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老成転生~少年ボディで箱庭スローライフ~  作者: 寿明結未(ことぶき・あゆみ)
第一章 伝説の箱庭師の箱庭を受け継ぐ

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第33話 リディアの遺した、この箱庭を使って――最後の砦となる

ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告ありがとうございます。

 そこにおったのは、食べる事にも困り、着る者にも困り……住む場所にも困った、本当に後は生きれるかどうかの瀬戸際の者達が集まっておった。


 ワシの隣で息を呑んだマリアンじゃったが、無理もあるまい。

 ワシは歯をグッと噛みしめ堪えたが、その様子は余りにも……。


 

「ここに集まっている者達は、ある程度もう?」

「ああ、悪い連中は外している」

「そうか……」

「第二陣はもう直ぐ出来上がるとは思うが」


 

 マリリンとそう会話をし、ここに集められたのは第一陣と言う訳じゃ。

 本当に困っている相手ならまだしも、性格に難ありのものまで連れて行く義理はない。

 あらぬ不和を持ち込んでも良い事は無いからのう。


 そう思いつつ皆の周辺をアンジュが何食わぬ顔をしながら歩き回り、ワシの元に戻ってきた。

 どうやら全員連れて行って大丈夫らしい。


 生きる事さえも難しいこの土地は一体何なのか……そこまでは分からなかったが、皆には箱庭に入って貰い温かな食事を出す事を約束した。


 

「ここにいる者達には衣食住を保証する。仕事も出来る者はスキルを教えて欲しい! まずは中に入り、ゆっくりと過ごして欲しい所存じゃ!」

「赤ちゃん用のヤギ乳もパン粥もたっぷりあります。喉が渇けば飲み物もあります。まずは食事をして体を洗える場所に案内しますので、皆さまついて来てくださいませ」

「この通り、マリアンについて行って貰ってまずは各自食事をしてくだされ」


 

 そう言うと1人、また1人と立ち上がりワシ等の元へとやってくる。

 マリアンに中に入って貰い、1人ずつ中に入れるとその他の者達も意を決して入って行った。

 全員が入り終わる頃、マリリンは口を開いた。


 

「彼らは国同士の戦争の際、捕虜として捕まって奴隷として働かされていた者達だ」

「⁉」

「余りにも死の淵に居たので、私達レディー・マッスルが買い取り保護した。だがどう足掻いても助けられる命には限りがあった……。老人たちはこれでも救えた方だ。昔はまだ数が多かったが……次第に人生を諦めきって死んでいった」


 

 マリリンの言葉が重い……。

 余程マリリンも辛い思いをしたのじゃろう……。

 助けても助けられない命、それは両手から零れ落ちては……消えていく。


 

「赤子を失った母親もいれば、子を失った夫婦もいる。まだ子が奴隷として働かされている者も少なくはない。その子達を解放しようとしているが、難航している」

「……」

「一度戦争等起これば、負けた方の国に人権などない……。略奪され、命すらも……と言うのは往々にある。戦争等虚しいだけだというのに。それが分からない馬鹿どもが多すぎるんだ」

「そう……じゃな」

「平和なら平和が一番いい。戦争をけしかけていい事などないのだし、世界のバランスを崩してまでしていい事でもない。それを理解しない連中はとても多いのだと、私は嫌でも感じてしまうな」


 

 国同士の争いかもしれん。


 じゃが、国民が願っておるのは平穏、平和であることを理解しておらん馬鹿な者達の所為で、国民が一番に被害を受ける。


 それを理解してないのは……異世界もあちらの世界も一緒か。


 

「我がレディー・マッスルは戦争に参加せよと言われても参加はしない。必ず中立の立場を取る。それでアレコレ言われようとも、我々のする事は決まっている。被害をこうむった国民、民への保護が最も優先すべき事だろう」

「そうじゃな……そうじゃな」

「上の奴らはそこを理解せず好き勝手だ。馬鹿馬鹿しい。平和を崩すのは何時も人間で、被害を受けるのも国民と言う人間で……それが理解出来ない上の奴らは亡べばいいのにな」


 

 マリリンの怒りの覇気を感じつつも、ワシは強く頷いた。

 それからもアンジュの見回りで数名入る事が出来ない者達がいたが、マリアンが戻ってくると第二陣も程なくして中に入って行った。

 箱庭の中が理想郷と言えるような場所ならええが、少なくともリディアは箱庭の中を理想郷のようにして、弱き民を保護していたのじゃと思う。


 その為の努力も怠らなかったじゃろう。


 ワシも受け継し箱庭を、そうでありたいと願う。

 出来るだけ長く生きて……幸せな人々の笑顔で溢れさせたい。


 それが、ワシに出来る唯一の幸せな方法なのやもしれんな。


 

「マリリンや」

「なんだ?」

「失われた家族の絆を取り戻すために、頑張って欲しい。必ずや頼む」

「分かっている。その為の第一段階は……既に完了している」

「と言うと?」

「ここにいる者達を、一旦数を減らしてでも退かせと言われていたのだ。ハヤトのお陰で助かった……礼を言う!」

「そうか……。それならば、次の段階に行けるというものじゃな!」

「そうだな!」

「しかし、うちで引き取れんかった者達はどうする」

「冒険者になる意志があるなら、うちで鍛えよう。プライドをへし折ってな!」


 

 プライドをへし折るか!

