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6,第300階層、ラスボスです。

 


 逃げていく。

 フロアボスが逃げていく。


 第299階層が誇るフロアボス、海獣王(エビガ―)が逃げていく。


 第299階層は全フロアが海水に沈んでいるという特殊設計。

 すなわちダンジョン内の海。


 そこにいる巨大エビ型モンスターこそが、海獣王(エビガ―)

 その大きさはシロナガスクジラ並み。しかも甲羅の硬さは、オリハルコン並みの防御力。

 さらに水系の上位魔法を多数取得している、エビのくせに。


 それだけではない。

 海獣王(エビガ―)の周囲には子供たちがいて、これ一体でもイルカサイズ。

 しかもママ海獣王(エビガ―)と違って、子供海獣王(エビガ―)は《死雷爆(デス・トービード―)》というスキルを有している。

 まさしく魚雷のごとく冒険者へ突貫し、大爆発を起こすのだ。


 この厄介な子供海獣王(エビガ―)は、ママ海獣王(エビガ―)を撃破しない限り、無尽蔵に現れる。うーん、なんてことだ。


 さらにさらに(まだあるよー)。

 海獣王(エビガ―)はHPが半分以下になると、暴走モードに入る。するとSTR()ATK(攻撃力)AGI(素早さ)が全て3倍になるのだ。


 なんて強いんだ、海獣王(エビガ―)よ!


 それなのに──逃げている。

 ちょっとオレに甲羅を引きはがされ、子供海獣王(エビガ―)を1体食べられただけで。


 食べたのは仕方ない。腹が減っていたときにエビが来ては。寿司ネタでもエビは好きなほうだし。

 ついでに邪魔しにきたママ 海獣王(エビガ―)に一撃を食らわせたら、うっかり甲羅を剥がしてしまったわけだが。

 それだけで逃げるって、どういうことだ? やる気あるのか?


「まちやがれぇぇぇ! オレを殺す気あるのかぁぁぁ!」


 ママ海獣王(エビガ―)が水中深く潜って逃げる。逃がすか! 潜水スキルを発動し、オレも潜っていく。


「待ちやがれぇぇ!」


 ママ海獣王(エビガ―)の尻尾を掴み、檄を飛ばすつもりで火炎魔法《地獄劫火ヘル・フレイム》を発動。


 とたん海獣王(エビガ―)はいい感じに燃え上がって、死んでしまった。


「そんなぁ、海獣王(エビガ―)ぁぁぁぁぁぁ!」


〔うわぁ、こんなに強いとさすがに引きますねぇ。海獣王(エビガ―)って、アメリカ軍の攻撃型原子力潜水艦でさえ歯が立たないレベルだったんですよ~。それを一人の人間でフルボッコとか。やっちゃいましたねぇ〕


〔誰のせいだと思ってやがる! イチゴ、もう頼むからステータスを元に戻してくれ〕


〔できませんよー。一度確定されたステータスは、たとえダンジョン管理者の権限を持っても書き換えられませーん〕


〔こいつ……殺したい〕


〔タケト様、心の声が脳内会話にだだ漏れですよー〕


 第299階層の海水が引いていって、次への入り口が現れた。


〔ついにここまで来ましたね、タケト様!〕


 と、イチゴがテンションのギアをさらに一段階上げてきた。


〔なんだって?〕


海獣王(エビガ―)は、この≪樹海ダンジョン≫で真の意味での中ボスだったのですよ。海獣王(エビガ―)を倒した先に待つのは、ただ1体のみです〕


〔まさか──〕


〔はい。あとはラスボスの待つ最下層、第300階層のみです〕


〔……ラスボス。強いのか?〕


〔ラスボスの強さは異次元ですよ~。これまで倒してきた25体のフロアボスがまとめてかかっても、傷ひとつ負わせられないでしょう〕


〔そこまで強いのか!〕


 だとしたら期待してもいいんじゃないか?

 このオレを殺せるのは、やはりS級ダンジョンのラスボスだけじゃぁないのか?


 オレは希望とともに、第300階層へと降りた。


 そこには髑髏でできた玉座があり、人型モンスターが腰かけていた。

 青い肌をした、5メートルはある巨躯。魔導士の杖を持ち、漆黒の鎧で身を包んでいる。


〔イチゴ──あれこそがラスボスなのか〕


〔そうです。≪樹海ダンジョン≫ラスボスのドルゾンです。さらに≪樹海ダンジョン≫の管理者にして、わたしの上司です〕


〔……まった。いまなんだって?〕


〔≪樹海ダンジョン≫ラスボスのドルゾンです〕


〔そのあと〕


〔≪樹海ダンジョン≫の管理者でもあります〕


〔そのあと〕


〔わたしの上司です〕


〔……お前の尻を触ったという、セクハラ上司?〕


〔はい〕


〔………………イチゴぉ、さては全てはこのためだったのかぁ! オレにセクハラ上司を殺させるため、カンスト・ステータスにしやがったなぁぁ!〕


〔タケト様、ほら集中してください。ラスボスが喋りますよ!〕


 ドルゾンが地の底から響くような声で言う。


「よくぞここまで来たな、人間よ。だが貴様の快進撃もここまでよ。我が暗黒魔法に屈するがよい!」


 ドルゾンが杖の先端をオレに向ける。


「食らうがよい、我が誇る即死チート攻撃。殲滅魔法《暗黒の極地(ダーク・マター)》を!」


 即死チートだと!

 ならばオレのカンスト・ステータスも意味を成さない。食らえば死ぬだけだ。


 今こそ、オレは求めていたものを手に入れる。安寧とした死が。


 杖の先端から暗黒光線が発射され、オレの腹部に当たった。

 凄まじい圧力を感じる。これはマジで来たぞ。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


 やがて《暗黒の極地(ダーク・マター)》が終わり、暗黒光線が消える。


「腹部に穴が開いたのだろうか?」


 見ると暗黒光線が当たっていた腹部では、服が焼け落ちていた。

 ぽっかりのぞいた腹部に、ひとつ打ち身ができている。


 打ち身……。


 即死チート魔法を食らって、打ち身……。


 え、それだけなの?


〔タケト様に、45のダメージでーす♪ ちなみにタケト様のHPは∞でーす♪〕



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