44,究極のところまで行ったので言おう、『何もかも面倒くさくなったので、引きこもろー』と。
傀儡死に向かって、《絶命槍》を投擲。
ところが接続糸でつながった村人が引っ張られてきて、代りに串刺しとなった。
〔ほう。操っている人間を身代わりにするとは。傀儡死、ゲスなところが気にいったぞ。やはりラスボスはこうじゃないとな〕
〔タケト様! あんなゲスモンスター、とっとと殺しましょ。それで村人たちに英雄あつかいされて、タダ飯にありつきましょうよ!〕
英雄作戦か。いいだろう。
そこで高く跳躍してからの踵落としで、傀儡死を粉みじんにした。
残骸とともに降下して、村中央の教会の上に着地。
自由になった村人たちからの大歓声──からのタダ飯。
13日ぶりの食事に舌鼓を打ちながら、現在の世界情勢について聞いてみる。
村人たちによると、世界各国のダンジョンからモンスターがあふれ出てきているらしい。
ぬるいビールを飲みながら、呆れた。
〔やれやれ。≪軍艦島ダンジョン≫での現象が、全ダンジョンで発生しているのか〕
〔そのようですね~〕
〔ですね~じゃないぞ、イチゴ。お前、案内係としてそれでいいのか。もっと情報通でなくてどうするんだ〕
〔元ですからね、元案内係です。≪樹海ダンジョン≫を出たときから、イチゴはタケト様の専属ですよ~。おかげで『姉妹』たちからは切り離されていて、情報更新もないわけですがね〕
〔『姉妹』たち?〕
〔ほかの案内係のことですよ〕
〔ああ〕
〔ただ、現状の推測はできますよ。鬼の王のときは突然変異でしたが、全世界規模となるとそれは考えられません。とすれば、これはもう【埋もれた兵器】が使われたのでしょうねぇ〕
〔モンスターがダンジョンから出れる兵器か?〕
〔というより、ダンジョン内からの強制転送ですね。傀儡死がココにいたのが、その証拠ですよ。サハラ砂漠を共有しているとはいえ、リビアは遠いですからね。そこのラスボスが、なぜこの村にいたのか。強制転送のあおりです〕
〔ふーん〕
〔さ、どうされますかタケト様? 強制転送を行った【埋もれた兵器】を破壊すれば、モンスターたちもダンジョン内へ戻るかもしれませんよ。また世界を救っちゃいます?〕
おれは熟慮黙考した。
この先、おれは何になりたいのか。
ステータス∞の冒険者として、どう生きていくのが正解なのか。
〔よし、決めた〕
〔はい、タケト様っ!〕
〔おれは世捨て人になるぞ!〕
〔……はい?〕
〔いま全てのダンジョンは空っぽなんだろ。じゃ適当なダンジョンを見つけて、そこに引きこもる〕
〔……あの、ストリアとかどうされるのです? タケト様を変態呼ばわりした、あのストリアですよ? 【五魔王族】の1柱で、≪マンハッタン・ダンジョン≫ラスボスの〕
〔許す〕
〔え! タケト様が──許す? 天変地異の前触れですかぁぁぁぁ!〕
〔いつまでも憎しみに駆られていてはダメだ。つーか、世捨て人になるんだから面倒だろ、マンハッタンまで行くのとか。『怠いことはしないで生きていけばいいじゃない人間だもの』byたけと〕
〔……マジですか、タケト様、マジなんですかぁぁぁ?〕
〔マジだ〕
〔ま、それもいいかもしれないですね~〕
どうせ引きこもるなら居心地が良いほうがいい。たいていの家具は《アイテム創造》できるが、ではネット環境とかはどうだろう。
〔ダンジョンは外部と通信できないんだよな。だがダンジョン製造のスマホなら可能なのか?〕
〔可能ですよ。ですのでタケト様もダンジョン製造スマホとか、さらにいえばダンジョン製造スマートテレビをゲットしたら、かなり快適な引きこもり生活ができるかと〕
〔《アイテム創造》でいけるか?〕
〔無理ですね~。ダンジョン製造品は冒険者には創造できないのが、ダンジョンルールです〕
またダンジョンルールか。どこの誰が決めたのか知らないが──。瞬間移動スキルのときは気合で突破できたが、結局、とんでもない頭痛に苦しむことになったしな。
〔じゃぁ、ダンジョン製品はどこで手に入るんだ?〕
〔それが案内係には明かされていないんですよね~。腹立ちません? ラスボスしか知りえない情報なんですよ〕
〔ならテキトーなラスボスを拉致って、問い詰めるか〕
その後もぬるいビールを飲んで時間を潰していたら、冒険者が店内に駆けこんできた。Aランクといったところか。
真っすぐおれのほうに来た。
「あんたか、傀儡死を倒したという冒険者は?」
「まぁね」
「頼む手を貸してくれ!」
ジョッキ越しに、間抜けな冒険者を見返す。
「断る。おれは今、ダラダラしているんだ。見てわかれ」
「そう言わず頼むよ! 敵はA級ダンジョンのラスボスなんだ! 俺たちじゃ手に負えない!」
「ラスボス? それを先に言え」
拉致って拷問コースだな。
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