 実にマリリンらしい‼


 これなら連れていけなかった連中はビシバシ鍛えられるだろう。

 最悪泣きながら夜逃げする者も現れそうだが、それはそれだ。


 マリリンの所なら、特に問題は無いだろうと判断した。

 何せ世界第一位の冒険者ギルド、きっと言葉通り、手厚くもてなしてくれる事じゃろうな。


 

「第三陣はないのかの?」

「第三陣ともなれば荒くれものの巣だ。そいつらは国に引き渡す」

「引き渡していいのか?」

「奴隷に戻って根性を叩き直すしかない奴らしか残っていない」

「なるほどのう……。その辺り割り切っておるんじゃな?」

「ふふ……。私とって慈善事業で何もかもやる訳ではない」

「それもそうじゃな。では、マリアンに任せきりも気が引ける。ワシは戻るが宜しいか?」

「ああ、新しい者達と引き換えに、また今度離れ離れになっていた奴隷たちを解放して連れてくる……。その時は頼んだぞ」

「うむ!」


 

 こうしてワシはマリアンの待つ箱庭へと戻って行った。

 そこには着るのもやっと、本当に助けを必要としている者達が沢山集められ、必死に涙を零しながらミルク粥やパン粥を食べておった。


 

「おかわりもありますわ。ゆっくりお食べになって? お水は此方に起きますわね」

「ありがてぇ……本当にありがてぇ……っ!」

「赤ちゃんはヤギ乳を飲んでますか?」

「はいっ! はい! 嗚呼、こんなに……本当は飲ませてあげたいのに……母乳が出なくてごめんね……ごめんねっ!」


 

 そう言って泣く親も多かった……。

 ワシは鼻に来るツンとしたものを感じつつも、涙をスッと拭い皆の元へと向かう。


『箱庭は理想郷であれ』と言うリディアの想い。

 必ず、引き継いでみせるぞい!


 

「今までの地獄はもう遠くに過ぎ去った! これからはこの箱庭で、暫し心と体を癒し、それからまだ、新たしい生活を進めていくとええじゃろう。ワシの名はこの箱庭の主でハヤトと申す! 我が婚約者、マリアンと、神獣であるアンジュ、そしてこの箱庭の神であるナースリスと共にこの地を支えているものじゃ! よろしく頼むぞ!」

「困ったことがありましたら何時でも仰ってください。出来るだけの事は致します」


 

 そう伝えると何度も感謝の言葉を口にされ、ワシとマリアンはホッとまずは胸を撫でおろしたのじゃった――。


 腹もくちれば眠くもなろう。

 その前に、30分程休憩して貰い、その間に着る服や着替えなど、この箱庭で生活する為に必要なボディーソープやシャンプー等と言ったものも用意した。


 無論風呂の入り方は、老人たちが手伝ってくれる。

 男女に別れて風呂に入る訳じゃが――。



「ふふふ……風呂なんぞ貴族様が入るものではないのですか⁉」

「ここでは箱庭の連中や、レディー・マッスルの冒険者達が好きにはいっていく。そう気にする事はないぞい」


 

 どうやら風呂イコール貴族と言う考えがとても強いらしく抵抗は凄かったが、先達者である爺様婆様たちに言われて入ると、皆戦々恐々としておった。

 いざ身体を清めて温泉に入ると、それらは直ぐに消え去ったようじゃ。


 よしよし。これで身体の清潔は保たれるじゃろう。

 この温泉はどれだけ汚れても直ぐに綺麗になる不思議な温泉じゃからな。


 

「嗚呼……なんという……贅沢……」

「これが……温泉……」

「のぼせる前に上がるんじゃぞー」


 

 そう声を掛けてワシは外に出ると、レモン水を多めに作って貰うよう指示をし、箱庭を見つめる。


 

「箱庭は理想郷であれ……か」

「私も、お手伝いしますわ」

「マリアン……共に頑張ろう」

「はい!」


 

 リディアの遺した、この箱庭を使って――最後の砦となるのじゃ。

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