2-31 約束を果たしました
『ねーちゃ、ん?』
『……マドラヤ?』
皇雅達の所へ戻って来て明けた翌日、様子を見に来たらしいマドラヤが扉口から顔を出した。だけど出したと思った瞬間、大慌てで駆けて行っちゃった。
『おねーちゃん!!』
『なおったの?!』
『あれ、アズナ、ヒビリも』
どうやら2人を連れて来らしく、ばたばたと飛び込んで来たのはアズナとヒビリで。遅れてマドラヤがまた顔を出した。寝具を畳んだところだったから、そのまま扉口の方へ近寄ると。
『お、おねーちゃ……っ』
ぐしゃっとアズナの吃驚顔が歪んで涙が浮かぶ。あ、あー……。
『アズナ、泣かない泣かない。……ヒビリも元気そうだね。咳は治った?』
『なおった!お姉ちゃんしんぱいしてたんだよ。ずっとぼんやりしてて、僕たちの声にも全然気付かないんだもん』
『そっか、心配掛けてごめんね。もう大丈夫。また遊べるよ』
『ほ、ほんと?またお人形みたいにならない?』
ああ、アズナ……そんなうるうるの瞳を向けないで。本当に大丈夫だからさ。ね?信用無いのは覚悟してるけど、いたいけな子供達にそれを言われるのは厳しいです。
『うん、大丈夫。本当だよ?ほら、ぎゅーしてるでしょ?』
『うん、う……うわぁぁんっ』
『?!な、泣かないでアズナ。ほら、大丈夫大丈夫』
ど、どうしよう?!ちょっ、マドラヤ助けてよーっ。
『本当に心配したんだぞ!薫花に来たのに潤水になってもおかしいままだし。……悪い奴追っ払ってくれたのに、そのせいでねーちゃんがおかしくなったって、とーちゃん達が言うんだ。俺たちのせいで……っ』
『あ、いや、大丈夫だからね?う……否定は出来ないけどもう立ち直ったから。ね?』
マドラヤ達のせいではないよ、それは断言しても良い!でもあの戦いがあったから闇に沈んでしまったのも事実で。だからマドラヤまで泣かないでー!
***
『うわーっっ』
『ヒビリ、あっちから回り込んで!』
『まかせてっ』
『次はミルトを捕まえるからね!』
『げっ。や、やめてーっ』
え、何をしてるかって?昼を食べて、以前去る時に約束した通りに子供達と遊んでます。……あれ、前にも同じ展開があったような。まあ良いや。
今回は新しくケイドロを伝授。鬼は私とヒビリとアズナ。その他の子供達は皆逃げる側。で、牢屋を決めて見張り番はアズナに一任しました。現在は年長組から追い掛けてる最中なのです。足速いからね、あの子達。
『シノブさん、俺も……』
駄目だからね、ミイドさん。大人が混じったらあっという間に決着着いちゃうじゃんか。なので彼は除外しました。牢名主に任命中です。……そ、そんな寂しそうな顔をしても駄目だから!
〈クク……ッ〉
「そこ!笑わない!」
〈シノブもまだまだ子供っぽいのだな〉
「どうせまだ未成年ですよっ」
まああと1年余りで成人するけどさ。オリネシアの基準では。やいのやいのと騒ぎつつ遊び倒し、時折雨で中断することがあっても合間の晴れにまた遊ぶ。そうしてシダ村で潤水を過ごし、村の大人達には救ってくれた感謝、子供達には行くなとの惜しみを受けながらもシダ村を後にした。
3人に増えた旅、楽しくなると良いな。
ミルトはマドラヤと同い年の年上組の男の子です。




