2-11 シロムの街
「 」:日本語、『 』:オリネシア語、〈 〉:獣神の声
「はー。着いたね」
シダ村から3日。とうとう着きました、次の関所シロムに。というか大きいなー。
〈この規模なれば、旅人としての通過札も手に入れられるやもしれぬな〉
「そうなんだ。そう言えばネイアじゃ通過札は?って言われたもんね」
常歩で関所の門へと近付く。今度は最初から皇雅には深紅の瞳で居てもらうことにした。また槍とか刀向けられたく無いし。
『何や……、じ、獣神様?!』
刀の柄に手を伸ばした兵士は、何奴と言おうとした瞬間にその構えを解いて姿勢を正した。
〈シロムへ入らせて貰うが良いか〉
『は、はっ!しかしその背に居るのは……?』
〈我が契約者だが何か〉
『!!も、申し訳ありません!』
瞬時に金瞳に変わった皇雅に、兵士が震えた。取り敢えず納得はしてもらえたみたいだから、皇雅には瞳を黒く変えて貰う。そして私は皇雅の背からとんと地面に降りた。
『あの、私達は目立ちたく無いんです。なので私達の事、特に獣神の事は上司や街の人達に漏らさないで頂けませんか?……ネイアでは守備隊長がたまたま訪れた文官に勝手に報告してしまい騒ぎになりましたので』
あ、あの嫌な文官のこと思い出してしまった……早く忘れたいのに。
『う、承りました。しかし……それでは』
困惑したように言葉を継ぐ彼ににっこりと笑い、言葉を引っ込めさせる。何も考えなくて良いんだよって意味を込めて。
『あ、そうだ。このシロムで、旅人の通過札って貰える所はありますか?』
門を潜ろうとして、思い出した通過札の事を振り返って聞けば、わたわたと教えてくれた。何でそんなに恐縮するのさ、私はただの小娘なんだよ?別に凄い役職に就いてるお偉方じゃないのになぁ。
〈シノブ、通過札の金はあるのか?〉
「うん、大奥様に貰った分があるよ。全く使って無いからこれで足りると良いんだけどな」
まあ……足りなかったその時はその時だよね。足りたら日持ちのする食料でも買わないと。
『……イラヌ村の奥から?イラヌ村より北に街村なんてあったか……まあ良い。それで?連れはどこに居る?』
『外に居ます』
訝しげだったけど、どうやら通過札を発行してもらえるらしい。ああ良かった。役所っぽい建物で、男性にそう問われて外を見やる。残念ながら皇雅は入れなかったんだ、入り口が狭過ぎて。
『そうか外に、……?!まさかあの馬、か?』
『はい。皇雅と言う名です。私の家族で相棒ですが』
入り口から顔を覗かせる皇雅に気付いた彼は、その巨体に驚愕し、そして私を畏怖の混じる眼で見た。
『まさか……じ、獣神様?何故お前があの方と居るのだ?何故図々しくも相棒などと抜かすのだっ』
『それはまあ、契約者ですし』
『は?!』
『皇雅、契印出して貰っても良い?』
〈致し方ない。その者がそれで納得するのであればな〉
そうして出した金の瞳に慄いた彼は、無料で発行してくれた。お金払うって言ったのに断固として受け取ってはくれなかったのだ。彼曰く、『獣神様と契約者からそんな事をしては罰が当たる』らしい。おかげで大奥様に貰ったお金は食料と日用品に回すことが出来た。有り難や有り難や。
で、だ。
何故私はこの人達に囲まれてるのでしょうか。
『……誰ですか?』
『ふん。おめえみてーなガキに名乗るようなもんは無えよ。さっさとそのダルタを寄越しな!』
おじさん達は全員で3人。このシロムで1番の大通りで、堂々とそんな事を吐かした彼ら。街の人達はそんな3人と私達を遠巻きに見つめるだけで。……要はこの人達、追い剥ぎか脅迫の類いの悪人側の人ってことだ。ネイアと言い、何でまた変な人に絡まれるのかな私。はぁ。
げんなりした私の顔にぎょっとした次の瞬間、怒りに顔を赤くした彼らは、『このガキがぁあっ』と襲って来たのだった。
オリネシアの民、男性が着る服です。
相変わらずへったくそな、しかも顔なしのイラストで申し訳ありません……orz
ああ、画力が欲しい!どなたか分けてぇーっ。




