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勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~(旧題:初めてのVRMMO始まりの街がチートでした)  作者: 伏(龍)
第 2 章

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35 最後の選択肢

「うん、では説明しよう」


 あの日、私の最後の選択肢はウイコウさんのこの言葉から示された。



◇ ◇ ◇


「君も知っている通り、すでにリイドの街に住む私たちの制約は【会話】【行動】ともに解放されている。だからこそ、ここに全員が集まることができているということなんだが、それはいいね」

「はい」


 ウイコウさんは私の返事に小さく頷く。


「うん、これにより私たちは街の中で自由に動けるようになった。だが、実は私たちにはもうひとつやっかいな制約がかけられている。それがなんだかわかるかい?」


 会話と行動以外の制約か……ウイコウさんは街の中でなら自由に動けると言った。それなら。


「……移動の制限、ですか? この街から離れられない、とか」

「なかなかいいね。それも間違いではないが、それは制約されていることによる結果に過ぎない」


 制約されていることによる結果? なにかが制限されているから、本当なら街の外にも出ていけるのに出来ない。街の中と街の外で違うもの? ……あ!


「もしかして……【時間】ですか?」

「さすがだね、コチ君。そのとおりだよ。理由(わけ)あってこの街は周囲の僅かな土地と共に外の世界とは時間の流れの速さが違う。それを流用してこの世界を訪れた夢幻人に私たちが指導をしているわけだ」


 え……ちょっと待って。どういうことだ、この街の時間が体感はそのままで現実よりも早く進んでいるのは、チュートリアルのためじゃないってこと? 本当はもっと別の理由があって時間の流れが違うだけなのに、都合がいいからチュートリアルにも使っている?


「そして、夢幻人は転職をすることでこの街の時間軸から切り離されて、外界へと旅立つ。当然私たちはそのままで」

「……旅立った夢幻人は二度とこの街には戻れない」

「そういうことだね。理解が早くて助かる」


 チュートリアルが終わったからチュートリアル専用の街に入れなくなっていたんじゃない。いや、結果は同じことなんだろうけど、ただ単にシステム的に戻れないという訳じゃなくて、戻れないことにもちゃんとこの世界なりの理由があったってことなのか。


「この街が担っている夢幻人の指導以外の役目については、ひとまず置いておく」

「え……」


 えぇ! むしろそここそが一番知りたいところなんですが……あ、ウイコウさんの目が凄い真面目でちょっと怖い。うん、これは聞いても教えてくれないパターンだ。


「……はい」

「すまないね、コチ君の選択次第によってはいつか教える日もくると思う。むしろ私たちリイドはコチ君と全てを共有できる間柄になりたいと思っているんだ」

「? ……どういうことでしょうか」

「俺たちと一緒に外へ出て冒険しようぜ! ってことだよコチ」


 ウイコウさんの横から顔を出したアルが、白い歯を見せて笑う。大事な話の最中なのに我慢できなかったんだな、落ち着きのない奴め。


「それは……私としても願ってもないことですけど、そんなことが可能なんですか?」

「結論からいえば可能だ。いつもならリイドから夢幻人が旅立っていくだけだが、夢幻人がリイドと共に行くことを決めるなら、リイドが夢幻人に合わせざるを得なくなる。つまりそれこそが【時間】の制約の解放だ」


 この街の人たちと一緒に外を冒険できたら……それは、私がずっと思っていたことだ。もし、本当にそれが出来るのなら嬉しいに決まっている。


「どうすればいいんですか、ウイコウさん」

「まあ、待ちたまえ。まだ話は終わっていない。コチ君にとって利益だけではなく不利益もある話だと言っただろう? きちんとそれを聞いてから判断してほしい」

 

 そうだった。ウイコウさんは確かに不利益を示唆して、選ばない方がいいかも知れないとまで言ってくれていたんだった。でも私は、この街の皆とまた会えることができるなら、多少の不利益なんて気にするつもりはない。一緒に冒険に行けるというメリットすらなくても構わない。


「そうでした、では教えてください。私にどんな選択肢があって、どんな不利益があるのか」

 

 そんな覚悟を私から察してくれたのか、ウイコウさんがどこか嬉しそうに顎鬚をしごいて頷く。


「では話そう。コチ君、君がこの街で得た経験で転職できるようになった職業をもう一度確認してみてほしい」

「はい」


 ウイコウさんに言われるがまま、転職先が表示されたウィンドウを見る。あまりにたくさんありすぎて、全部を詳細に見るわけにはいかないが最後まで流していく。


「あれ?」


 最後まで流して違和感に気が付く。このウィンドウ、転職できる職業名を三つ横に並べて改行をしている。さっき職業を流し見たときは、最下段の職業はぴったり枠に納まっていた。つまり3の倍数分の職業が表示されていたはず……それなのに、今は最後の職業がひとつだけはみ出ている。つまり転職できる職業の数が……減ることは無いだろうから、増えているということになる。


「いったい何が?」


 確認するべく、急いで表示されている職業の一番上に戻ると……いの一番にそれはあった。


「これは……」

「つまりはそういうことだ。さっきも言ったが、夢幻人はここで転職をすることでこの街から出ていく。だが、ふたつの制約を解除した君には新しい選択肢が示される」


 今までのウイコウさんの言葉が意味するところが、なんとなく腑に落ちた。転職リストの一番最初、そこには今まで私が自分のステータスを確認するたびに目にして見慣れた単語が表示されている。


「……転職先に〔見習い〕がある」


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お読みいただき有難うございます
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

書籍第1巻も2020年2月10日に発売ですので、是非書店でご確認頂けたら幸いです。下のタイトルから紹介ページにとべると思います
i435300/
勇者?賢者? いえ、はじまりの街の《見習い》です~なぜか仲間はチート級~
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