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創炎のヒストリア ~転生執事の日常~  作者: 十本スイ
第五章 クーデター阻止編
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第百七十一話 セイラVS多面童

 【オウゴン大陸】に到着したヨヨと【サフィール国】の魔王ノウェムは、乗って来た飛龍から大地に降り立つ。



「ここから先は歩いて向かいましょう」

「何故じゃ?」

「先程【鬼灯島】がここに落ちました。きっとその近くには鬼たちと《英霊器》たちが戦っているはず。私たちが行っても大した戦力にはならないかと思います。空を飛んでいれば、もしかすると撃ち落とされる可能性もあります」

「むむ……それは勘弁じゃな……分かった。じゃが《皇宮》は山の中じゃぞ?」



 ヨヨたちが降り立ったのは山の外であった。目的地の《金子の間》がある《皇宮》には山を越えなければいけない。



「こういうこともあるかと、マユキから近道を聞いております」

「おお! さすがはヨヨじゃのう!」

「ですが皇帝も恐らくは《皇宮》から離れているはずです。《五臣》は皇帝を外へと連れ出し、鬼に見つからないようにすること」

「む~だが、それじゃと皇帝は討てないが、結局は《皇宮》を制圧されてしまう可能性があるな」

「そうですね。ですが皇帝が無事なら、確実に鬼を倒し、再び上に立てると思っているのでしょう。現に今までどのような災厄があっても、結果的に皇帝の采配で世を平定していますから」

「確かにのう。いつも先回り先回りに動いて対処をしておるし、まさか皇帝は未来が分かるのかのう?」

「さあ、それは判断つきかねます。しかし皇帝の一族は、先見の明を確実に持っていることは確かです。そうでなければ、これまで一度くらい失脚しているはずですから」



 過去、皇帝を倒し新たな世界の支配者になろうとした人物がいなかったわけではない。かの【ルヴィーノ国】もそうだった。しかし結果的に、皇帝を擁護する力が働きクーデターは失敗に終わっている。



 また大災害とも呼べる現象が【オウゴン大陸】を襲っても、前もって対処していたとしか思えない方法で乗り越えている。



 すべてにおいて後手に回らない皇帝。今回の鬼の襲撃についても、もしかしたら最初から予測されていたことなのかもしれない。



「とにかく、皇帝の力は置いておきましょう。今は皇帝と合流して、状況を把握することです」

「うむ、なら向かうのじゃ!」



 飛龍はこの場に置いておいて、二人は山へと入っていった。











「セイラッ!」

「真雪さんっ!」



 親友同士、互いに背中合わせになって、二人の鬼と対峙している。真雪が彼女――――星守セイラが元の世界に戻らないで目の前に現れた時は驚いた。



 鬼のことや、真雪が戦うと聞いて、彼女はいてもたってもいられずに真雪の力になりたいとこの世界に残ってくれた。



 その時の嬉しさは一生忘れられないだろう。だからこそ、世界を脅かす鬼を退治して、セイラと一緒にソージの元へ帰ろうと約束した。



「セイラ、相手の魔力量分かる?」

「は、はい。とてつもない魔力量です。その量は……セイラたち以上です」



 セイラは《深見(ハイビジョン)》という観察力に優れた能力を持つ。その力で相手の魔力を目分量で計ったのだ。



「そっかぁ、けど勝負は魔力だけで決まるわけじゃないし、私たち二人なら何でもできるよ!」

「はい! 出てきて下さい……右のジコクさん!」



 セイラの前方に魔法陣が広がり、そこから頭巾を被って背中に小刀を背負った小さな存在が浮き出てくる。



「続いて出てきて下さい! 後ろのチョウさん!」



 同じように新たな魔法陣が出現し、そこから軽鎧を着用した真紅の髪色を腰まで伸ばした女性が現れた。右手には大きな黒い戟を備えている。切れ長の瞳が、目の前の鬼を捉える。



「主様、アレが私が討つべき対象ですね?」



 キリッとした表情のまま冷たさを感じさせる声音が響く。



「はい、倒せますか、チョウさん、ジコクさん?」

「「愚問っ!」」



 ジコクとチョウが同時に鬼へと突っ込む。ジコクは空に跳び上がり背中から刀を抜き、身体を回転させていく。



 チョウはその戟を拘束に振り回し、大気を斬り裂きながら鬼との距離を潰す。



 しかし相手は動じずに静かに合掌したまま佇んでいる。首にかけている巨大な数珠が突然フワリと浮き上がり、バラバラになってジコクたちに襲い掛かる。



「そのようなもの、弾くニャッ!」

「斬り裂いてくれるっ!」 



 二人の言葉通り、飛んできた数珠を防いでいく。「ほう」と感心するように鬼から声が漏れる。だが次にその鬼の行動に虚を突かれてしまう。



「静かなること―――――――凪の如し」



 突然鬼を中心に青白い空間が広がっていき、その空間に入った瞬間、ジコクとチョウの動きがピタリと止まる。ジコクはそのまま空から大地へ向けて落下してしまう。



「ジコクさんっ!?」



 セイラが叫ぶが、当の本人であるジコクやチョウは驚愕のまま困惑している。それもそのはずだろう。身体の自由を完全に奪われているのだから。



 そしてそれを成した人物―――――間違いなく前方にいる鬼。



「まずは名乗ろう。私は多面童と言う。お前たちを黄泉へと送る者の名。抵抗することなく、静かに逝くことを勧めるが、どうする?」

「ふざけるなっ! 世界を脅かす賊どもめ! この黒戟のチョウが斬り裂いてくれるわ!」

「拙者も主が生きる限り忠誠を尽くすニャ」



 チョウとジコクには揺らぎが無い。



「……ならば、その主ごと、この世から去ればいい」



 膨大な魔力が多面童の身体から滲み出てくる。すると今度は赤い空間が周囲を覆っている青い空間を塗り替えていく。



「断ち切ること―――――――刃の如し」



 多面童がサッと腕を振るっただけで、距離が離れているにもかかわらずにチョウの体幹に赤い筋が走る。



「がはっ!?」



 血しぶきが周囲へと散り、そのまま仰向けにチョウは倒れてしまう。セイラは彼女の名を叫びながら近づき身体を起こす。その前に庇うようにジコクが立つ。



「ぐ……あ、主様……」

「チョウさん!? しっかりして下さい!」

「だ、大丈夫です。咄嗟に身体をずらして致命傷は避けましたから……ぐぅ」



 戟を支えにして立ち上がるチョウ。



「ほう、殺気に反応して私の刃から少し身をかわせたか。だがまだ、私の攻撃は続く」



 再び多面童が腕を振るおうとするが、その背後から生まれた影に多面童が包まれる。咄嗟に振り向く多面童。そこに立っていたのは、身の丈五メートルはあるのではないかと思われるほど巨躯の存在。



 その手には人間よりも大きい棍棒が握られてあり、今まさに多面童に向かって振り下ろされようとしていた。



「思いっきりやって下さい! タモンさんっ!」



 セイラの掛け声をきっかけに多面童目掛けて棍棒が叩きつけられた。





次回更新は12月3日(水)です!

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