第二百三十一話 技能相談と上位職
◆現在のパーティ◆
1:アリヒト ▲◯✕※ レベル9
2:テレジア ローグ レベル9
3:キョウカ ヴァルキリー レベル9
4:エリーティア フローレスナイト レベル12
5:スズナ 巫女 レベル8
6:ミサキ ギャンブラー レベル8
7:シオン シルバーハウンド レベル9
8:セラフィナ ◯機動歩兵 レベル13
待機メンバー1:メリッサ 解体屋 レベル9
待機メンバー2:マドカ 商人 レベル7
待機メンバー3:ルイーザ 受付嬢 レベル5
待機メンバー4:マリア 料理人 レベル9
「こうして見ると、2パーティ規模になってきてるな……待機メンバーは探索しない人が多いとはいえ」
「基本的には8人までで、あとは随伴する人として考えた方がいいでしょうね。場合によっては組み替えもできるし……私が外れていたほうが経験値が入るんだけど、その辺りは考慮できてなかったわね」
「レベルが上がるのが遅いとは感じないし、そこは問題ないんじゃないか。引っ張ってくれてるメンバーをゲスト扱いにするっていうのも違うしな」
「そうは言っても経験値は最大効率で得られた方が良いですし、私は遊撃の役割を担うべきでしょうか」
「バウッ」
シオンも自分が強いと主張しているようだが、レベル的には俺と同じなので突出しているわけではない。それでも果敢に前に出てくれる勇敢さに助けられている。
「じゃあ、今回は私とセラフィナを別パーティにして、メリッサとセレスを入れるとか……シュタイナーはどうするの?」
『我輩は戦いは得意じゃないから……でも、レベルを上げないとできることが増えないままだよね』
「できれば危険が少ない迷宮から慣らしていきたいところじゃな。わしもレベルは低いが、強力な攻撃が直撃しなければ即死とはいかぬじゃろう」
即死という言葉に一気に緊張感が広がる――セレスさんはそれほどの覚悟をして、レベルを上げようとしてくれている。
「そういうことなら、セレスはシオンに乗って行動した方がいいでしょうね。メリッサは……」
「私はまだ解体の続きがある。新しい魔物が出たら、素材を狙いたいけど……」
うずうずとしつつも、メリッサは今回街で仕事をすることを選んだ。マドカも街ですることがあるので、今回迷宮に入るメンバーは9人で、9人目は『アザーアシスト』で支援していくことにする。
『アトベ様、親方様のことをよろしくお願いします』
「ああ、最善を尽くすし、無事で帰ってくるよ。シュタイナーさんのレベルについても上げる方法を考えておくから」
『うん、ありがとう……って言っても、ちょっとは無茶をしなきゃレベルなんて上がらないよね。我輩も腹を括っておくよ』
「その気になればお主は……いや、やめておこう。お主に言える立場でもないからの」
「……? セレスさん、それは……」
「わしのことは良い、キョウカたちが何か相談事があるようじゃぞ」
「後部くん、迷宮に行く前に技能の打ち合わせをお願いしていい?」
「私とキョウカ、セラフィナは合同でいいわよ。ある程度まとめて打ち合わせをしないと、アリヒトも大変だもの」
「俺は全然大丈夫だけど、じゃあ合同でやろうか」
一旦少し時間をもらい、宿舎の一階にあるロビーで打ち合わせをする。ルイーザさんも通りがかって、まるでお茶会でもしているかのような様相になった――リラックスして話せるのは良いことだが。
◆◇◆
エリーティアの新しく取得できる技能はやはり強力なものが並んでいたが、スキルレベル1の新技能には剣士としては貴重な、戦闘向けではない技能があった。
◆エリーティアの取得可能な新規技能◆
スキルレベル3:
クリムゾンパレス:自分の周囲に『紅陣』を発生させる。範囲内にいる味方が属性攻撃を行ったとき、ダメージを倍加する。
スキルレベル2:
エンドレスレイン:攻撃が命中した際に、次の連続攻撃に移行することができる。攻撃が命中する限り継続できる。一度命中するごとに命中率は徐々に低下する。必須技能:ブロッサムブレード
切り払い2:実体のない攻撃を剣で切り払うことができる。必須技能:切り払い1
切り返し2:敵の攻撃を回避したあとにクリティカル率、連続攻撃率が上昇する。必須技能:切り返し1
スキルレベル1:
限界集中:一時的に回避率のぶれ幅を無くし、常に最高確率で回避できるようになる。使用後は反動が生じる。
