリッシュ?」
「ミサキちゃん、英語は関係ないから落ち着いて」
皆の声に長い耳を動かして反応しつつも、ストラダは俺をじっと見下ろすばかりだ。他に手がないのでとりあえずタップしてみる。
「すまないが、降りてくれると有り難いんだが……」
「……ミュッ」
ストラダは素直に頷き、俺の上から降りた。そして今度はテレジアに近づき、鼻先を近づける。
「……っ」
「人間の姿になっても、なんだか小動物みたいというか……行動は変わらないのね」
五十嵐さんがそう言っているうちに、ターゲットがそちらに移る――なんてぼんやりしているうちに、とんでもないことが起こった。
「んっ……ちょ、ちょっと待って、そこはくすぐったいから……」
「(ぶっ……!)」
ストラダは無邪気に五十嵐さんの胸に顔を近づける――どころか、普通に接触している。よりによってそこに行くのはどういうわけなのか。
「あー、柔らかくてあったかいところが安心するんですかねー、やっぱり」
「ミサキちゃん、それはちょっと突き放した言い方なような……」
「やっぱりキョウカお姉さんって何か出てるんですよ、そういうパフュームが……あっ、ちょっ、私のほうに来てほしいわけじゃなくてっ……あぁ~、こしょばゆっ」
ミサキの首筋に長い耳を触れさせるストラダ――皆に同じくらい好奇心を示しているということか。ミサキの次はスズナが標的になり、一周して俺のところに戻ってくる。
「後部くん、この子は今後どうしたらいいのかしら……」
「旅団が契約している秘神の眷属……ということらしいんですが。彼らの言っていたことからすると、なんらかの理由で一度離れて、迷宮を彷徨っていたみたいですね」
「それは……何のためなんでしょうか。どうして離れないといけなかったのかも、気になります」
旅団はストラダを連れて行かなかった。だが、アニエスさんたちはストラダに出会ったこと自体はヨハンに報告しているだろう。
「……ストラダ、『白夜旅団』のところには行かないのか?」
質問に答えてくれるかは分からないが、それでも聞かずにおくわけにはいかない。
ストラダは何も答えない――やはりただ俺を見ているばかりで。
そのとき、きゅぅぅ、と音が鳴った。テレジアがお腹を押さえていて――ストラダも同じようにしている。
「ふふっ……とりあえず、ご飯にしましょうか。後部くんはもう退院できるから、食事は自由にしていいそうよ」
「分かりました。すぐ支度をするので、宿舎に戻りましょう」
「はーい。お兄ちゃん、着替えのお手伝いサービスは利用されますか?」
「何を言ってるの……そういうことになったら全員で手伝うわよ」
「ええっ……あっ、い、いえ、でしたら私も、お手伝いを……」
「…………」
「ははは……本格的に入院したときは、よろしくお願いするよ」
「私にとって大事なのは今なんですよー、とか言ってみたり。あはは、冗談でーす」
入院しないに越したことはないというのはさておき、ミサキはちょっと残念そうだった。たまには乗ってやりたいが、なかなかそうできないのが俺の性分だ。
◆◇◆
医療所を出る前に、俺とストラダの状態を診た医師と話す時間をもらった。担当医は女性で、ストラダの外傷に対する措置も行ったという。
「彼女……外見的には人間の女性に近いですのでそう呼びますが、治癒師の方の技能で創傷は治癒していました。回復魔法の種類にもよりますが、今回使用された魔法は失血状態も回復したと考えられます。すぐに行動できているのはそのためです」
「それは良かった……治癒師のルウリィが来てくれなければ、俺たちはきっと何もしてやれていなかった」
「治癒師の回復技能は、使用するために『神秘力』というものを消費します。これは魔力とはまた違うエネルギーで、マナポーションでは回復ができません。技能によっては再使用するまで多くの時間が必要になります。今回『瀕死』の状態を回復した技能もそれにあたるでしょう」
そのリスクを受け入れて、ルウリィは技能を使ってくれた。そして回復魔法は致命傷を受けた者を助けられるが、短期間に何人もを助けることはできない――おそらく、今の時点では。
「そのミスティックを回復する方法について、先生はご存知ですか?」
「私たち『医師』が『神秘力』を使用することはほとんどありません……ほとんどというのは、高レベルの『医師』は魔法のような回復技能を持っていて、それを発動するために使用することがあるからです。しかしレベル12までの医師ではそういった技能を持つ者は、私の知る限りひとりもいません」
それでは同じ『治癒師』の人に話を聞くことはできるか――と聞いてみたが、多忙でアポイントが取れないとのことだ。そうなると、やはりルウリィ自身に聞いてみるのが早いか。
(魔力以外に、技能を発動するために必要なものがある……再発動に時間がかかる他の技能も、そういった力を使って発動しているのかもな。『士気』もその力の一種と考えられるか)
「そして……アリヒト=アトベさん。あなたが気を失った原因について検査を行いましたが、身体について問題のある箇所は見つかりませんでした」
「寝ている間に検査をして頂けたんですか?」
「はい、今まで迷宮国で入院されたことはありませんか? 医者の技能として病変を見つけるものがあります。中には触診して体内の画像を念写することができる者もいますよ」
