91 魔物素材
本作の発売日が決定しました!
2020年2月10日(月)KADOKAWAさんより発売です。
早いところでは2月8日から書店に並ぶようですのでよろしくお願いします。
オリジナルのストーリーや書き下ろしのSSなども満載です!
活動報告にて書影も載せてますので是非ごらんください^^
スピンビーを倒したあとも、何度か魔物と遭遇し戦闘を挟みながら周辺をライくんと一緒に探索続け、いくつかの新素材をゲットした。最終的に新たにライくんに教えてもらった素材は緑息草、緑鱗木、竜命草、竜角木の四種類。
緑鱗木や竜角木は木といっても見かけはサトウキビのような太めの茎の草らしく【伐採】と【採取】どちらでもスキル効果が発生した。ということは、もしかしたらだけど【木工】と【調合】どちらにも使用できる素材の可能性がありそうだ。
「兄ちゃん、明日も探索に行くならルイも連れて行くといいよ。ルイは【採掘】が得意だからなにか見つかるかも」
帰り道でライくんからそんな話を聞くが、さすがにルイちゃんを今、森の中へ連れて行くのは問題だと思う。無事に合流したばかりのお母さんの許可も下りないんじゃないかな。というか、今回のライくんだってお母さんに確認したら絶対に止められたと思う。そう考えるとちょっと軽率だったかも。
ただルイちゃんがいれば鉱石系の新素材が見つかる可能性が高いから、ウイコウさんとアオにも同行をお願いして、それでもだめなら六花の皆さんの力も借りてでも安全を確保して、なんとか許可が出ないだろうか。
「おう、コチ戻ったか。先にやってるぜ」
拠点に戻ると既にアルたちが酒盛りを始めていた。出がけに報酬の分は渡していたけどつまみも無しによくやるもんだと思ったら、チヅルさんが練習で作っていた料理を味見するという名目でおつまみの提供を受けていたらしい。
「おかえりなさい、コチさん。今日はいろいろありがとうございました。おかげでうちのメンバー全員の生産スキルが死にスキルじゃなくなったわ」
おつまみ提供者としてなのか、いつのまにかアルとミラと仲良くなったらしく一緒にお酒を飲んでいるチヅルさん。
「いえいえ、生産スキルが見直されるのは私も嬉しいですから。でも、本当に良い物を作れるようになるためには継続的な努力が必要ですので、少しずつでも練習は続けて下さいね」
「もちろんよ。さすがに商売するところまでは考えていないけど、ゆくゆくは自分たちで使うものは全部自分たちで作れるようになりたいもの」
自分たちのものは自分たちで、か。街の人たち全員分の装備や薬、道具を自分たちだけで賄うつもりの私たちと似たような考え方なのはちょっと嬉しい。そんなチヅルさん達の役に立てて良かった。
「あ、そういやコチ。村人探索中に倒した魔物の素材がそろそろ邪魔臭いんだが、お前んとこで預かってくれよ」
「にゃ! あたしのもお願い」
「あれ? そういえばさっき私がたおした魔物の素材は……っとそうか。通知をオフにしてたんでしたっけ」
作業の邪魔になるからアナウンス系の通知を全部オフにしてたんだった。倒した魔物のドロップは勝手にインベントリに入るから忘れていたや。私たちのパーティでは、パーティ一緒に行動しているときのドロップはリーダーである私のインベントリに入る設定だけど、分かれて行動しているときはそれぞれのメンバーのインベントリに入るから捜索中のドロップがふたりのインベントリに入っているんだろう。
「わかりました、じゃあひとまず私が預かりますので全部移してください」
「おう、助かるぜ」
アルがささっと自分のインベントリを操作したらしく、私の前にアイテム譲渡のウインドウが開く。表示されていく一覧を見てOKボタンを押そうと思った私の指が思わず止まる。なぜなら、ウインドウに表示されていたアイテムが想像を遥かに超えて、ずらっと下の方まで続いていたからだ。
「ちょ、ちょっとなんですかこの量は!」
「あ、こっちもお願いねコォチ」
「げ!」
もうひとつ開いたウインドウを見て、意図せず下品な声が漏れる。ミラから送られてきたウインドウにも同じくらいのアイテムが表示されていたからだ。
トレントの触椀、フンゴオンゴ茸、アグリーエイプの毛皮、アグリーエイプの肉、フォグモンキーの毛皮、フォグモンキーの肉、ハイドタイガーの隠蔽毛皮、ハイドタイガーの牙、ハイドタイガーの肉、スラッシュマンティスの鎌、スピンビーの針、クラッシュビートルの甲殻などなど……
「いつの間にこんなに……」
「まあ、シロのサーチと俺のデストロイで」
「あたしのサーチとアカのデストロイ?」
確かにこの面子ならそれくらいはできるだろうけど、今回は村人の探索という目的があるんだからそこまで戦闘はしていないと思っていたのに……それに、よくよくステータスをチェックしてみればイベントポイントであるEPも結構なポイント数になっている。
これで村人が見つかってなかったら文句のひとつも言うところなんだけど、しっかりと役目を果たした上で戦闘もしてたのなら……
「……捜索は疎かにしてないんですよね?」
「あったりまえだろ! 命が懸かってるんだぜ」
「……コォチ、ひっかかれたいの?」
「ですよね。アルとミラがそんなことしないのはわかってます」
ちょっと怒った素振りを見せるふたり。もちろんそう言われるのはわかっていた。人命が掛かっているのに自分の楽しみで戦闘を優先するようなクズがあの街にいる訳もない。となれば、もう褒めるしかないじゃないか。
「ありがとうございました。お詫びの気持ちも込めて特別にもう1本ずつお付けします」
「「あざぁっす!!」」
ふたりも私が本気じゃないのは勿論承知。体よくせしめた追加の徳利を貰って、あっさりと不満を消して盛り上がろうとするふたりを苦笑しつつも、つくづく頼もしいと思う。
……まあ、絶対に直接言ってはやらないけどね。




