14,悲報、弟子ができる。
アーダのスピードに合わせてやりながら、第50階層まで降りる。
アーダも遅くはあるが、冒険者軍の指揮官よりは速い。ほら、《疾風迅雷》のアレよりは。
さて。
第50階層は迷路構造ではなく、大きな空間がどーんとあるだけ。
またスタート地点が高い位置にあるため、階層の全体を見渡せた。
今やそこに、モンスターの大軍が整列していた。1万体はいるんじゃないか? 半数がオーガなのは、ここのラスボスがオーガの親玉だからか。
最後にオレが見つけたのは、≪転送ポイント≫だ。しかも通常の50倍くらいに巨大化している。
モンスター軍が行進する先が、この巨大≪転送ポイント≫なのだ
〔イチゴ。≪転送ポイント≫を使っても、モンスターはステータス数値が維持されるのか?〕
〔そもそも、モンスターは≪転送ポイント≫を使えませんよ。ですが、どうやらここのモンスターは例外のようですね。≪転送ポイント≫で転送される気満々ですもの〕
〔それも突然変異ということか。しかも、≪転送ポイント≫を巨大なものに改造してあるようだ〕
〔巨大≪転送ポイント≫でしたら、大量のモンスターを一気に送り出せますからねぇ〕
アーダが焦る。
「大変だ! 主力軍が地上へ出てしまう!」
「だな」
「冒険者よ。我々は間に合わなかった」
「とりあえすざ、オレのことはタケトと呼んでくれ。冒険者と肩書きで言われるのも何なんで」
「タケトよ、もうおしまいだ。戦争は避けられない」
「う~ん」
正直、モンスターの軍勢を止めてやる義理はない。
なんでオレが、冒険者組合やら自衛隊やらのかわりに働かなきゃならないのか。
とはいえ、だ。
ここでモンスター軍勢を殲滅しておけば、鬼の王の憎悪はパワーアップするだろう。すなわち、このオレを殺せる可能性がグンと高まる。
「よし、ならやってやろうか」
「タケト?」
「敵がモンスターならば手加減はいらないな。冒険者軍を相手にしたときのように、優しくある必要がない」
〔タケト様の『優しさ』の概念が謎です〕
オレは、反則的なスキルを発動。
《皆殺し》。
刹那、何百万もの光弾が、全空間から一斉発射。
一万近くのモンスターどもを、どんどん蜂の巣にしていく。
まだまだ終わらない。皆殺しになるまで、光弾は四方八方から猛射される。
じゃんじゃん撃ちまくり──
終わったときには、モンスターの死体の山という山。
数秒後、全ての死体が光り輝いて消滅。あとには大量のドロップアイテムが転がっていた。
せっかくなので、アイテムも回収しておくか。
《回収》を使って、見渡す限りのアイテムをすべて《収納》に保管した。
アーダは腰を抜かしている。
「こ、これは──人間のやれることではない……貴様は、さては魔神だったのか!」
「いえ人間です。というか、ただのおっさんです。ところで鬼の王の姿がないんだが」
まさか今の《皆殺し》で死んでないだろうな?
いや、さすがにそこまで雑魚ではないはずだ。オレはお前を信じているぜ、鬼の王よ。
アーダは立ち上がったと思ったら、今度は跪いてきた。
「……なんだ?」
「魔神タケトよ──!」
「だから魔神じゃないと言ってるだろ。お前、人の話を聞かないよな? モンスターでもコミュ力は磨いたほうがいいぞ」
「私をどうか弟子に取ってほしい」
「断る」
「タケト、いや師匠。師匠のもとで、私は学びたいのだ」
「断る。勝手に師匠と呼ぶな」
「師匠よ。どうか私を鍛え、さらなる力を与えてくれ」
「断る。そして人の話を聞け」
〔タケト様、タケト様、雑用係はいてもいいんじゃないですか? この美人さん、なにかと使えそうですよ。戦闘力もA級ダンジョンのフロアボスなら申し分ないですし〕
〔お前の助言は当てにならない〕
〔わたし、あることを思い出しましてね。【五魔王族】№2は、≪サハラ・ダンジョン≫のラスボスと言われています。そしてアーダさんは、そこのラスボスの許嫁なのですよ〕
〔だから?〕
〔分からないんですかぁ~? 許嫁をタケト様に寝取られたと知ったらぁ、≪サハラ≫のラスボス、マジ切れなんてもんじゃないですよ~。それこそタケト様を八つ裂きにするため、限界突破しますよ~〕
〔寝取る気ないんだが〕
〔寝取ったフリでいいんですっ!〕
オレは溜息をついた。
「分かった、アーダ。お前を弟子にしてやる」
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