表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の御娘(旧)  作者: 海陽
3章 東地方
65/115

3-9 動機が不純

なろうでお友達になってくださった方が、忍を描いてくれました!めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございますっ。


「 」:日本語、『 』:オリネシア語、〈 〉:獣神の声

『……どうかしました?』


満足気にグルグル喉を鳴らして、そのまま安眠に入りそうな仔をじとーっと見る。いや、睨むという方が正しい気がする。その場に座った白狼の獣神は暫く私の腕の仔を見ていたけど、彼がその立派な尾で地面を叩くと腕の中の仔がびくりと震えた。


〈……息子よ。お前ばかりが何故そのような好意を受けるのだ〉


好意ねぇ。好意……はい?!な、何故そんな話になるの?!え、どういうこと?


『え、え?』


〈ククク……ッ〉


目を瞬かせて『クエスチョン』を浮かべる私と隣で笑いを堪える皇雅。ミイドさんを見ればどうすれば良いのか分からない、と雄弁に語る困惑顔になっていて。


『ミイドさんミイドさん。これは一体?』


『いや、すまん。俺にもさっぱりなんだが』


ミイドさんの服裾を軽く引っ張り尋ねれば、表情そのままの返答で。そうしたらずっと堪え笑いをしていた皇雅が会話に入ってくる。


〈狼神はな、シノブが気に入ったのだ。我が子を助けた恩人ゆえに好感はあったが、息子が余りに懐いた姿に好感が嫉妬に変わったのだろう。意訳するなれば〈自分を差し置いて仲良くなるな〉であろうな〉


……は、い?何ですと?

何だその独占欲に塗れた意訳は。私と(獣神様)は今会ったばかりだよ?おかしくない?そんなすぐ嫉妬やら好感やら持つものなのかな。


『えー、と……獣神様?その、好意というのは?』


〈……〉


人程の表情の豊かさはないけれど、それでもむすっと剥れて居るのが分かる雰囲気の白狼の獣神は、ばしばしと尾で地面をはたいている。あれですね、犬猫と同じで尾が感情を現してるっていう。……そんなに下の息子が羨ましいのか。獣神様、あなた父親でしょうが!大人気おとなげない。


〈シノブ、狼神も撫でてやれば良い。さすれば機嫌も直ろう〉


愉しげな皇雅の科白。え、いや待って。獣神様だよ?仮にも神様だよ?!そんな軽々と撫でてやれ、なんて言われても出来るわけないじゃんか!


『や、神様にそう軽々しく触れられないって』


〈我には触れていたではないか〉


『だ、だって契約してるし。家族だし……』


〈我と初見した時、我を綺麗だと撫でてくれたのにか?〉


あ、上げ足を取らないでよ、皇雅!無意識に抱いたままの仔に現実逃避をしてしまう。ああ、もうこのもふもふ感とふわふわが堪んない。


『もふもふ……』


呟きと頬擦りにグルグルと反応を返してくれる仔白狼。それを見て獣神様が唸る。


〈我が契約神ではないが故に、触れてはくれぬのか。馬神の契約者殿〉


『え、いやそうではなくて……』


〈なれば我が契約神となれば撫でてくれるのか?〉


『いや、ですから』


待て!と言いたい。こっちの話を聞いて欲しいんだけど?!というか何故契約の話になるの?


『そもそも契約って1人に1神じゃ?』


〈それは違う、契約者殿。何故なにゆえその様に思ったのかは分からぬが、人間1人に1神のみの契約などの定めはない。右眼でなくとも左眼が有る。両眼がなくとも両手脚が有る。問題は無い〉


いやいや、あるでしょう!奥さんと子供達はどうするのさ?


『……撫でたら契約の話は無し、で良いですか?』


別に皇雅だけで十分だし。それに旅の連れならミイドさんも居るしね。


〈我との契約は嫌なのか……?〉


へちょりと耳と尾が下に下がる。う、そんな寂しげにしなくても良いじゃないのさ。


『私には皇雅が居ますし……それに奥さんと子供はどうするんですか?』


〈問題無い。我はこの森の土地神。離れていようとも契約者殿の許しがあれば瞬きの間にこの森へはいつでも戻ってこれよう。馬神殿から聞いてはいないのか?〉


聞いてない!一言も聞いていませんよ、そんな事。


『皇雅?』


何故言ってくれなかったのかと聞けば、〈特に知らずとも良い事だと判断したゆえ〉と返ってきた。皇雅曰く、自分は独り身だったこともあり特にあの森に戻りたいとも思わないから、だそう。……まあ、それなら仕方がないのかな。


〈馬神殿には先を越されてしまったが、確かに我は契約者殿を気に入っている。どうか旅の同行の赦しを〉


恭しく頭を下げられて、只の人間である私には困惑しか出来ない。隣のミイドさんにアドバイスを、と思ったけど首を振られてしまった。


『……分かりました、契約します。神様に頭下げられて断る事なんて出来ませんし』


〈そうか!では我に名を与えて欲しい。そして契約者殿の真名を我にも告げてくれ〉


やめんか、契約出来るとわかった途端に嬉しそうに尾を振るのは!……はあ。まあ、もう良いや。


『私の名前、真名(本名)は「五十嵐忍」です。獣神様の名は……白貴はくき


〈ハクキ、が我の名か〉


白く貴い獣神。ぱっと思い浮かんだ(狼神)の名前。名前を呟いて何だか嬉しそうだから、まあ気に入ってくれたのかな?

このオリネシアで日本語を理解出来る人間は居ないだろうから、と思って日本語で本名を告げたのは正解だったのかも。


しかしだ。皇雅もだけどさ、白貴も動機が随分と……ねぇ?皇雅は森から出たいが為に契約を持ち掛けて来たし、この白貴だって私に撫でて欲しいってそれだけの理由だし。なんか不純だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