つまり、X線やMRIの代わりになるような技能もあるということになる。そういった検査をして何もないというなら、そこは安心できるが――だが、俺が気を失った理由は、おそらく検査で判明するようなものではない。
(あのとき見えたものが、少し先の未来だとしたら。『未来視』に未来を見せられた影響なのか……)
俺が『支援魔法1』を使わなくても、ルウリィの『ヒーリングパルス』は成功していたかもしれない。まだ未来が見えたと断定はできない――自分の意志で見えるものではないので、検証するにはまた同じことが起きるまで待つ必要がある。
「『特別選抜探索者』に選ばれた方に、あえて申し上げることでもありませんが……数値上は万全であっても、疲労が溜まっていることはあります。時間とのお付き合いの仕方を工夫して、休養の時間を作ることをお勧めします」
「それは……確かに、一度行動を始めるとなかなか休みを入れられないというか」
「迷宮国でパーティメンバーの出入りが生じる理由で一番多いのは、ライフスタイルの不一致だという統計が出ています。くれぐれもお気をつけください……といっても、アトベさんの場合はそれほど心配はないとは思いますが」
「……?」
どういう意味だろうと思っていると、医師はくすっと笑って言った。
「アトベ様がここに来てから目を覚まされるまで、病室にパーティの方が代わる代わる訪問されて……皆さんで面会宿泊を希望されていたところを、テレジアさんが代表して残ることになったんですよ」
「っ……そ、そうだったんですか。俺もうかつに気を失ってる場合じゃないな……」
「それに『白夜旅団』の方も一人、アトベさんの容態を気にしていらっしゃいましたよ。アニエス=フィーエさん……お知り合いですよね?」
「は、はい。迷宮の中で少し、共闘をさせてもらったというか……」
「彼女は五番区に滞在されている期間が長いということもありますが、とても人気があるんですよ。前回のスタンピードがあってからは、解決にあたった探索者の方の人気が上がっていますが……」
「解決にあたった探索者……というと……」
女医さんは俺を見て再び楽しそうに笑うと、何も言わずに頷いた。
「『銀の車輪』の方々ですね。『新聞記者』から出ているニュースで、あなたたちに救助してもらったという話が出ていました。もう知名度では『白夜旅団』に一気に近づいてきていますね。エリーティア=セントレイルさんも、過去に五番区を出ていかれてから、カムバックして大活躍をされているという話で……」
女医さんが饒舌に語り始める――そんなことになっていたとは思わず、嬉しさより気恥ずかしさの方が勝ってしまう。
エリーティアについて、皆の認識が変わったというのはいい知らせだった。『死の剣』と呼ばれていたのはもう昔のことで、彼女の活躍が好意的に受け止められているとわかると、自分のことのように嬉しい。
「もちろん『銀の車輪』のリーダーである『スーツの方』についても評判になっていますよ。華やかな女性メンバーの中で多少疲れている印象が否めないが、その統率力とサムライのような精神性に……」
「いや、俺に対してはどのような評価も過大というか……」
「それはご謙遜ですね。『白夜旅団』の方も注目されていますし、ギルドからの期待も大きい。クーゼルカ二等竜尉、そして歴戦のギルドセイバーであるホスロウ竜曹からも信頼が篤く……アトベさん、いかがされました?」
今の話で判明したが、クーゼルカさんはどうやら昇進したらしい――三等竜尉から二等に上がっている。ホスロウさんもクーゼルカさんとともに活躍しているが、竜曹から階級が動いていないのは何か理由があるのだろうか。
「先生、そろそろ面談終了のお時間ですが……」
「はい、それではアトベさん、退院されてもご養生なさってください」
一礼して面談室を後にする。あまり自分たちの評判について気にすることがなかったが、こうして教えてもらうと、本当に自分たちの話なのかと思ってしまう――スタンピードに関しては住民に姿を見られているので、話が広まってもおかしくはないが。
アニエスさんは共闘したこともあって、俺の容態を気にしてくれたのだろうか。神戦のことを考えると事前に会うのは難しいかもしれないが、ストラダのことは相談しなくてはならない。
「……ミュッ」
「おおっ……ストラダ、兎の姿にも戻れるのか」
面談室の廊下を歩いていると、物陰から桃色の兎が出てきた。こちらに駆け寄ってきて、ぐるぐると俺の周りを回ったあと、こちらを見上げて首を傾げる。
「ははは……こうして見ると可愛いんだけどな」
「シャーッ」
可愛いという言葉には思うところがあるらしく、なぜか威嚇されてしまった。そのわりに、撫でてみても嫌がっている素振りはない――そしてストラダを構う俺を、先に行ったはずのテレジアが、ちょっと先の物陰から見ていた。
「…………」
「ごめんごめん、俺も腹が減ってきた。急いでみんなのところに行こう」
テレジアはこくりと頷く――そしてストラダはやはりテレジアが気に入っているらしく、彼女に抱っこをせがんでいる。ストラダを抱き上げるテレジアが戸惑っているように見えて、思わず頬を緩めてしまった。
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