11,≪軍艦島ダンジョン≫の鬼。
●●≪軍艦島ダンジョン≫事件の報告書より抜粋●●
6月24日、端島(軍艦島)にて。
≪軍艦島ダンジョン≫攻略に入ろうとしたAランクパーティが、ダンジョン『外側』に4体のオーガを発見。
≪軍艦島ダンジョン≫より現れたと推定される。
ダンジョン『外側』でモンスターが発見された事例は、これまでにない。
4体のオーガは、Aランクパーティが駆除。彼らの通報により、当局も事実を認識。4体のオーガは斥候の疑いが強いとされた。
6月25日。
自衛隊との共同作戦により、≪軍艦島ダンジョン≫の『封鎖』を試みる。
しかしながら作戦は失敗。
ダンジョン側から想定を超える攻撃が行われたのが原因であり、生存者の目撃報告によれば、『王冠を戴いたオーガ』が現れたという。
事実ならば、それは≪軍艦島ダンジョン≫ラスボス・鬼の王と思われる。
すなわち、A級ダンジョンのラスボスが『外側』へ出現したということだ。
★★★
70億円が入るまで、当分の軍資金を稼ぐ。
大食いチャレンジで。
というのも、《大食漢》というスキルを使うといくらでも食べられることが判明したからだ。胃袋が宇宙になったがごとく。
「タダ飯を食いながら賞金ももらえるとは、ラクなことで何よりだ」
食後のアイス・コーヒーを飲んでいたら、隣の席の連中が何やら騒ぎ出した。
どうやらスマホのニュース・アプリを見ているらしいが。
聞こえてきた会話によると、
「≪軍艦島≫の『外側』にモンスターが出てきたらしいぞ」
「んなわけがあるか。どーせフェイクニュースだろ」
「いや、軍艦島が立ち入り禁止になったのは本当らしい」
「もともと上陸するには許可が必要だろうが」
「だから全ての上陸許可が取り消されたんだってよ。自衛隊が派遣されたって話も聞くぞ」
「おい、見てみろ。こっちのスレによると、鬼の王まで『外側』に出てきたってよ」
「やべー。A級ダンジョンのラスボスとか、自衛隊でも勝てねぇんじゃね?」
「だからよお前ら、ネットの書き込みなんか信じんじゃねぇよ」
〔どう思う、イチゴ。モンスターはダンジョンの『外側』にも出られるのか?〕
〔出られませんよ。【五魔王族】でさえも『外側』には出られないんですからねぇ〕
〔ならデマだな〕
〔または──≪軍艦島ダンジョン≫で突然変異が起きたのかもしれませんねぇ〕
〔突然変異だって? ≪軍艦島ダンジョン≫のモンスター全部がか?〕
〔いいえ。ダンジョンのモンスターに影響を与えるのは、そこのラスボスですからね。この場合、仮に突然変異だとするなら鬼の王でしょう〕
〔つまり、ラスボスの鬼の王に突然変異が起きて、『外側』に出られるようになった。その影響で、鬼の王系列のモンスターも出られちゃったよ、と?〕
〔そうです、そうです〕
突然変異で連想するのは、常識を超えて強くなった個体だ。
もしかすると、オレを殺せる逸材かもしれん。
〔行くか、軍艦島へ〕
★★★
その夜。
軍艦島は戦時中のような大騒ぎだった。
そこら中にAランク冒険者やら自衛隊員やらがいる。
オレは《不可視》を使いながら、散策気分で歩いていた。
〔この騒ぎだと、フェイクニュースではなかったようだ。ただモンスターの姿はないな〕
試しに島全域を《探査》で探ってみる。やはりモンスターは一体もいない。
〔冒険者たちが全て狩りつくしたのか? 鬼の王含めて〕
〔それはないですね。というのも、鬼の王は【四戮族】の1体だからです。【四戮族】とは、かの【五魔王族】がいなければS級ダンジョンを任されたであろう、そんな4体の魔物ですよ。めちゃくちゃ強いのが伝わってきますねぇ?〕
〔悪いが、【五魔王族】のドルゾンが雑魚すぎたので、ぜんぜんピンとこない〕
〔とにかーく、この島にいる面子じゃあ、鬼の王は倒せんですよ。倒せたとしても、とんでもない惨状になっているはずです〕
〔すると、もう軍艦島にはいないとか?〕
〔いえ、おそらくいったんダンジョン内に戻ったのでしょう。鬼の王の目的が『外側』への侵攻なら、先日のは威力偵察だったのかもですよ〕
〔なら、いまごろは侵攻の最終準備でもしているのかね。まぁダンジョン内にいてくれるなら、話が早くて済む。こっちから行ってやろう。オレを殺せるなら良し。そうでないなら──〕
〔フルボッコですね? ボコりましょ♪ ボコりましょ♪〕
期待に応えてくれよな、鬼の王。
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