貴女が望む幕末へ…
そして3日目、最後の地、蝦夷
今の北海道へとたどり着く。
よっちゃんが亡くなった場所、一本木関門。
たくさんの兵が死んだ。よっちゃんも、ここで、撃たれた。あの地に広がった赤は、彼のもの。信じたくなくてもそれが、現実なのだ。
そっと、桜を供える。
「ごめんね。梅の花じゃなくて。」
好きだったよね。
寒い時期に咲く梅の花が俺たちみたいだって言ったよね?
最後に何を祈った?
何を思った?
よっちゃん、たくさんの仲間が散って行った。
貴方も、仲間達も————。
貴方は、何を祈って、何を願ったの?
貴方の人生は満足でしたか?
冷たい風が吹き抜ける。
「此処は、まだ桜は無いんだね。」
少しだけ、早く桜を見れた。って喜んでるかな?
墓に供えた桜を見て、千夜はクスッと笑った。
そして、彼女は、ずっと避けて居た、京都へと足を向けた。彼らとの思い出が詰まった、そこに、何かがある気がしたから————。
西本願寺、八木邸、前川邸
懐かしい。その一言に尽きる。
自分も、此処で生活を送って居た。部屋に残る刀傷や副長室。隊士たちの部屋。狭くて男臭かったそこは、今やその様子まではわからない。
壬生寺に着いた途端、視界がグルリと回る。
グニャリと曲がった風景…
ーー何?
そう思った途端に、私は、意識を手放した。
『さぁ、貴方が望む幕末へ。一緒に行こう。千夜。
貴方の死を求めて…。』
遠くで、そう声が聞こえた気がした……。