安らぎの瞑想:意識を一部分覚醒させ、『跳ね起き』を可能にした状態で睡眠と同じ休息効果を得られる。時間は通常の睡眠と同じだけ必要になる。
残りスキルポイント 4
まず『クリムゾンパレス』だが、俺の支援攻撃で固定ダメージを与えられるものの、敵の弱点属性を突いたときの瞬間的な威力の高さを考え、備えとして取っておくことにした。
「自分が攻撃するだけじゃなくて、味方を補助する技能が使えたらって思ってたから……こういう技能を覚えられて良かった」
「エリーさん、そんなこと考えてくれてたのね……」
「キョウカ殿も補助的な技能を使えるので、その技巧的な戦い方からは学ばせていただいています」
「ええっ……わ、私ってそんなことしてたかしら。『デコイ』とか、『ブレイブミスト』とかのこと?」
「言われてみれば、五十嵐さんは前衛での引きつけもできますし、補助もできて万能ですね。エリーティアの技で強化できる『サンダーボルト』もありますし」
「『ライトニングレイジ』もね。強化してもらうとどうなるのかしら……でも私は万能じゃないわよ、後部くんやみんなっていうスペシャリストがいて、その脇を固めてるだけだから」
謙遜している五十嵐さんだが、彼女も彼女でスペシャリストだと俺は思う。替えがきかない技能ばかりだし、彼女の士気解放には何度も重大な局面で助けられた。
「次は私の技能……なんだけど、実はまだどういうものがあるのか見てないのよね」
「じゃあ、今は初のお披露目ということですね。これは緊張するな……」
「……アリヒト、私の時はどうだったの?」
「エリーティア殿、それは鋭い指摘ですね……私の方が胸がキュッ、となってしまいました」
セラフィナさんがそんな言い方をするとは意外だが、確かに痛いところを突かれた時はそう言う他はないだろう。こんなふうにむぅ、と膨れているエリーティアは珍しくて、微笑ましかったりもするが。
そうこうしているうちに五十嵐さんがライセンスを見せてくれた――のだが。
◆キョウカの取得可能な新規技能◆
自身が窮地に陥ったとき、効果は強化される。
スキルレベル2:
戦乙女の吹雪:『戦乙女の艶舞』を使用したとき、同時に敵に対して魔法による範囲攻撃をするかどうか選択できる。必須技能:戦乙女の艶舞
群狼の強襲:騎乗した仲間が複数いるときに発動する。全員を闘気で包み、突撃による打撃、突破力を強化することができる。必須技能:群狼の構え
スキルレベル1:
鷹匠:鳥に類するものを使役できるようになる。鳥の言語を一部理解できる。
残りスキルポイント 4
「あっ……え、ええと。今回は、スキルレベル2までの技能が増えてるわね」
「え……あれ? 今……」
「どれも試してみたくなるようなことが書いてあるわね……今まで取ってない技も入れて考えるとどう思う?」
スキルレベル2より上に表示があったはずなのだが、俺の気のせいか――もし五十嵐さんが見せたくないような内容だとしたら、無理強いは良くないか。本当に気のせいということもありうる。
「鷹匠……鳥の言葉を理解できるなんて、ちょっとメルヘンチックというか……キョウカは動物好きだから、そういう技能を覚えられるの?」
「鳥も実家で飼ってたから、その影響があるのかもね。鷹なんてことはなくて、私が飼ってたのはインコだったけど」
犬も好き、鳥も好き――動物全般が好きとは、確かにエリーティアの言う通り、メルヘンな感じがしなくもない。本人を前にして、可愛らしい趣味だとは言えないが。俺も犬が好きなので、その点では気が合うと思う――これもとても言えないが。未だに言えないことばかりなのもどうなのだろう。
「メリッサの『猫言語理解』もあるし、動物の言葉が理解できる技能はいろいろあるのかもな」
「使役ってどうやってするんでしょうね。今までは倒した魔物の一部がテイムできてたけど、これは魔物じゃなくて鳥……それとも鳥に類するものだから、鳥みたいな魔物ならなんでもってこと?」
「なにか使い道がありそうではありますね。デミハーピィは鳥と人の半々っていう感じですけど、『鳥に類するもの』なんですかね」
「なんだか難しい話になってきたわね。言葉の概念的な……」
「じゃあ、今回も必要な場面に応じて覚える感じになるわね。後部くん、相談しておいて申し訳ないんだけど、自分の判断で取ってみたりしてもいい?」
