第77話 例え子供でも、罪人の証となる処遇がおりる
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それでもグズリーは叫び続ける。
情緒不安定なんじゃろうな。
そう思った時――今まで沈黙していたナースリスとアンジュが口を開いた。
「アノ子、いらないニャン」
『……残念ですが、あの子は変わらないでしょう。もう、箱庭に置いておくことは出来ません』
「ナースリス様!」
この言葉を聞いた牧師は顔面蒼白。
まだ来て間もないのに、自分の子供の所為で〝箱庭の牧師と言う名誉〟を捨てることになるのじゃからたまったものではないじゃろうな。
今にも我が子に食って掛かりそうなのを堪える牧師じゃが、ワシは溜息を吐いて二人に声をかけた。
「そこまで、最早手遅れか?」
「親が早々に外弁慶なのを知っていれば、こうはならなかったですニャ」
『あの子の問題は、子どもと真摯に向き合わなかった親の責任でもあります』
「そんな……」
『それに、あの子の未来は暗いものです。殺人、恐喝、盗み……そういう未来しか見えません』
そこまでナースリスに言われ、獣人王は顔を顰め、そんな未来しか無いのだと言われた父親の牧師は顔面蒼白となった。
『早急に手を打つべき子供だったのです。それを親である二人が怠った。ただそれだけです』
「あ……ああ……」
「牧師のおじさんには悪いけど、箱庭にはもう居られないニャン」
トドメとばかりにアンジュが告げると、泣きわめくグズリーは何が起きているのかも分からず叫ぶばかり。
自分は悪くないと思い込んでいるからこその傲慢。
ワシは溜息を吐いた。
「獣人王、新たな……そうじゃな、子が居ても問題はないが……」
「早急に調べ上げた上で、派遣致します」
「そうしてくれ」
「あの! ナースリス様! グズリーは手遅れなのですか⁉」
牧師は必死に我が子がそんな犯罪者になるとは思いたくないのじゃろう。
しかし、現実とは厳しいもので、ナースリスは沈黙し、アンジュが変わりに口を開いた。
「あの様子を見てわからんのなら、アンタも同類ニャン」
「‼」
「もう手遅れニャン。治らないニャン。辛うじて治る可能性は……もうほぼないニャン」
「そんな……」
「子供はしっかり親が見てないと駄目だったニャン。上辺だけ見てても駄目だったニャン。しっかり様子を把握することも大事ニャン。特に獣人の子はそれが顕著なのニャン」
「確かに、獣人の子供は外弁慶内弁慶となりやすい者が多い。ゆえに、親の監視は必要不可欠である」
「それななのに、怠った責任は親にあるニャン」
「……」
そこまで言われては、流石に牧師も何も言えず「そう……ですね」と呟くばかり。
残念じゃが、彼らの仕事はここまでのようじゃ。
まだ六歳なら改善のしようはあると思いたかったが、獣人はそうは行かぬらしい。
それでも、軍に入れて厳しい訓練に参加させ、心を折らせると言う方法で治る場合もあるそうじゃ。
「六歳では軍には入れぬじゃろう」
「十歳から入れますよ。後数年ですね」
「獣人は成長が早いですからね。早めの対処が必要なんです」
「なるほどのう」
軍に所属し、思い切りプライドをへし折る。
それで治ることもいるらしい。
現に貴族のアホな子供などは、軍に入れられ更生させられることもあるのじゃとか。
王族でもそれをすれば良かったものを……と獣人王を見ると「あの子は三度軍に入れました」と言っていたので、件の元姫君は治らなかった典型なんじゃろうな。
思わず溜息がこぼれた瞬間――。
「畜生‼ ハヤトなんて殺してやる! そして俺がここのボスだ‼」
グズリーが叫んだ瞬間、グズリーの牙が折れ、それを見た母親は悲鳴を上げ、グズリー本人は折れた歯を見て呆然としておる。
獣人にとって、牙が折れる事は〝罪人〟と言う証。
ナースリスの怒りを食らったのじゃろうな……。
「うわああああ‼」
「きゃあああ‼ あなた! グズリーの牙がああああ‼」
「――っ⁉」
『許しがたい罪でを口にしましたね……あの子は今後、罪人として生きるでしょう』
淡々と語る冷たい口調のナースリスに、滝汗を流して「親の不始末です……」と頭を下げて子どもと奥さんの元へと向かう牧師。
……人生をやり直そうにも、やり直せない所まで来てしったようじゃ。
「やれやれ……。ワシは命を狙われやすいのかのう」
「命を狙われやすい事も多々あるでしょうが、養子に欲しいと言う馬鹿な人間も多いようですわ」
「ワシは既にマリリンたちの養子じゃぞ?」
「金にものを言わせようとする貴族はそれなりに……と兄たちから聞いておりますわ」
思わず溜息がこぼれる。
マリリン達は苦労しているのかもしれん……。
とは言え、他の貴族の子供にでもなろうものなら、搾取されるか、最悪マリアンとの婚姻もなしになるかもしれん。
ここはマリリンたちには頑張ってもらわねば……。
「悩ましい問題ばかりではありますが、ナースリル様の天罰も下ったことです。実のある話をしましょう」
「そうじゃな」
「気持ちを切り替えましょう」
獣人王は泣き喚くグズリーとその親に場所を離れるように伝え、三人は去っていった。
そこからは実のある話ができてよかったが、翌日――グズリーの家族は箱庭を後にした。
アンジュが「罪人をこの箱庭に置いておけないニャン」と言いにいった事が切っ掛けらしい。
彼らは最後の挨拶をする間もなく、この箱庭から去っていったという事じゃった。
「まぁ、グズリーもあの天罰で心は折れたじゃろうな……」
「でないと困りますニャン」
「しかし、まだ子供の歯じゃろう?」
「牙はまっさきに生え変わりますニャン。グズりーの牙は大人の歯でしたニャン」
「それは……まぁ、あの性格が災いしたのう……」
子供には厳しすぎる気がしたが、獣人が本気で人間を殺そうと思えば殺せるだけの力を持っているため、徹底的に心を折るしか無かったのだと、後にナースリスは語る。
子供と思って侮ってはならんのじゃな。
ワシもそれを反省し、今後のエルフ族と獣人族の調理師に料理を教える担当を決めつつも――。
「次は犯罪を起こすような子のおらぬ牧師が来るとええんじゃがな」
思わず呟きつつ、溜息を吐いたのじゃった――。
これにて第二章終わりです。
第三章は下記上がり次第またアップしていきます。
暫くお待ちくださいませm(_ _)m




