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130話

  一発芸をやってから数日後の休日、俺は部屋で半分死んだ目でオンラインゲームをする。ゲームには一切手を抜かない主義だが今日はやる気が沸かない。ただ事務的に淡々とこなしている。ゲーム結果のスコアすら確認する気になれない。チャット欄を見ると味方の一人が怒涛のチャットを行っていた。

  

  ♰ドウラク♰: you are troll!!


  ♰ドウラク♰: 0-10-1!!


  ♰ドウラク♰: noooooooob!!


  ♰ドウラク♰: report *** noob this zac!!


  ♰ドウラク♰; 死ね


  まさかこいつは俺に対して言ってるのか?いやいや、ブロンズ1ごときがシルバー5の俺を煽る権利なんてどこにもない。ブロンズ(銅ランク)とシルバー(銀ランク)では決定的な違いがあることくらいこいつもわきまえているはずだ。きっと俺以外の誰かを煽っているのだろう。このまま無視しても良いんだが、まぁここは俺が彼の怒りを収めてやろう。だって俺はシルバー、こいつのの先輩みたいなものなのだから。


  カチャカチャカチャ……ッターン!


  NAO君 :失敗しました。ごめんなさい。


  そのまま返事を待たずにログアウト。そして大きくため息をつきながら天井を見上げる。


  「はぁ……天井きれい……」


  ぼけーっとしながら考える。当初の計画では俺には既にたくさんの友達がいて、しかも1組の人気者。今頃は友達の家でパジャマパーティをする為の準備をしている計画だった。


  あの一発芸で完全に1組の奴らの心を鷲掴みにしたと思っていたのに結局、今日までメルアド交換どころかロクに話すらしていない。相変わらずエイリアンvsプレデターのような関係だ。いつ殺し合ってもおかしくない。


  「はぁ……一発芸の時、スラがミニスラちゃんくらいの大きさだったらスラを股間に入れて江頭2:50のモノマネができたのに……そっちなら今頃は……」


  いやいや、終わってしまった事を今さらうだうだ言っていても仕方がない。先の問題を考えよう。


  「……」


  ミニスラちゃんを見る。5匹1セットのミニスラちゃんが今は4匹しかいない。

  赤神ちゃんに捕まったマヌケなミニスラちゃんはあれから1度も家に帰ってきていない。そっちの問題はスラが解決すると言っていたが飼い主としては心配でいても立ってもいられなかった。そこで俺は直接赤神ちゃんにミニスラちゃんの返却と赤神ちゃんの履いている黒ニーソを要求したんがどっちも渡してくれなかった。流石にミニスラちゃんと黒ニーソの両方を要求したのは強欲すぎだったかもしない。ミニスラちゃんは諦めて黒ニーソだけで妥協すべきだった。

  まぁ、俺はともかくスラたちはとても心配してるだろう。何ていったって自身の分身なのだから。


  「やっぱり大勢で人生ゲームをするのは楽しいですね~!そしてスラちゃん、なんとプロ野球選手になっちゃいました!」


  「" ヽ(・∀・ )ノおめでとー "」

  

  「" ( ;∀;)3ごうしゃっきん3000まんだー "」


  「" ( ̄ー+ ̄) 3000まんあげよう "」


  「" (´∀`*)ありがとん  "」


  スラとミニスラちゃん4匹はとても幸せそうに人生ゲームをしていた。

  薄情な奴らめ……。捕らわれのミニスラちゃんを心配しているのは俺だけか?

  いや、薄情なだけならまだ良い。もしかしたらこの単細胞生物どもはミニスラちゃんが合計で5匹いたことすら忘れてしまってるかもしれない。スライムなんて低知能なモンスターだもんな。逆に下手に覚えていて悲しみに暮れるよりもこのまま忘れてしまった方が幸せなのかもしれない。ならば俺もこのまま忘れよう。さよなら、ミニスラちゃんー……捕まったの何号だったっけ?確か2号だった気がする。


  ピコーン!


  スラのスマホからメールの受信音が鳴る。


  「うにゅ?」


  スラは人生ゲームを一旦中断してメールの確認をした。


  「赤神ちゃんの所で研修中のミニスラちゃん5号からメッセージです!」


  研修ってなんやねん。てか自力で逃げてこいよ。別にパスポートとか取り上げられてる訳じゃないんだからさ。

  スラはメールを確認すると嬉しそうにスマホをの画面を見ながら言った。


  「えへへ~、これから焼き鳥パーティーをするみたいです!行きましょう!」


  「あん?……焼き鳥パーティー?」

  

  画面には激しく跳ねてるせいでピンボケしているミニスラちゃん5号と皿に焼く前の焼き鳥が積んでる写真が映っていた。捕まってる身分のくせに焼き鳥パーティーかよ。

  

  「はぁ~俺はパス。今は気分的に外出する気分じゃないんだ。ここで漫画読みながらごろごろしてる」


  「な……なお……きゅん?」


  スラがとても心配した様子でスラのおでこを俺のおでこにくっつける。 

  

  「別に風邪とか引いてないぞ?ただ気分的に乗らないだけだ。外に出るのもメンドクセー」

  

  「で……ですが……」


  「俺の事はいいから焼き鳥食って来いよ。だけど調子に乗ってあまり遠くに行き過ぎるなよ?」


  あれ?そういや、ミニスラちゃんは人に見つかったらまずいのにどこの焼き鳥屋に行くんだ?

  ……ま、まさか


  「……ス、スラちゃんたちはこれからどこに行くのかな?」


  「もちろん赤神ちゃんの家です!」


  「俺どうかしてたは!」


  こんなことすらすぐに気がつけないほど調子が悪かったのか!スラが心配する訳だぜ!千載一遇のチャンスを逃す所だった!

  俺はすぐに勝負服に着替えて出かける準備をする。


  「おっと、スラにご褒美をあげるのを忘れていた」


  「うにゅ?」


  スラを抱きしめてすりすりする。良くやった!とても良くやった!

  スラはとても満足そうにしていた。


  「んふ~!もっとスラちゃんをすりすりするのだ~」

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