「はい、それは勿論。あくまでミーティングは検討をする時間なので、強制は全くないです」
五十嵐さんは安心したようだが、少し汗をかいているように見える――気にはなるが、追及がしたいわけでもないので何も言わずにおく。
「では、この場にいる中で最後は私になりますね」
◆セラフィナの取得可能な新規技能◆
スキルレベル3:
ガードスクラム:現在の職業では習得できない。
スキルレベル2:
ブートキャンプ:一定の条件を満たした場所を『訓練施設』として、経験を積むことができる。参加者の体力が大きく減少した際に訓練を終了する。必須技能:トレーニングメソッド1、マンツーマン1
マインスイーパー2:一部の罠が致命的な効果を発動する場合、一度だけ解除行動をやり直すことができる。必須技能:マインスイーパー1
スキルレベル1:
サウンドプルーフ:音によるダメージ、状態異常などを軽減する。
射撃武器の心得1:射撃武器を装備したとき、性能をさらに引き出すことができる。
残りスキルポイント:6
「これは……習得できない技能? 今の職業ってことは……」
先ほど、パーティ編成を確認したときに何かが引っかかっていた――セラフィナさんの職業の前に『◯』が表示されていた。
「おそらく、上位職ということになるでしょうか。パーティ表示で職業の前に『◯』が表示されている場合、転職が可能なレベルなのだと思います……職業を変化させる方法は定かではないのですが」
「なるほど……エリーティアは剣の呪いが解けることで職業が変わりましたが、セラフィナさんの場合も何か条件があるんですね」
「この技能……『ブートキャンプ』があれば、街でレベルを上げることができるかもしれない。でも、関連する技能を取ってしまうと戦闘で必要なものに回らなくなってしまうわ」
エリーティアの指摘通り、強敵との戦いにおいてはこのスキルが取れていたら、という後悔が命取りになる。しかしセレスさんや支援者のみんなのレベルを街で上げられるなら――とも考えたが。
「ブートキャンプって、ものすごく厳しい訓練よね。セラフィナさんもこの訓練を受けたの?」
「はい、名称は異なりますが、訓練は受けています。ギルドセイバーにも私と同じような技能を持つ教官がいます」
「その教官の人に指導してもらえれば……というのは難しいか。ギルドセイバーも治安を維持するために、訓練を受けているわけだから」
「まあわしもやれと言われればやるがの、エリーティアの言う通りではある。技能は選択肢を増やしてくれるが、探索者の前線に立つものはやはり戦闘技能を優先する方が良いじゃろう」
『なんて、親方様も我輩も、セラフィナさんにしごかれたら死んじゃうよ……っていうのが正直なところだよね』
「それは確かに……ですが、キョウカ殿とエリーティア殿は私と合同でトレーニングができています」
「魔力があると無茶そうな動きでもできちゃうしね。エリーさんは元から運動神経がいいみたいだし」
「私のフェンシングは普通の習い事の範囲だったから、こっちでの戦闘とは訳が違うけどね……選んだ職業に応じて、身体能力が上がっているのよ」
『後衛』という職に応じてどんな能力が強くなっているのか――何というか、まんべんなくという感じがする。サラリーマン時代より筋肉はついたが、屈強というほどでもない。
「『マインスイーパー2』も凄いことが書いてますね……地雷撤去の作業が失敗しても、一度やり直せるってことですか」
「指先の器用さにはあまり自信がありませんので、こういった役割は……いえ、必要であれば担当しますが」
『サウンドプルーフ』は装備である程度補えそうで、『射撃武器の心得』に関しては、ある程度接近した状態で使う銃火器のようなものを想像したが、現状手に入っていないので保留とする。
セラフィナさんが上位職になったときに専用技能を覚えることを視野に入れ、ポイントは残しておく。彼女が教官となって支援者のみんなが訓練を受けるというのは、現状保留とした――『ブートキャンプ』がどれくらい過酷なのか次第だが、気軽に試せないのが悩みどころだ。
※お読み頂きありがとうございます!
ブックマーク、評価、ご感想、いいねなどありがとうございます、大変励みになっております。
皆様のご支援が更新の原動力となっておりますので、何卒よろしくお願いいたします!
※次回の更新は2月14日(金曜日)19時となります。




