表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~(旧題:初めてのVRMMO始まりの街がチートでした)  作者: 伏(龍)
第 2 章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/106

48 教え

(いいかい、コォチ。短剣術に馬鹿力はいらない。必要なのは……)


「わかってますよミラさん。しなりと速度、そして最短で最適な剣捌き」


 頭上から飛びかかってきた猿を【索敵眼】で察知し、半歩下がった私は横から飛びかかってきていた狼の目を横薙ぎに斬りつけ、そのままの勢いで着地したばかりで動きの止まった猿の首筋を薙ぐ。


「ですよね」


 訓練でボコられながら何度もミラに叩きこまれた教えを無意識に脳内で再生しつつ、斬りつけた魔物は無視して次の魔物へとステップを踏む。視界による状況把握と、【索敵眼】による状況把握を無意識下で統合し、最適な次の動きを反射的に選択していく。


(コチ君、なによりも大事なのはそもそも多対一の状況にならないことだ)

「すみません、ウイコウさん。教えを活かせませんでした」


 またしても脳内をよぎる達人の教えに呟きで答える。


(それでも囲まれてしまったときは、焦らずに周囲の状況をしっかりと把握することだ。そして、自分の持ちうるすべての技術と、現場にあるあらゆる物を利用して同時に相手にする数を自分でコントロールするんだ。9対1よりも3対1を3回繰り返した方が生存率はいくらか上がるはずだ)


 はい、ウイコウさん。


 インベントリから出す暇がないので、足元に落ちていた石を拾って背後の狼を牽制。同時に視線を下げ無詠唱で【光魔法】の『光灯』を光量最大で頭上に放つ。


「ウギャギャギャ!」


 樹上を移動していた猿たちの一部が悲鳴をあげ、何体かが落下。夜行性の狼たちも突然の強烈な光で統率されていた群れでの動きに混乱をきたしている。


「今のうち」


 その間隙をついて包囲を抜けると、【索敵眼】で周囲を確認しながら森の木々を右に左へと避けながら走る。どうやら目を潰された何体かは私の姿を見失ったらしく、私を追ってくる動きを見せていない。このまま逃げ切れればいいんだけど、狼たちの鼻は誤魔化せないらしい。少しずつ私を取り囲もうと移動しているのは主に狼たちだろう。

 となれば私もこのまま黙って再包囲される訳にはいかない。


(こぉらコチ! さっきから受けてばっかりじゃねぇか。相手に好き勝手攻めさせたうえでさらに全てを受けきるのはよほどの実力差がねぇと駄目なんだぜ。あ? 俺とお前だったら? んなもん俺にとったら余裕過ぎておつりがくるな、しかも国が買えるくらいにはな。おわ! 馬鹿、やめろてめぇ! 気に入らないとすぐに遠距離から石投げとか魔法攻撃しまくるのはやめろ! あぁもう! とにかくだ、自分から積極的に攻めて相手に好き勝手させないことも大事なんだよ! わかったか!)


 はいはい、わかりましたよ。脳裏をよぎってしまったアルの言葉におざなりな返事をしつつ、進む方向を鋭角に切り返して魔物の数が少ない方に自ら突っ込んでいく。

 すぐに私に気が付いた狼たちは襲い掛かってくるが、この辺が所詮は魔物。ここは包囲が完成するまで私との距離を保つように退くのが正解だった。

 飛びかかってきた最初の一体を近場の木を回り込んで避けると、後続の狼の首を短剣で斬り裂く。短剣は当然ながら剣身が短いため、余裕があるならば攻撃する場所は目、鼻、口の感覚器官か首筋や関節などが望ましい……っと。首を斬られ地面に倒れ込もうとする狼を【体術】を使って蹴り飛ばす。


 おっと、ラッキー。動きを乱すだけの目的だったのに、蹴り飛ばした狼に巻き込まれて下敷きになった狼がいたので、すぐさま駆け寄って首の骨を踏み折る。

 残りの狼とは距離が空いたので、再度逃走。包囲しようとしていた一角を崩したおかげで逃げながらステータスを確認する余裕もできた。

 

 うん。なんだかんだで十体近くは魔物を倒したし、戦闘時間もいい感じに長引いてきている。精神的な疲労はあるけど、体のほうはいたって元気だしMPも温存出来ている。最初はあまり大きなダメージを与えられなかったけど、いまなら問題ない。それなら……


「そろそろ頃合いかな」


 私を追ってきているのは残り十体程度。しかもどうやら川に出たらしく、おあつらえ向きに視界も場所も開けた。川近くは石が多くて足場が悪そうだから注意っと。

 瞬時に状況を確認すると、川を背にし魔物たちを待ち構えながら見習いの短剣をインベントリにしまうと、見習いの長剣を右手に持ち、さらに見習いの長杖を取り出して左手に装備する。

 同時に狼たちが森から出てきて私を半包囲する。


(コチ、あなたは弱い。力も魔力も低いから攻撃力が低いし、魔力量も多くないから高位の魔法を使って威力をカバーするのも難しいわ。でも魔法は)

「わかってます、エステルさん。魔法は」

 

「「精度、応用、そして制御」」


【無詠唱】【連続魔法】【並列発動】【魔力操作】【魔力循環】全てのスキルを使って自分の周囲に無数の魔法を待機状態で発動する。エステルさんのパチンコ玉には比べるべくもないが、私の今の全力だと各魔法のレベル1で使える弾系の魔法をソフトボールぐらいの大きさに圧縮したものを十個程度作るのが限界。


 でも、普通なら真っ直ぐ飛ばすだけのこの魔法を自由自在に制御出来れば……


「「「「「ギャウウウウウウウん!」」」」」


 私の魔法を受けた五体の狼が光の破片となって消える。と、こうなる。


 いま、私がやったのは待機させていた【火弾】と【風弾】を制御して、ふたつを同時に同じ場所に命中させただけ。火と風の魔法は相性がいいからうまく使えば威力を増幅できる。同じような魔法は【火魔法】【風魔法】のスキルレベルを上げたあとに覚えられる上位派生のスキルにあるけど、その魔法自体がまだ使えなくても【並列発動】と精密な【魔力操作】で高い精度の制御ができれば同じ効果を生み出せるということ。


 とはいってもそこまで威力に大きな差が出る訳じゃない。今回魔法一発(二発?)で魔物を倒せたのは、今回の相手が称号【大物殺し】の効果が発動するレベル差だったこと、称号【初見殺し】の効果が発動する初見魔物だったこと、そしてソロで戦い続けていた時間によってステータスが上昇していく特殊スキル【孤高の頂き】の効果でステータスが底上げされていたからこそだ。


 さて、このまま残りの魔物も魔法で倒したいところだけど、残念ながらMP切れ。【孤高の頂き】の効果で微回復はしていくけど、回復を待っている時間は与えてくれないだろう。


「ということで最後は」


 魔法の威力を上げるために出していた杖をインベントリにしまうと、見習いの長剣を構える。


「こいつで締めますか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

書籍第1巻も2020年2月10日に発売ですので、是非書店でご確認頂けたら幸いです。下のタイトルから紹介ページにとべると思います
i435300/
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