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15,『オレを殺せるのは、人類を憎み続けたお前だけだ!』という期待値。

 


 そして、鬼の王(オーガ・キング)が現れた。


 鬼の王(オーガ・キング)はアーダとは違い、まさしくオーガという姿。

 10メートルを超える巨躯、そして王冠を戴いている。両の拳からは蒸気が噴き出していた。


 オレは、鬼の王(オーガ・キング)の前へと飛び降りる。


 感じるぞ、鬼の王(オーガ・キング)。お前から発せられる、『ただ者ではない』感が。


「キサマぁぁ我が軍をよくもぉぉぉ。虫けらのごとき人間がぁぁぁ」


 ちょっと語彙力はなさそうだけども。


「こい、鬼の王(オーガ・キング)よ! このオレに、人類への憎しみをぶつけてみろ!」


 憎悪こそが、驚異的な進化をさせる原動力。

 ならば、いまの鬼の王(オーガ・キング)は【五魔王族】をも超えたかもしれん。


 オレを殺せるのは、人類を憎み続けたお前だけだ!


〔あの~、タケト様?〕


〔なんだイチゴ、今いいところだから〕


〔一つだけお尋ねしたいのですがぁ~〕


〔だから、今いいところなんだって。オレがついにられるときが来たかもしれないんだから〕


 鬼の王(オーガ・キング)の両拳は、いまや超超高温。まるで二つの小さな太陽のごとく。防御力に自信のある冒険者でも、拳に近づくだけで溶けて死んでしまうだろう。


「人間よ、消し飛ぶがいい! くらえぇぇぇ、《熱鶯殴塵(クォーク・スープ)》!」


〔タケト様ぁ~〕


〔あぁ?〕


〔《反撃カウンター》、ちゃんと解除してあるんですか?〕


〔……あ、しまった〕


熱鶯殴塵(クォーク・スープ)》の拳が、オレに接触した刹那。

反撃カウンター》が自動で発動。


 ぱーん!

 と、鬼の王(オーガ・キング)が破裂した。

 周囲へと肉片と血をまき散らす。

 さらに肉体の破片は激しく燃えだし、最後には跡形もなく溶けていった。


 アーダが複雑な表情でそれを見届ける。


「我が王よ──さらばだ」


「そんなぁ、鬼の王(オーガ・キング)ぅぅ! ……しかし、《反撃カウンター》ごときで死ぬような奴じゃ、どうせオレは殺せなかったか」


〔突然変異体といっても、しょせん鬼の王(オーガ・キング)など【四戮族】最弱ですからねぇ〕


 コイツ、とりあえず『奴は四天王の中でも最弱……』的なこと言っておけば万事OKと思ってやがるな。


「さて、帰るかぁ」


 あぁ、なんかメンタル的に疲れた。

 鬼の王(オーガ・キング)は期待外れだった挙句、弟子まで取るハメになったし。


≪転送ポイント≫へ向かうと、子犬的なノリでアーダがついて来た。


「ダンジョンの外に行くのは初めてだ。師匠、手を握ってもらってもいいだろうか?」


「断る」


 ★★★


 約束の日が来た。

 オレが70億円を受け取る日である。


追跡チェイサー》によると、東間は北海道の札幌市にいた。


〔ダイヤ転売のため北海道まで行くとは、仕事熱心な奴で感心した〕


〔いえ、ただ逃げただけなんじゃないですか〕


飛翔フライング》+《不可視インビジブル》の便利なスキルセットで向かう。


 目指すは、札幌市にある日本三大歓楽街のひとつススキノ。

 とある雑居ビル内に、東間はいる。


 雑居ビルに入ると、拳にナックルダスターをはめた男が立ちふさがった。


「てめぇが東間の言っていたおっさんだな? いますぐ出てかねぇとブッ殺すぞ!」


「……おい、またこのパターンか」


 メンドーなので、ナックルダスターごと男の拳を握りつぶしておく。


「ぎゃぁぁ、痛ぇぇ、やめでぇぇぇ!」


〔イチゴ。オレはいま、東間くんの学習能力のなさにビビッている〕


〔頭の悪さに底はないのですねぇ〕


〔だがね。オレは反省しているんだ。10日前の廃工場では、人を殺しすぎたと。やはり最低限の人死にで済ませるのが、親切心だと思う〕


〔タケト様の、善なる心に感動です!〕


 そこで泣きじゃくっているナックルダスターの男に、犠牲になってもらうことにした。

ブレイド》で首をスパッとやる。


 1階奥の部屋に入ると、8人の武装した男がいた。

 オレはさっきの男の生首を、贈り物のように差し出して、営業スマイル。


「いいか~。いますぐに武器を捨てろ~。そうしないと、コイツのように首を刎ねるぞ~」


 8人とも恐怖に引きつりながら武器を捨てる。その中の一人が必死になって言う。


「ま、まってくれっ! 俺たちは、その、東間に頼まれただけなんだっ!」


「そうか。とりあえず、コレ、持ってろ」


 オレが生首を差し出すと、「うわぁぁぁ!」と叫んで逃げようとした。この流れで失礼だろ。

 ので、《火弾ファイヤ・ボール》をそいつに投げて、燃やした。


 他の連中が大袈裟に泣き出したので、これは集団パニックかなと分析してみる。


「誰か、東間くんのもとに案内してくれ。頼むよ」


★★★


 東間くんは地下室にいた。

 俗にいう胎児の姿勢で転がっている。


「東間くん、具合でも悪いのか?」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 せっかく親切に聞いてやったのに、悪魔でも来たみたいに悲鳴を上げる。

 マナーを知らない奴だな。


「東間くん。転売には失敗したようだな。で、オレのダイヤはどこにある?」


「すいません殺さないでください許してください殺さないでください死にたくないです」


「分かった、分かった。いいから結論を述べろ。オレのダイヤはいまどこにあるんだ?」


「しゃ、しゃしゃ、上海です」


「上海だって? なんでオレのダイヤが海を渡って、中国にあるんだ。一体どこの誰が持っている?」


「し、ししししし、〈死亡塔しぼうとう〉で、で、す」


〈死亡塔〉。たまにニュースで聞く名称だ。

 上海を拠点とするチャイニーズ・マフィアのこと。アジア圏の裏社会に強い影響力を持っているとか。


〔オレのダイヤを、犯罪組織が持っているだと? なんか腹が立ってきた〕


〔どうするのです、タケト様?〕


〔上海へ行く。めんどくさいが〕


〔これは大量の血が流れそうですねぇ。ワクワク〕



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