表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/188

9,商談に行く。

 



 いまは何でもネットで売買できる時代だ。


 ただし違法な品を売りたきゃ、まずはダークウェブというのに入らなきゃならないらしい。

 ネットに書かれたことを読むと、だ。


「ダークウェブとは、通常の方法ではアクセスできないようになっている。そこでは非合法な情報やマルウェア、麻薬や銃器などが取引されているよ──と〕


〔ネットの地下世界。なんかダンジョンと似てますねぇ〕


〔おいおい。ダークウェブって、ググれないらしいぞ。専用ツールが必要なんだとさ〕


〔ミレニアル世代のおじさんには厳しいですねぇ〕


〔お前、そんな言葉も知ってるのか〕


 しかし、おじさんはやり遂げた。

 悪戦苦闘すること2時間。やっとダークウェブに入り、とあるサイトで『1112カラットのダイヤ売ります。お値段相談』という注文を出すことに成功。


〔買い叩かれないようにしてくださいよ。70億円はする代物ですよ〕


〔違法な手段で売るわけだしなぁ。10億円もらえたら幸運なほうじゃないか〕


 しばらくして、捨て垢にメールが入った。

 メール内容を要約すると──『品物を確かめたいから直に会いたい。指定の住所に来い』。


〔仕事が早くて助かるなぁ〕


 夕飯にマクドナルドでハンバーガーを買ってから、指定の場所へ向かう。

 そこは歓楽街の、かつては暴力団事務所が点在していたようなところだった。


〔なんか治安が悪いところに呼ばれましたね〕


〔そりゃあ、違法な品を取引するわけだからな。逆に信ぴょう性が増すというものだ〕


〔あ、誰か来ましたよ〕


 金髪の若者が4人、肩で風を切るようにして歩いてきた。


〔タケト様、10億円もっている連中には見えません〕


〔当たり前だろ。こういうのはまず、下っ端が来るものなんだ。で、カネ持ちのボスのところへ連れて行ってくれる。そこからが商談スタートだ。とりあえず愛想よくしておこう〕


「やぁ、どうも」


 愛想よく手を振って合図した。

 若者のリーダー格がチッと舌打ちしてから、オレの胸倉をつかむ。


「てめぇが、訳のわかんねぇ注文出してきた野郎か。ダイヤなんか本当にあんのかよ?」


「ああ、これだ。見てくれ」


 事前に《収納ストレージ》から出しておいたダイヤを、ポケットから取り出す。

 とたん若者たちの目つきが変わった。


 リーダー格がダイヤを奪うように取り、他の3人にも見せてはしゃぎ出す。


「おい、これホンモンかよ?」

「マジかぁ? こんなデケぇダイヤみたことねぇぜ」

「先輩。どーすんですか、これ? 俺たちでもらっちゃいます?」

「バカか。んなことしたら東間あずまさんにブッ殺されるだろうが」

「あの人、このまえ暴力団と喧嘩して、8人も病院送りにしたらしいぜ」


 蚊帳の外に置かれてしまった。


「なぁ商談を進めたいんだがね。その東間さんというのと話せばいいのか?」


「なんだ、てめぇ。まだいたのか」


「まぁ。ダイヤの売り主だしな」


 すると4人の若者はなぜか笑い出した。


「このおっさん、マジかよ?」

「先輩、俺がやっちゃっていいっすか? サンドバッグにしちまっていいっすか?」

「てめぇ、ボクサー崩れだろ。殺しちまうんじゃねぇか?」

「そしたら、また海に沈めときゃいいだろ。この前、まわした女みてぇによ」

「あれかぁ。トオル、てめぇがクスリの量まちがえて打ちすぎたせいだろ。もったいねぇことしたよなぁ。いい女だったのに」

「先輩、どうなんすか? あのおっさん、ボコってきていいんすか?」

「とっととやってこい」


〔タケト様。この方たち、頭が悪いようですが?〕


〔頭が悪いフリをして、売主のオレを試しているのかもしれない。頭脳戦はすでに始まっているのかもしれない〕


 坊主頭で顔中にピアスをつけた若者が、こちらに歩いてきた。


「おら、おっさん覚悟しやがれ!」


「はん?」


 ピアス若者が、オレの顔面を殴った。

 とたん若者の拳がぐちゃりと潰れる。


「うぎゃぁぁあ!」


「あ、しまった。自動タイプの《反撃カウンター》が発動してしまった。すまない。大丈夫か?」


「てめぇぇぇぇ、ふざけやがってぇぇぇ! 畜生、畜生!」


 ピアス若者が無事なほうの拳で、またオレを殴ろうとする。


「まて、まて。まだ《反撃カウンター》を解除してな」


 で、無事だったほうの拳も潰れて、肉の塊になった。


「うぎゃぁぁぁぁああぁ!」


「だから待てと言ったのに」


 ピアス若者が怒鳴る。


「ふざけんじゃねぇぞぉぉぉ! このクソ野郎ぉぉぉ!」


「いい加減にしろ」


 オレがビンタすると、ピアス若者の頭部が360度ほど回転。

 なんか折れる音がしたが、気にするな。


「まだ若いからと大目に見ていたが、なんだその態度は? どういう教育を受けているんだ?」


 ピアス若者が転がり、仲間が叫んだ。


「ア、アキラぁぁぁぁ! コイツ、アキラを殺しやがったぁぁ!」

「てめぇぇ! ブッ殺してやるぅぅぅ!」


 2人目を蹴とばすと、弾丸並みの速度で飛び、雑居ビルの外壁にめり込んだ。


「いいか。オレも年功序列とか、そういう古臭い考えを言いたいわけじゃない。しかし、だ。年上の相手はもっと敬うことが──」


「このクソがぁぁぁぁ! ジュンヤまで殺しやがったぁぁぁ! ふざけんじゃねぇぇ! ぜってぇ、許さないぞ、このクソや」


「人の話を聞け」


 3人目の頭頂部を軽く叩いたところ、頭部が胴体までめり込んだ。


〔タケト様って、モンスター殺しすぎたせいで、倫理観ハードルがダダ下がりしましたよねぇ。素敵ですっ!〕


 最後に残ったリーダー格が腰を抜かして、オレを見上げる。


「い、命だけは……だ、だずげでぐだざいぃぃぃ」


 こうやって礼儀正しく言われると、オレだって優しい気持ちになれるんだよな。


「東間さんのところに案内しろ。商談はこれからだぞ~」



気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 北斗の拳を彷彿とさせる?爽快感?! 君たちは(たぶん)すでに死んでいる〜? タガの外れてるキャラって扱い難しいですけど面白いですね モブを排除して高さんとの交渉がどうなるか楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